データの統合・連携がもたらす個別化医療 - 第1回:患者志向の未来に向かって、SAP Connected Health Platform

作成者:松井 昌代 投稿日:2016年8月10日

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昨年10月から始めたデジタルヘルスケアブログ、最近はお客様との会話でも非常に広義な「ヘルスケア」という言葉に代わって「個別化医療」という言葉が用いられることが多くなりました。そこで今後はタイトルを変え、個別化医療にフォーカスして弊社の取り組みのトピックをお届けすることにしました。第1回は今年7月6〜7日に開催されたSAP Forum for Personalized Medicine @Bonnの報告と、この秋開催予定のSAP Connected Healthのご案内です。

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患者にとっての価値にフォーカス

個別化医療に関するSAP初のフォーラムはBonnのWorld Conference Centerで開催され、約100名の世界中からのお客様とともにエキサイティングな講演を堪能しました。

 

最初のプログラムはパネルセッションで、ドイツ、オーストリア、アメリカ、そして南アフリカにおいて個別化医療を推進している方々が、あくまでも患者にとっての価値や重要性に焦点をあて、オミックスやコホートデータを患者の治療に活用する上でのテクノロジーの効用について、各国の動向を紹介しました。このパネルは結果的にこのフォーラム全体の概要的な意味合いとなり、これから1日半面白そうな話が聞けそうと思わせる演出でもあり、翻って、否応なしにそれぞれの自国の状況を考えさせる機会でもありました。

続く基調講演では、4万人以上のがん専門医のグローバルネットワークAmerican Society of Clinical Oncology(ASCO:アメリカ臨床腫瘍学会)傘下のNPO法人、CancerLinQ のCEOであるKevin Fitzpatrick氏がパネルセッションに続いて登壇しました。現在アメリカではビッグデータを活用したがん撲滅の取り組みCancer Moonshotがバイデン副大統領の元で進んでいます。CancerLinQは核となる役割を果たす組織のひとつであり、組織と同じ名前のしくみCancerLinQがSAP HANA Cloud Platform上で動いています。CancerLinQはSAPとのパートナーシップの元、まずはビッグデータによるナレッジベースを作り、医師が全ての患者から学んで、つまり情報を効果的に治療に活用し治療の品質を上げることを目標に掲げています。

CancerLinQは既に実用を開始し、現在以下のことが実現されています。

  • 匿名化されたがん患者の医療情報の公開・集約・分析
  • 患者の治療を改善するパターンの発見
  • 個々の医師自身が行ったケアとガイドラインとの比較や別の医師のケアとの比較を行うこと
  • エビデンスに基づいた最良の治療経過の特定と、それを反映したガイダンスの提供

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(CancerLinQのUI)

患者を取り巻くさまざまなプレーヤー

このフォーラムの講演者は「個別化医療に関わる産官学各領域のプレーヤー」というよりもむしろ、「患者を取り巻き、患者のプライバシーを尊重しつつ、新たなビジネスモデルでの患者とのWin – Winな関係を模索するプレーヤーの代表」と捉えると納得感があり、さらにいわゆる従来的なライフサイエンス・ヘルスケア業界だけでなく、今後新たにデジタル変革を担うことが予想されるプレーヤーたちも登壇しました。

  • ドイツ政府は極めて重要な要件であるデータプライバシーを守りながら、患者を大掛かりに巻き込んだ革新的なデータのキャプチャーと交換を行う大規模なITプロジェクトを開始 –ドイツ連邦保健省ヘルスケアポリシー&テレマティクス担当部長Oliver Schenk(患者のプライバシーを守る官の立場)
  • GoogleやAppleの取り組み:ビッグデータ活用の観点でIT企業がライフサイエンス業界のプレーヤーとして台頭している — ライフサイエンス業界向けベンチャーキャピタルSinfonie Life Science Management GmbHマネージングディレクターDr. Martin Pöhlchen
  • デジタルアプリケーションがこれからのプレシジョンメディスンをドライブする — Bayer Pharmaceutical実験医学部門責任者Dr. Hubert Trübel
  • 過去10年間のテレマティクスの進歩は特に見られなかったが、今後デジタルソリューションはケアサービス領域で活用されるのではないか — ドイツ最大の健康保険会社Techniker Health Insurance Klaus Rupp
  • ヘルスケアスタートアップ企業ambiotexはアスリートに特化したモバイルアプリケーション連携ウェアラブルソリューションを展開。アスリートの心房細動発症が一般人に比べて2 – 10倍であることに着目 — CEO Florian Dennerlein
  • アメリカのデジタルヘルスプラットフォームリーディングカンパニーValidicは一般消費者向け、医療向けのモバイルヘルスデバイスとデジタルヘルスプラットの連携を実現済。さらに7月6日付で、SAPとの戦略的パートナーシップ契約締結。モバイルヘルスデバイスからコネクテットヘルスプラットフォームへのスムーズな連携が可能に。 — シニアヴァイスプレジデントBen Clark

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また、いわゆる先進国の患者とは全く異なる環境に置かれている患者に焦点を当てて語ってくれたのは、南アフリカのWits Reproductive Healthcare and HIV Institute (Wits RHI)のCOO、Sagie Pillayでした。アフリカ諸国の医療システムやインフラの脆弱さ、国土や人口に対する圧倒的なリソース不足、貧富の格差。唯一スマホだけはコミュニケーション手段として浸透しているというチャレンジングな環境に彼らはいます。厳しい条件の中での医療ICT活用は非常に具体的で、妊娠や出産、世代的には子供や若者にフォーカスした活動が行われています。例えば2015年にWHOの支援で始まったmHealth(mobile health)ツールキットを活用した取り組みや、2014年から今日までに既に200,000人が加入している若者向けのB-Wise、2013年にタンザニアで開始し、2015年末までに百万人のユーザーが活用しているHealthy Pregnancy, Healthy Babyのような、純粋に患者に向かい合った活動はユーザーの成長とともにアフリカの医療を変えていくでしょうし、既存のしくみとの調整が必要な先進国よりもシンプルに先に進んで行くのではないかとすら思わせてくれました。

CancerLinQ CEO Kevin Fitzpatrick氏今秋来日決定!

コーヒーブレイクは講演者と気軽に話ができるようなカジュアルな雰囲気でした。基調講演者のKevin Fitzpatrick氏とも直接お話しすることができ、日本での講演を打診したところ、驚くほどの気さくさでご快諾いただきました。

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彼のスケジュールと照らし合わせて、11月8日-11日に日本のお客様とお会いできることになりました。詳細が決まり次第、皆様にアジェンダをお知らせする予定で、現在準備を進めています。

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