IoT×SAP S/4HANA×クラウドから生まれる イノベーションの連鎖


2016年7月29日にSAPテクノロジーの祭典「SAP Tech JAM」が、グランドプリンスホテル新高輪で「SAP Forum Tokyo」と同日開催されました。スペシャルセッションとして「SORACOMとSAP HANA Cloud Platformで実現する“世界中のヒトとモノをつなぎ、共鳴する社会”とは」と題し、株式会社ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏と株式会社レキサス 執行役員の大西敬吾氏にご登壇いただき、SAPジャパンを含め3社で協働開発したソリューションのデモのほか、「インダストリー・スワッピング」「Next UI」などのキーワードをもとに、IoTがもたらすイノベーションの可能性についても議論が行われました。

3社のパートナーシップでIoTソリューションを開発

セッションの冒頭、モデレーターを務めるSAPジャパンの吉越輝信は「世界中の人と人、人とモノがつながったらどういうことが起こるのかを、本日は実際のソリューションを例にご紹介していきます」と挨拶。今回のソリューション開発で協業したソラコムの玉川氏とレキサスの大西氏を紹介しました。

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株式会社ソラコム 玉川氏

ソラコムはIoT/M2M専用の通信プラットフォーム事業で注目を集め、大手企業からスタートアップまで多彩な導入事例を通じて実績を重ねています。玉川氏はサービスの成り立ちを次のように説明します。

「IoTを実際に展開しようとしても、有線LANには場所の制約があり、無線LANにはセキュリティの不安があります。モバイル通信はIoTに最適ですが、これまでは携帯電話など『人向け』のサービスしかありませんでした。そこで私たちが『モノの通信』に特化したものを作ろうと考えました」

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一方、大西氏がプロダクトのマネジメントを統括するレキサスでは、先ごろIoTデバイスの第1弾として動物病院向けの経営クラウド「Halope Iz(ハロペアイズ)」を企画・開発。2015年にリリースした動物病院向けのカルテ管理システムは、約半年間で導入例が100件に達しましたが、あくまでアプリ内で機能が完結するものでした。

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株式会社レキサス 大西氏

「今回開発したHalope Izは、今後ペットのデータを飼い主が管理するだけでなく、動物病院のクラウドと連携させることで獣医から来院を促すなどの体験も提供可能です。よりビジネス領域を拡大した、当社初の本格的なクラウドソリューションになっています」(大西氏)

また、レキサスは日本初のSAPクラウドの勉強会コミュニティである「SAP HANA イノベーション デイ沖縄」を既に複数回主催。さらにソラコムのインテグレーションパートナーとして認定されるなど、3社の強いパートナーシップが、このセッションで紹介されたソリューションの開発に至るきっかけとなりました。

センサーからSAP S/4HANAまでリアルタイム&セキュアな情報活用を実現

今回3社が共同で開発したのは、「リアルタイムファンエンゲージメント」と呼ばれるIoTソリューションです。大西氏は「このソリューションに組み込まれたSAPとソラコムの技術を使うことで、たとえば野球観戦に訪れたファンとスタジアムとの一体感をより深めることができます」と話します。具体的には、ファンの1人ひとりが持っているスマートフォンを通じて、観客席でゲームを観戦しながらビールを注文したり、トイレの混雑状況を確認したりといったことが可能になっています。

tj16_04スペシャルセッションでは、実際にスマートフォンの画面(写真左上)に表示されるビアガール(球場のビール販売員)のリストから1人を選び、ビールを注文するデモが公開されました。

「このリストには注文からの到着予測時刻も表示されているので、近くにいるビアガールを選べば待ち時間も解消できます」(大西氏)

ビールを購入した後は、ゲーミフィケーションで次の一杯が必要かどうかをファンに尋ね、リアルタイム売れ行き予想を運営側のダッシュボードに表示するとともに、ビールの需要予測をSAPのプラットフォームで行い、最適なビール等の仕入れを行うことができます。また、ビール販売員が混雑時には、注文客の席の位置情報をもとに一番近い売店からおつまみの割引クーポンを送信して店舗誘導するなど、IoT を活用した商機を逃さないアプローチも可能です。

