デジタル変革 is Live
IDOM、ローソン、白山工業によるデジタル変革の実践


テクノロジーの進化を受け、企業のデジタル変革は圧倒的なスピードで広がっています。すでに日本でもデジタル変革に取り組み、競争のあり方を根本から変えて躍進している企業が増えています。2016年7月29日に東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪で開催されたSAP Forum Tokyoのオープニングでは、「デジタル変革 is LIVE -2020年に向け、今、描くべき日本企業の成長戦略とは」と題して、IDOM、ローソン、白山工業の3社の取り組みにスポットを当てました。

デジタル変革の波に飲まれることなく、波を作る側に

冒頭でSAPジャパン代表取締役社長の福田が「今年のSAP Forumには過去最大の4,000人の登録をいただきました。本日はデジタル変革にフォーカスを当て、実際に取り組んでいるお客様を紹介します」と挨拶。CEO自らがデジタル変革を進めて成功している事例としてアメリカのスポーツ用品メーカー「アンダーアーマー」をビデオで紹介しました。

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アパレルやスポーツ用品を製造、販売しているメーカー側は、ユーザーが製品をどう使っているかまではわかりませんでした。

そこでアンダーアーマーは、モバイルアプリ制作会社などを積極的に買収しました。誰がどこを走っているか、走る距離が長いのは誰か、好タイムを出しているのは誰か、どのようなエクササイズとしているのか、食事をしているのか、睡眠は深いのか浅いのか、といったデータを個人単位で取得して分析し、顧客の志向をにあった商品やサービスを勧める取り組みを始めています。アンダーアーマー社によれば昨年1年間のジョギング件数は20億件、平均距離は3マイルだそうです。

今や同社は、クラウドを介して1億6,000万人ものユーザーとつながっています。3年前には1つだったeコマースサイトを25に増やし、さらなるチャネルを統合したユーザー動向データの把握を進めています。こうした取り組みの結果、売上の28%はモバイルアプリ経由となっています。

「これを支えているのが、バックエンドからフロントエンドまで一気通貫で統合されているデジタル時代のコアシステムです。アンダーアーマーのように、経営陣がデジタル変革の可能性、破壊力、そして危険性に気付き、いつ行動に移すかが重要です。デジタル変革の波に飲まれるのではなく、波を作る側に回れるどうかが問われる時代になりつつあります」(福田) 

1,000万台の自動車査定データが生み出した新規事業:IDOM

続いて株式会社IDOM(イドム)の執行役員 新規事業開発室長の北島昇氏が登壇しました。同社は、中古車の買取/販売でおなじみのガリバーインターナショナルが2016年7月に社名変更して誕生しました。店舗で使用しているブランド名としての「ガリバー」は、社名変更後も継続して使用していくとしています。
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新社名について北島氏は、「変わるものと変えないものを定義し直し、社外に発信するうえで日本語の“挑む”の意味をこめて『IDOM』としました」と語ります。同社は、新規事業への転換を加速させるため、人材管理や給与体系と同様、デジタル変革も進めています。

「社内に蓄積されているデータをどう活用するか。当社が持っている1,000万台の自動車の査定データを、新しいサービスにどう転換させていくかがチャレンジです」(北島氏)

新規事業開発を担当する北島氏は、経営トップからは、「既存事業の否定を厭うな、シナジーを気にする必要はない」と言われているとし、新たなプラットフォームビジネスの立ち上げに取り組んでいます。第1弾の新規事業として、2016年8月中旬から、月額課金型のサービス「NOREL(ノレル)」を開始しました。

「NORELは、月額4万9,800円で車を1台手元に置いておける世界初の定額乗り換え放題サービスです。レンタカーやカーシェアリングと誤解されがちですが、基本は所有を前提としています。具体的には、利用者は乗りたい車をネットで予約し、最寄りの店舗で受け取るだけです。自動車保険込みで、自動車税や重量税も不要、車検も必要ありません」(北島氏)

NORELには、テスラなど、普段乗れないようなものもラインアップされており、例えば夏休みにはSUV、普段はミニバンを乗りながら、奥さんが里帰りしている間だけ夢だったスポーツカーに乗り換えるといったことも提案していく方針だといいます。

こうした新たなビジネスを進めていく上では、データを活用してお客様に合った車を提案しながら、サービスの継続利用を促していくことが重要になってきます。「SAPと当社は、データの処理だけでなく企業風土や組織の機能の定義などを含めて相談しながら、車の『売る、買う、貸す、借りる』を統合したサービスを作っていきます。その他にも、さまざまな企業と手を組んでサービスを展開していきたいと考えています」(北島氏)

最大の強みは1万2,000店の店舗、外部からお膳立てされた仕組みでは変革は生まれない:ローソン

次に、次世代コンビニの実現に向けて製造小売業への転換を宣言している株式会社ローソン 執行役員 兼 株式会社ローソンデジタルイノベーション 代表取締役社長の白石卓也氏が、「ローソンのデジタル改革」について講演しました。

白石氏は「ローソンというと、まず店舗が注目されますが、その背後では物流センターや、お弁当工場、原材料発注センターなどが常に動いています。当社ではこれらを含め、サプライチェーン全体の生産性の向上をどう進めるかを考えています」と語ります。

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解決のポイントは「見える化」と「テクノロジーによるイノベーション」です。見える化では、サプライチェーンの中で見えない部分、例えば「店に入って何も買わないで帰ったお客さんの数」「店舗の前を通っている人の数」などを明らかにしていきます。「IoT、センサー、GPS、スマートデバイスなどのテクノロジーを活用することで見える化された情報を、新たな業務改革、イノベーションにつなげていきます」(白石氏)

