共同印刷が展開するデータ分析を活用したマーケティングサービス
作成者:瀬尾 直仁 投稿日:2016年10月21日
国内大手の共同印刷株式会社はSAP BusinessObjects Predictive Analyticsを活用し、企業の“売れる仕組み”の構築を支援するCRMサービス「Cogma(こぐま)」を展開。現在、クレジットカード会社、総合通販会社などに向けて数々のマーケティング支援を行っています。2016年9月14日に開催された予測分析・機械学習ビジネス向けセミナー「SAP Predictive Day」では、共同印刷 プロモーションメディア事業部の吉丸滋美氏に、分析ツールを用いたマーケティングサービスの現在について語っていただきました。
総合印刷会社ならでノウハウとリソースを活かしたマーケティングサービスを企画
共同印刷は、2017年で創業120周年を迎える印刷会社です。創業時から続く出版印刷・商業印刷を主軸としながら、近年ではカード・帳票・データプリント系のビジネスや包材系のビジネスが伸長しています。吉丸氏は入社後、多くのプロモーションツールや情報誌の編集を経て、データプリントソリューションや印刷に関する営業企画に携わり、2008年にCRM企画室(仮称)の立ち上げメンバーとなりました。現在はプロモーションメディア事業部内でデータマイニングを用いたマーケティング提案を行っています。
共同印刷では現在、データマイニングを使って顧客企業の売れる仕組み作りを支援する独自のCRMサービス「Cogma」を展開し、分析メニュー、マーケティング手法、企画制作のノウハウを組み合わせた最適な販促施策を提案しています。吉丸氏はCogmaの強みについて「総合印刷会社ならではの企画力、デザイン力、加工力、分析力と、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsを活用した高精度で高速なデータマイニング、企業内の購買データ、POSデータ、属性データ、ソーシャルデータ、オープンデータなどあらゆるデータを活用したビッグデータ分析にあります」と説明します。
「イノベーションの壁」に阻まれながらもCRM企画室を立ち上げ
共同印刷が2008年にCRM企画室を立ち上げたきっかけは、あるクレジットカード会社から寄せられた案件でした。キャッシング専用カードの加入をDMで促進したいという要望を受けて、パートナー企業と共同で4つのデザインモデルを作り、予測モデルに沿ったDM発送を実施。すると高いレスポンスを獲得したことから社内での評価も高まり、データマイニングを社内で実行する機運が生まれたといいます。「コンテンツ主導でモデルが大量に作れる予測分析ツールは画期的でした」と吉丸氏は振り返ります。
予測分析ツールの導入を決断した同社はRFPを作成して5社に提案を依頼し、その中からSAP BusinessObjects Predictive Analytics(当時の名称はKXEN)の採用を決定しました。「選定段階では紆余曲折ありましたが、最終的に分析スピードの速さが決め手になりました」(吉丸氏)
しかしCRM企画室の立ち上げは困難の連続で、社内で「利益はでるのか」「CRMの意味がよくわからない」といった声があったといいます。顧客からは「費用対効果はどうか」「他社の成功事例はあるか」といった点が指摘されました。最近では分析システムを導入する企業も増えていますが、当時は数々のイノベーションの壁が立ちはだかったといいます。
当時描いていた展望は、DM関連の分析からスタートし、業界展開して顧客志向の分析に移行し、最終的に共同印刷独自のスキームを確立することでした。吉丸氏は8年を経て、現在はおよそ思い描いていたとおりになりつつあると実感しています。
また、立ち上げの過程は、人材活用においても苦労がありました。
「分析官は適性でなくデータを扱うのが好きかどうかで割り切るのがいいと思うようになりました。私たちは統計学の専門家ではないので、統計と施策と併せて考えることが大切で、データ分析、施策、DM制作と役割を分担しながら共同で進めることでうまくいくこともわかってきました。データサイエンティストは、仮説を作るコンサルタント、データを解析するアナリスト、データ解析の支援アプリを開発するITスペシャリストの3つの役割があることを意識して育成を続けています」(吉丸氏)
クレジットカード会社や総合通販会社のマーケティングで成果を獲得
続けて吉丸氏は、データを活用したマーケティング事例を3つ紹介しました。
1つ目はクレジットカード会社の事例です。あるカード会社は、キャッシングカードの加入者獲得を目指していましたが、サービス内容が顧客に理解されていないこと、極端に販促を仕掛けすぎるとクレームが来てしまうこと、キャッシング系のユーザーの市場が限定的であることに課題を抱えていました。