このソリューションを背後で支えているのが、SAP S/4HANAとSAP HANA Cloud Platformだと大西氏は明かします。ビールの在庫やトイレの空き状況の情報など、さまざまなデータがセンサーで収集され、ソラコムの電波を通じてやりとりされます。通常、複数のデバイスから収集されたデータの送信はインターネットを経由しなくてはなりませんが、ソラコムは閉域網のサーバーに直接プライベート接続できるため、センサーからバックエンドのSAP S/4HANAまで一気通貫のセキュアなデータ送信が可能です。

SAPジャパンのエヴァンジェリスト松舘学は、SAP HANA Cloud Platformがこうしたクラウドソリューション開発に最適な理由として、「アプリケーションの開発に必要なものが1つのプラットフォーム上に集約され、しかもクラウド上に乗っているため、構成がシンプルでありながらビジネスの要求にあわせて柔軟にスケールアウトできる」点を挙げます。さらに今回開発したソリューションでは、リアルタイムのビールの販売状況分析などにSAP HANA Cloud Platformの予測分析機能を使っており、収集した生のデータをBtoBの発注にシームレスにつなげられる仕組みが実現されています。tj16_05

IoTが「インダストリー・スワッピング」の可能性を拡大

セッションの後半、吉越は「インダストリー・スワッピング」というキーワードを紹介しました。これは「ある業界の常識を別の業界に持ち込むことは一見非常識に見えるが、その非常識こそが改革を生む」という思考法であり、SAPが現在推進しているコンセプトの1つです。

今回の野球スタジアム向けソリューションを他の業界に応用できる可能性について、玉川氏は話題の「ポケモンGO」を例に挙げました。
「これもスマートフォンというセンサーとモバイル通信で構成され、バックエンドがクラウド上に展開されているという点でほぼ同じです。そして、世界何億人が同時にアクセスするというミッションクリティカルなIoTシステムを、クラウドで実現できるという事を証明してくれました。ポケモンGOはゲームで、今回私たちが開発したのはスポーツファン向けのソリューションですが、これを自分の仕事に応用できないかという視点で、ぜひ皆さんにも考えていただきたいと思います」

これに対して松舘は、バックエンドからフロントまでのIoTが実現している例として、ドイツのハンブルク港湾局の事例を紹介しました。これはSAPの Connected LogisticsというエンドツーエンドのIoTソリューションを利用したスマート物流システムです。都市部の狭いエリアにありながら、膨大な出荷量を誇る港湾の物流をさまざまな情報を駆使することで物流を最適化しています。

「ハンブルク港湾局では、船の発着情報がSAP HANA Cloud Platformによってリアルタイムで収集/分析されています。その結果をもとに荷積みを行うトラックへ最適な指示情報が提供され、大量輸送を効率よく行うことができます」(松舘)

IoTNext UIでの成果をもとにさらなるイノベーションを目指す

セッションの終盤では「Next UIを考える」と題して、今後のユーザーインターフェースの進化と可能性についてディスカッションが行われました。大西氏がこの発表のために開発した音声入力デバイスを使って、「リアルタイムファンエンゲージメント」にビールの注文を声で指示するデモからは、音声入力が次世代のUIとしてすでに十分な実用性を持っていることが伝わってきます。

「Next UIとして『声』には大きな可能性があると考えています。私たちの世代は人前でデバイスに声で入力をすることに気恥ずかしさを感じてしまう面がありますが、今の子どもたちにそうした抵抗はないようです。今後10年以内に、音声入力は当たり前のことになっているかもしれません」(大西氏)

これを受けて吉越は「SAPも、自分たちのイノベーションの成功事例を他の業界に持ち込んで、新しいイノベーションを連鎖的に起こしていきたいと考えています。今回のソリューションやNext UIもそうした試みの1つです。ぜひこれからも皆様のご協力をお願いします」と呼びかけ、セッションを締めくくりました。tj16_06

株式会社ソラコム
https://soracom.jp/

株式会社レキサス
http://www.lexues.co.jp/

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