ローソンは、2015年からITの内製化に踏み切りました。従来の情報システムは、要件をベンダーに伝え、提案を受けて構築してきましたが、近年のテクノロジーの進歩は著しく、外部からお膳立てされた仕組みでは、ローソンとしての正解は生まれないという判断です。「自らがリスクを取ってチャレンジし、知見を得ながらデジタル改革を進めていくべきと考えています」と白石氏は語ります。ただし、すべてを内製化するわけではなく、適宜パートナーシップを組みながらオープンイノベーションを進めていく方針です。

「今後オープンイノベーションが進むと、私たちがパートナーを選ぶというより、相手から選ばれることが重要になります。そのためにもパートナーシップの強化に取り組んでいきたいと思います」(白石氏)

そして「我々の最大の強みは1万2,000店の店舗にあります。テクノロジーを活用しながら、買い物というアナログなコミュニケーションをどう融合させていくかが最大のチャレンジです。皆様にもローソンのイノベーションにご賛同いただき、パートナーとしていい出会いをしたいと思います」と述べて講演を終えました。

これまでにない地震観測ネットワークを実現:白山工業

最後は、地震計のトップメーカーである白山工業株式会社 代表取締役社長の吉田稔氏が、SAPジャパンとのオープンイノベーションにより実現した、これまでにない地震観測ネットワークについて解説しました。
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「日本は世界の陸地のたった0.5%しか占めていませんが、大きな地震の10%を占める地震大国です。しかし、私たちは地震大国にいながら、今まで自分の家が地震に耐えられるかどうかを調べる手段がありませんでした。新築の場合は住宅メーカーが地震への対応を説明してくれますが、10年、20年たつとハウスメーカーは何も言ってくれません。自分で対応しなければならないのです。一般の人が自分で地震防災の仕組みを構築することはできないだろうかと考えた私は、スマートフォンの加速度センサーを使った地震観測アプリを開発して、iPod touchを友人の家に設置しました。すると、東日本大震災が起きた時など、個々の家がどんな揺れに見舞われたか、これまで得られなかった個人宅の地震データを取得できるようになりました」(吉田氏)

それから社会実装をしようと新潟、茨城、神奈川の住宅に実験的に付けようと試みますが、問題は設置場所です。全国の各家庭に設置させてもらうにはハードルが高く、理解を得るまでに時間がかかります。データを見るのも研究用途が中心となってしまい、社会への還元が困難でした。

そんな時に出会ったのがSAPジャパンだったと吉田氏は語ります。

「企業の社会的責任として市民目線の防災ネットワークを作ろうという思いをもとに、SAP HANA Cloud Platform上に大規模システムを構築しました。地震が発生すると、すべての端末から揺れのデータがSAP HANA Cloud Platformのデータベースに蓄積され、ブラウザ上で自分のいる建物の震度情報を参照することができます。SAP HANA Cloud Platformと連携する震度計アプリは『my震度』という名前でApp Storeからダウンロードできる無料アプリとして提供される予定です。my震度アプリはオープンイノベーションとして育てていくものなので、ぜひiPhoneやiPod touchにインストールして使ってみてください。また、エンジニアの皆さんにもぜひ参加いただいてアイデアなどを盛り込んで改良していきたいと思いますので、よろしくお願いします」と呼びかけました。

デジタル変革 is LIVE

3社の講演を受け、SAP社長の福田はデジタル変革を迎えるにあたり、SAP自身も23年ぶりにコアERPを根本から刷新し、SAP S/4HANAとしてリリースした背景を語りました。

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「SAPのビジョンは、人の手に例えることができます。手のひらの部分、つまりデジタルコアがSAP S/4HANAと考えると、デジタル化していく要素として人、顧客、サプライチェーンなど、あらゆるモノとコトが5本の指にあたります。熱いものを触ったとき、人の手は熱さを感じてリアルタイムに手を引っ込めます。ITも同様に、リアルタイムに指と手のひらが連動することが重要です。人は熱いものを触って火傷をしたら、次からは触らないように学習し、『これは熱いのではないか?』という予測までします。つまりこの仕組みがAIであり、Deep Learningです。従来のコンピュータ処理では、指と手のひらの連携にはとても時間がかかっていました。熱いものに触り、『熱い』と気がつくまでに半日、分析を重ねて『手を引っ込めなくては』と気づくまで一週間もかかっていたわけです。現在SAPは、ERPのプラットフォームをSAP HANAに刷新し、実行系と情報系を融合することでリアルタイム性と情報処理能力を高めています。また、指と手のひらのリアルタイム連携、つまりプラットフォームの力を最大限に引き出すアプリケーション機能も重要です。そのため、SAP SuccessFactors、SAP Hybris、SAP Ariba、Concur、SAP Fieldglassも含め、SAP HANA Cloud PlatformとS/4HANAのリアルタイム連携を非常に重視しています。SAPが次々と実現していくネイティブなリアルタイム連携を、お客様にさまざまな形で活用していただきたいと考えています」

そして福田は最後に、「今回、『デジタル変革 is LIVE』と題して3社のお客様にお話いただいた内容が、皆様のチャレンジの参考となれば嬉しく思います」と語り、オープニングセッションを締めくくりました。

SAP Select/Forum 2016に関する記事はこちらから御覧いただけます
https://www.sapjp.com/blog/archives/m_tag/sap-selectforum-2016