相談を受けた共同印刷は、「キャッシング専用カードへの入会をどう勧めるか?」というテーマに対して、キャッシングの経験値(経験が高いか、低いか)と、訴求方法(理性に訴えるか、感性に訴えるか)の2軸でコミュニケーションの仮説セグメントを作成。最終的に7つのデザイン仮説からモデルを作成し、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsで分析を実施したスコアリングをもとにDMを発送しました。吉丸氏は「当初は3つ程度のモデルを考えていましたが、お客様からどうしても7つのモデルを回したいという要望が寄せられました。高速で簡単に扱えるSAP BusinessObjects Predictive Analyticsがなかったら、7つものモデルを回すことはできませんでした」と語ります。
さらに吉丸氏は、顧客の行動予測の工夫として、カード会社が自社の予測分析ツールで作成した優良顧客モデルと、共同印刷がSAP BusinessObjects Predictive Analyticsを使って作成したコミュニケーション反応モデルの2つを足しあわせることで反応予測精度を向上させていることを紹介しました。
2つ目のデータ活用事例は、総合通販会社の購買予測です。ある総合通販会社ではカタログを送付する顧客を決定するため、季節や品揃えが同じ傾向のカタログで購入した顧客は、翌年も同じ月のカタログでも商品を購入しやすいという仮説を立てました。そして、前年同月発行のカタログで商品を購入した顧客の属性データ・過去の購入履歴データをSAP BusinessObjects Predictive Analyticsで分析し、スコアの高い順にカタログを発送しています。
「あらゆる仮説を検証するための予測モデルを使えるのは、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsならではのメリットで、基本形の優良顧客モデルだけでなく、食品を買う人、化粧品を買う人、ジュエリーを買う人というように、特定の商品購買モデルや、テレビ、ラジオ、インターネットなど流入メディア別モデルを作ることもできます」(吉丸氏)
3つ目は、共同印刷が実施した顧客インサイトマーケティングでの活用事例です。同社は、サービスデザイン思考を利用したペルソナ(想定ユーザー)マーケティングの過程において、消費者のアンケートデータをSAP BusinessObjects Predictive Analyticsを用いてクラスタ分析を実施しました。さらに、消費者座談会や有識者インタビューなどの定性データで肉付けして、美容・化粧品のマーケティングで9つのペルソナを作成しています。「9つのペルソナを化粧品開発展に出展したところ、化粧品、健康食品会社からも好評で、ペルソナを使ってマーケティングを考えようという機運が高まっていることを実感しています」と吉丸氏は語ります。
最後に吉丸氏は、マーケティング環境の変化とSAP BusinessObjects Predictive Analyticsの関係について、「AI時代、ビッグデータ時代を迎えた今、スピード処理や大量処理は当たり前となりました。解析アルゴリズムや変数に対しても『なぜ?』と聞かれることがなくなり、SAP BusinessObjects Predictive Analyticsの追い風となっています。共同印刷でも驚異的な処理スピード、柔軟性、ユニークさを備えたSAP BusinessObjects Predictive Analyticsは分析サービスのコアとして欠かせない存在です。マーケティングの流れが、あらゆる集合知(データ)を素早く自動的に分析する足し算的な考えと、顧客インサイト、サービスデザイン思考、イノベーション創造といった引き算的な考えの2つに分かれていく中、使い方も発想次第で変わっていくもので、今後も創発を支えるAIツールとして発展していくことを期待しています」と述べて講演を終えました。
~イベント開催のお知らせ~
※共同印刷株式会社様による SAP BusinessObjects Predictive Analytics事例セッションのご講演決定!SAP Platform Day Osaka
■開催日:2016年11月29日(火)14:00-18:00 (受付開始 13:30)
■会場:ナレッジキャピタル カンファレンスルーム Tower 8F
(〒530-0011 大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪タワーC 8F)
■対象:SAPユーザー企業・組織の情報システム、経営企画、事業部門の情報活用を推進する責任者の方々
■参加費:無料(事前登録制)
■主催:SAPジャパン株式会社
■参加登録はこちら:http://sap.expoline.jp/pd-osaka
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