元JSUG会長に聞く、デジタルトランスフォーメーションを実現するための「こだわり」と「割り切り」とは?


2016年7月28日(木)、29日(金)の2日間にわたって東京・グランドプリンスホテル新高輪で行われたイベントSAP Select/SAP Forum。SAPが提唱してきた「デジタルトランスフォーメーション」を始め、デジタルエコノミーの目指す未来や、第4次産業革命とその原動力となるイノベーションに関するディスカッションなどが行われ、非常な盛況でした。両日参加をされた元ジャパンSAPユーザーグループ(JSUG)会長の都築正行氏に、本イベントから受けた印象と、そこから感じられた時代の動きや課題についてお話を伺いました。

イメージからリアルなビジネスへ
急激に進化するデジタルトランスフォーメーション

今回のイベントには、SAP SelectとSAP Forumを合わせると2日間で延べ約3,500名が参加。デジタル時代のビジネスや社会の変革への関心が、これまで以上に高まっていることが感じられました。SAP Selectのスピーカーも、基調講演の日産自動車から特別講演のスノーピークまで顔ぶれは大変幅広く、都築氏はデジタルトランスフォーメーションや第4次産業革命の波が、従来のB2BからB2C、そしてB2B2Cまで急速に拡がっていると評します。

「2015年7月に行われた第1回のSAP Selectは、まだデジタルトランスフォーメーションやオープンイノベーションの重要性について、参加者に気づきを促すという内容でした。第4次産業革命についての啓蒙が主なテーマで、具体的には、IoTの推進にはシステム基盤が大前提であり、それを迅速に構築する上でSAPは有効だと理解しました、それが同年11月のSAP Forum東京では、すでに啓蒙ではなく『現在進行中』であることが示されました。

今年のイベントでは、そうした世の中の取り組みとSAPが、昨秋以降どこまでさらに進化しているか、非常に大きな期待を持って臨んだと都築氏は明かします。%e5%9b%b31

「いまや経済や産業ニュースの中に第4次産業革命やIoT、人工知能(AI)、クラウド、ビッグデータ/アナリティクスといった記事が見当たらない日はありません。日経新聞によると、日本の主要企業の中でも自動車メーカーや電機メーカーは、研究開発費を7年連続で増加させており、すでにIoTやAIが研究開発の中心テーマであることがはっきりわかります。2016年のSAPは、さらに加速するデジタルトランスフォーメーションの現在を見せてくれると確信していました。そういった点で、今年のSAP Select/Forumは期待以上のものでした。特に日産自動車をはじめとする先進的な企業が一堂に会し、現在進行系の取り組み、ここまで多彩なイノベーションが進んでいるという内容について聞けたことは、参加した皆様にとって大きな収穫だったと思います」

 

「こだわり」と「割り切り」を巧みに使い分け自社のイノベーションを加速

SAP Selectの全セッションに参加したという都築氏は全体の総括として、デジタルトランスフォーメーションやIoTにおける対応は、ソリューションの企画段階から具体化までの時間が、従来のシステム構築に比べて大幅に短くなっていることを指摘。その理由として、テクノロジーの著しい進化に加えて、「脱自前主義」、オープンイノベーションが大きく寄与しているのではないかと語ります。

「システム構築における『こだわり』と『割り切り』という考え方が受け入れられてきたのではないでしょうか。昨年のSAP Forumでコマツの野路会長が言及されたように、自社の優位性を高める部分は自分たちで開発する。それ以外の部分には、オープンイノベーションとして他社のリソースも積極的に導入・活用する。それが、イノベーションのスピードアップに繋がっています」

都築氏は、「こだわり」は差別化要因と優位性の源泉であり、自社の強みを熟知したベテランと柔軟な発想ができる若手、そして優れたITパートナーの三者が協業しながら構築してゆくべき領域で、絶えず進化させていくべき領域だと定義。さらに、これまでの考え方をまっさらにして新しいものを考える際には、SAPが提唱するデザインシンキングという手法も有効であり、その上で、SAPが提供するソリューションやクラウドも積極的に活用していくことで、迅速なイノベーションが可能になると示唆します。

「イノベーション、いわゆる変化を起こすことを考えた場合には事前の周到な準備が必要で、特に革新的なものは受け入れられるためには高いハードルを超えなくてはなりません。だからこそ経営者自身が、先進的な情報をタイムリーに入手し、自分の言葉で周囲に説明する責任があります。今回のイベント全体を通して、このようなイノベーションに関するヒントをあちこちで得られたと感じています」

