5年で3倍のビジネス成長を掲げるAsian Paints社の収益性分析基盤事例
作成者:羽石 哲也 投稿日:2016年10月6日
本ブログではAsian Paints社事例を通して、収益性分析を行う上での課題や具体的にどのような分析を行っているか同社が実際に行っている画面イメージともにご紹介いたします。
Asian Paints社は、アジア最大の塗料メーカーとして幅広くビジネスを展開するインドの企業です。インド国内だけでも5,000名の従業員を抱えるほか、約3万の販売店を擁し、家庭用塗料から産業用、自動車用塗料まで、約200点の製品ラインナップを60以上の国で販売しております。その売り上げは20億米ドルに達しています。
すでに世界の塗料業界でトップ10に数えられる同社は、2013-2018年の5年で3倍のビジネス成長を達成するために、SAP S/4HANA内の財務ソリューションSAP S/4HANA Financeを採用するとともにそのデータを活用するための収益性分析基盤を2015年7月より本番稼動を開始しています。
■Asian Paints社がなぜSAP S/4HANAを採用したか?
主な理由として同社が以下の実現が可能である判断したためです。
- 売上収支や諸経費の分析をし、迅速な投資やコスト削減の判断が可能である。
- トップマネジメントの要望に応じたWhat-If分析を実施する。
- レポート準備時間を削減、データの多重管理が不要なことによるTCOの大幅削減。
上記”1.”, ”2.”, ”3.”に関して分析画面とともに具体的な施策のご紹介をします。
1.売上収支や諸経費の分析をし、投資やコスト削減の判断が可能である。
Asian Paints社は事業の多様化と製品数の大幅増により、それぞれの業務部門、垂直レベル、チャネル、3万以上のディーラーセグメントごとにマージン分析の必要性が生じました。 しかし、各事業のパフォーマンスを以下のレベルで基幹システムの情報を直接分析する仕組みを持っていませんでした。しかし現在、同社は事業部単位での収益分析に加え、製品、ブランド、チャネルごとの収益性を把握し、どの事業領域のどの製品、ブランドチャネルに集中的に投資すべきかを把握できるようになっています。
また、同社では、データを集約し、加工し、グラフなどにする作業を手作業で行う必要があり、事業や製品の拡大に手作業が追いつかない状況に陥っていましたが、SAP S/4HANAでは財務会計、管理会計ともにデータがひとつの場所に格納されるデータ構造をとっているため、手作業でのデータ集約、加工が大幅に削減されました。
2.トップマネジメントの要望に応じたWhat-If分析を実施する。
トップのマネジメントの要望に応じて、必要な軸で分析を行うことができるようになりました。分析担当者がトップマネジメント層から分析の内容について問い合わせを受けることは多くありますが、すぐに回答できるようになりました。例えば、トップマネジメント層が事業ごとの粗利益のレポートを閲覧し、塗料1リットルあたりという観点で分析することや、総売上に対して対象の製品粗利益という観点でデータをみたいという場合に、分析/報告の担当者はすぐに様々な切り口で分析ができるようになりました。その結果、トップマネジメント層は投資領域の判断をその場で把握できるようになりました。
必要に応じて詳細レベルでの分析も可能です。下記は収益性に関する大まかな数値から明細レベルの分析を行っている画面です。
3.レポート準備時間を削減、データの多重管理が必要ない。
こちらは後述の”Asian Paintsの収益分析基盤を下支えするSAP S/4HANAのBIの仕組み”をご参照いただればと思います。
※目的に応じた分析製品群については以下をご参照ください。
SAP S/4HANA を可視化・分析できるアナリティクスソリューションhttps://www.sapjp.com/blog/archives/13956
■Asian Paintsの収益分析基盤を下支えするSAP S/4HANAのBIの仕組み
「データ構造の大幅な見直し」
SAP S/4HANAでは従来のERPのデータ構造を大幅に見直すことで、エンドユーザーは業務と分析を同時に実行できるようになりました。結果として、必要なレポートや分析を柔軟に出せるようになりました。例えば、財務会計、管理会計、品目元帳などのデータが単一の明細テーブル上で扱えるため、分析前にデータを集める必要はなくなりました。
従来はERPを代表とする業務システム(OLTP)と、分析システム(OLAP)をそれぞれ別に構築する必要がありました。主な理由の一つとしては必要なデータが一つの場所に集まっていないため、必要なデータをDHWに集約する必要がありました。その結果、データの多重管理が発生したり、適切なDHWや分析システムを持っていない企業は、業務ユーザが必要な分析するためにデータを待つ必要があったり、エクセルなどを何時間もかけて加工して必要なデータを作る必要がありました。実際にAsian Paints社においても複数を組み合わせて分析を行いたい場合は、データをマニュアルで集める必要がありましたが、データ量の増加により、作業に手間と時間がかかるようになっていました。
SAP S/4HANAでは、例えば経営層や事業部長はすぐにみたいデータを分析可能です。なぜならば、以下の画像に記載したように総勘定元帳、管理会計、品目元帳などのデータが単一の明細テーブル上で扱えるため、分析前にデータを集める必要はなくなりました。
このようなデータ構造の大幅な見直しにより、SAP S/4HANAでは即座の分析が可能になりました。
◆まとめ
以上Asian Paints社の事例を通して、収益性分析基盤の事例をご覧いただきました。
企業の拡大にともない事業や製品、販売店が拡大する中で分析対象となるデータも膨大になり、それに応じて経営層が迅速な投資可否判断を必要があるということはAsian Paints社限ったことではありません。迅速な意思決定のための仕組みとして本ブログがご参考になれば幸いです。
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