SAPセミナー【SAP HR Connect 守りの人事から攻めの人事へ】レポート1


ダイキン工業におけるグローバル人材戦略

こんにちは、SAPジャパンの藤田園子です。2016年7月28日、都内で『SAP HR Connect 守りの人事から攻めの人事へ』が開催されました。今回は、ダイキン工業株式会社で「人を基軸におく経営」の実務を担っている執行役員 人事本部長 同本部 ダイバーシティ推進グループ長の佐治正規氏の講演「ダイキン工業におけるグローバル人材戦略」をお送りします。(下記は当日の講演内容の抜粋)

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多国籍化した組織で「人を基軸におく経営」を実践

大阪が本社のダイキン工業は、家庭用や商業施設用のエアコンで知られる空調総合メーカーです。同社の歩みを振り返ると、1990年代以降の海外企業との提携・連携、M&A(合併・買収)のたびに事業規模を拡大してきたことがわかります。対象地域も欧米からアジアを含む世界へ。その結果、2015年度の連結従業員数に占める外国人比率は実に80%に達します。

 

高成長を続ける同社は、2016年3月期には売上高が2兆円を突破しました。同社では、グループの競争力の源泉は企業理念の「人を基軸におく経営」の実践にあると指摘します。

 

佐治氏は、「『人を基軸におく経営』とは、一人ひとりの多様な個性・強みを組織の力に活かすダイバーシティマネジメントそのものです」と説明します。同時に、「多様化した組織は放っておくと分散してバラバラになります。多様化した組織の求心力を維持・向上するには、①経営理念を組織内に共有・浸透させる②異なる価値観を持つ人々を一つの方向へ導くリーダーシップとマネジメント能力を持つ人材の育成――の2点が重要です」と強調します。

 

多国籍化した組織では「暗黙知」だけではマネジメントできません。同社では、2020年をターゲットにした「戦略経営企画FUSION20」の基本理念の一つとして「独自の企業理念の実践」を掲げ、多様な人材の糾合と多国籍ガバナンスの構築を盛り込んでいます。

 

若手自らがコアマンとなって困難な経営テーマに挑む

その具体的な取り組みを、「国内優秀人材の発掘・育成」と「海外現地人幹部の発掘・育成・登用」の2つの切り口から紹介しましょう。前者の「国内優秀人材の発掘・育成」の第一が、若手チャレンジプログラム「D-CAP(Daikin Challenge “A”Program)」です。入社数年目の若手優秀人材にテーマを与え、2~3年を目安に一定成果を挙げさせます。テーマは新市場開拓を目的としたM&A戦略立案など現在の組織では着手できていない、あるいは解決が難しいものばかり。選抜された若手は、周囲の役員や基幹職のサポートを受けつつ、自らがコアマンとなって関係者を巻き込みながら各種施策を実行しています。

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「『D-CAP』は経営トップ直轄の人材育成策として、従来にないスピードで人材育成することが狙いです。『手取り足取り』の指導ではなく、若手が自ら修羅場に飛び込み、もがきながら自分の力で成長することを目指します。当社では、若手人材育成に関しては年に1回、執行役員会の中でフォローしています」(佐治氏)

 

メーカーならではの人材発掘・育成策としては、「技能伝承制度」が挙げられます。同社は2001年、モノづくりの基盤となる高度熟練技能者を継続育成し、対象者の意欲喚起とレベルアップを図るため卓越技能伝承制度を確立しました。その中で、「ろう付け」や「仕上げ加工」など10の戦略職種で優れた技能を有する者を卓越技能者と認定、その中からさらに優れた人材「マイスター」を選抜します。同社では空調事業のほか、フッ素化学製品の開発・製造なども手掛けており、この化学事業分野における卓越技能者からの選抜者を「エキスパート」と呼んでいます。現在、同社ではマイスター、エキスパート合わせて34名います。

 

そのほか、世界中のグループ拠点を対象に2年に一度「ダイキン技能オリンピック」を開催。2015年の第6回には、13カ国・28拠点から145名が参加しました。佐治氏は「競争によって国内外の技能差を解消し、世界同一品質を実現したいと考えています」と語ります。

 

若手優秀層に積極的にチャンスを与える

一方、ここ数年、特に取り組みを強化しているのが「海外現地人幹部の発掘・育成・登用」です。「海外現地人幹部育成については、従来は現地拠点に任せていましたが、M&Aなどで急速に外国人従業員比率が高まっているため、3年前から本社マターで力を入れています。例えば、「グローバル経営幹部塾」では、次世代の経営幹部候補層や部長クラス20名程度を日本に集め、3セッション計15日程度の研修を受講してもらいます。各セッションでは、当社の経理財務や経営企画の考え方などをレクチャーおよびグループディスカッションで徹底的に学びます」(佐治氏)。

 

事業規模拡大が優先され、人材育成・定着の取り組みを充実させるためにアジア・オセアニア地域では、若手優秀層の離職を防止するため、積極的にチャンスを与えつつローカルリーダーを継続育成していくプログラムを実施しています。

 

佐治氏は、「当社の人材育成は、『困った』事態に対して前例にとらわれない方法で解決してきた歴史とも言えるでしょう。今後はより計画的に人材を育成することを目指し、入社数年の若手などあらゆる層の可能性を見極めながら、グループの将来を思い切って任せる人材を意図的に輩出する仕組み=タレントパイプラインを構築したいと考えます」と締めくくりました。

 

いかがでしたか?

経営理念の浸透は、グローバル展開されている日本の企業様では課題として議論されることが多いテーマかと思います。『人』を基軸に、中でも若手、将来の経営幹部を軸においた様々な取り組みをされている事例、大変参考になりました。

 

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