 

さらに重要なのは人材です。ビジネスとテクノロジー、また人と組織の重なる部分でイノベーションは起こるものだからです。28日の特別講演に登壇されたコニカミノルタの執行役 事業開発本部長の市村雄二氏は、自社のビジネスイノベーションセンター(BIC)に優れた人材を集め、ダイバーシティの中で新しいビジネスモデルの創成やイノベーションを起こすことを推進していると語りました。また29日の特別講演でも、元サンリオ常務取締役の鳩山玲人氏が『人は社会的な意義があると思えるようになると力を発揮するもので、根性+サイエンスが成功の秘訣』と語り、人材と合理性がブレークスルーの両輪となることを指摘されました。 

視点や発想を変えて見てみよう!
「これまで」を超える想像力がチャンスを創る

都築氏は「多くの先進企業が、SAPとも協業し、新しい技術、ソリューションを活用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを創出し、競争上の優位性を確立すると共に人々の生活をより良い方向に変化させている」と強調します。そうした変化の代表例が自動車です。

自動車は豊かな生活や社会的地位の象徴であり、多くの人々は所有すること、運転することそのものに喜びを見いだしていました。しかしそうした意味合いが薄れてきた現在では、自動車を移動手段として割り切ってとらえる人も増えています。このように視点を変えることで、新しいビジネスチャンスは随所に隠れています。ハードウェアからソフトウェア制御への移行で『コネクテッド・カー』になると、自動車から人の移動に関する情報を収集することが可能になったり、日産自動車が取り組む自動運転が進めば人為ミスのない運転が実現し、交通事故の大幅な削減につながります。さらにはEVを移動手段だけでなく蓄電設備として使うなどの動きもあります。

また、IDOM(イドム:旧社名ガリバーインターナショナル)は従来の中古車買取/販売を軸とするサービス事業を拡大し、お客は同社の持つ在庫の中から好きな車を選んで借りられる『車乗り換え放題サービス』を開始しました。

このように従来の業態や顧客対象を超える想像力が、新しい成長のチャンスを創るのです。

加えて、他社に先駆けてデジタルトランスフォーメーションを実現しているアンダーアーマー、スティル、ロシュ、ネスレ、UPSなどの海外の事例にも強い印象を受けたと都築氏は語ります。なぜなら、これらの先進企業が従来のビジネスの枠組みにとらわれることなく、「人々の生活をより良くするにはどうしたら良いのか」という視点で、新たなビジネスモデルへと変革を実践しているからです。そして、SAPがこうした企業等と、デザインシンキングという手法も用いて、アイデアを創出するところから実現するところまで一体となって進めていることを改めて認識し、これを日本の企業も積極的に活用すべきと言います。

ユーザーとIT、SAPの三位一体で
真に創造的なイノベーションを目指す

最後に都築氏は、元JSUG会長として、JSUGが果たす役割にも大きな期待を寄せます。

「「こだわり」の領域は、オープンな技術、ソリューションも活用しつつそれぞれの企業が自社で推進していくものとしても、「割り切り」の領域には、ビジネスを理解している現場のユーザーと、テクノロジーに精通したIT担当者、そしてSAPジャパンやパートナー企業等それぞれがJSUGの部会などを通じて交流を図っていくことが今後ますます重要になってきます。JSUGにとっても、そうした取り組みの推進と、そこでの人材育成が今後の大きなテーマになっていくはずです」と語り、JSUGを通じた相互研鑽、そして交流のさらなる拡がりと活性化を期待したいと結びました。

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■略歴

都築正行(つづき・まさゆき)
JFEシステムズ株式会社 取締役。慶應義塾大学フォトニクス・リサーチ・インスティテュート研究支援アドバイザー。
名古屋大学を卒業後、1971年に三菱商事に入社。基幹システム開発室長、経営企画部 情報化担当部長、CIO補佐などを歴任。2004年からの4年間はJSUG会長を務め、SAPに対するJSUGのインフルエンス強化に貢献した。三菱商事を退職後は、JFEシステムズの社外取締役のほか、慶應義塾大学 フォトニクス・リサーチ・インスティテュートの研究支援統括者を務めるなど、産学の視点から日本経済の発展に寄与する活動を精力的に続けている。

SAP Select/Forum 2016に関する記事はこちらからも御覧いただけます。
https://www.sapjp.com/blog/archives/m_tag/sap-selectforum-2016