リアルとデジタルを併用した
スノーピークの カスタマーエンゲージメント革新


1958年に創業し、現在のオートキャンプのスタイルを確立したアウトドアの総合メーカーである株式会社スノーピーク。徹底的なユーザー視点を追求したブランド「Snow Peak」は、高品質に加え商品の永久保証制度など独自のアプローチを展開することで、幅広いユーザーから深い愛着を持って支持されています。今回は、7月29日に実施されたSAP Select(コンシューマー業界向けトラック)に登壇いただいたスノーピーク代表取締役社長 山井太氏の講演から、同社のカスタマーエンゲージメント戦略についてご紹介します。 

 

人間性の回復に貢献するアウトドア・ライフスタイルの提供

現在、年商約95億円(2016年12期業績予想)、ポイントカード会員数約18万人を誇るスノーピークは、典型的な「市場創造型」企業です。1988年、現在のキャンプスタイルの原型とも言える「オートキャンプ」という概念を確立し、日本および東アジアにアウトドアライフスタイルを定着させる先駆けとなりました。事業目的として同社は、「自然指向のライフスタイルを提案し実現する」ことを掲げています。文明の進化と反比例して低下する人間性の回復に努め、自然と協調したライフスタイルを提案し続けることで、多くのユーザーが熱烈なスノーピークファンとなっています。

また、2011年には本社社屋を新潟県三条市中野原に移して、約5万坪のオートキャンプ場をオープン。本社機能・工場・直営店がオートキャンプ場と共存するこの場所は、同社にとって非常に重要なカスタマーエンゲージメントの場の1つとなっています。また移転前10年間で平均して7%前後であった対前年比の売上上昇率が移転後は30%代となり、昨年は一昨年比で約43%の売り上げ増という実績を上げています。

同社のビジネスの特長の1つに、顧客の生涯価値の高さがあります。

「スノーピーク製品をこれまでに500万円以上お買い上げいただいたお客様が6〜7名、100万円以上のお客様は約1,500名近くいらっしゃいます」と山井氏は話します。一般的に想像するキャンプ用品の価格では到底考えられないような顧客の生涯価値が生まれる背景には、高品質な商品提供だけに留まらない同社のビジネススタイルがあります。その象徴が、同社が主催する「Snow Peak Way」と呼ばれるキャンプイベントです。スノーピーク製品を使用されるお客様と、社長を筆頭とする同社スタッフが自然の中で同じ時間を過ごし、夜は焚火を囲んでざっくばらんに語り合うこのイベントには、すでに累計10万人が参加しています。

「つくる」強みと、リアル/デジタルで「つながる」ことの強み

同社の差別化要因としてまず挙げられるのが、「つくる」ことにおける強みです。
高品質・高耐久性を誇るスノーピークの商品は「システム」としてデザインされ、単体使用だけでなく組み合わせて使用することでより効果を発揮するようになっています。また、製品を長く使っていただくため(製造プロセスに起因する問題解決に対しては)永久保証制度を設けています。アフターサービスにおいても、使用できない期間をなるべく短くするため、修理品をお預かりしてから平均0.8日で修理完了(6,000件の平均)という迅速な対応を実現。「私自身も含め、社員・スタッフ自らがユーザーであるという姿勢を貫き、製品やサービスを通じて『感動』をお届けすることを常に考えています」(山井氏)

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同社の差別化のもう1つの要因が「つながる」強みです。

「カスタマーエンゲージメントという面で最も重要なのは、Snow Peak Wayのようなリアルイベントで直接お客様と語り合うひとときを過ごすことです。焚火を囲みながら5時間近くもお話しする中で、製品やサービスなどに関する率直な意見やクレームを頂戴し、翌年はその対応についてご報告するといったこともしています。参加されたお客様の声が元になって製品化したものもあります」(山井氏)

このように、リアルなつながりの場を重視する同社ですが、一方ではSNSなどデジタルな世界についても最大限に活用しています。「多くのお客様に直接お会いしたいけれど現実的には難しいこともあるので、もっとお客様とつながるためにFacebookも利用しています。現在は14万人への情報発信を行っており、すべての店舗の店長がFacebookに日記を投稿し、17万もの『いいね!』をいただいています」

日本語のFacebookページへのアクセスにおいて、同業種の多い会社で約10万人程度であることを考えても、スノーピークがSNSを介してつながるユーザー/ユーザー候補数は注目に値します。

デジタルの力も活用し、新たな顧客提案を展開

売上機会を創出するためには、アウトドアの裾野を広げる取り組みに加え、既存顧客への新たな提案も欠かせません。

「アウトドア初心者向けのエントリー商品として約3万円の価格で展開するドームテントのシリーズ「アメニティドーム」という商品は、年間約3万張を売り上げる、業界ベストセラーのテントです。このような戦略商品を買っていただく新規ユーザーに加え、当社商品を使っていただいたことのあるユーザーへの追加提案というアプローチがますます重要となります。例えば、地表にダメージを与えることなく焚火ができる「焚火台」という商品を核に、その上で料理ができるネットやプレートといった追加システムを拡充するといった展開が考えられます」(山井氏)

このような戦略的な提案活動を支えるのが、既に18万人の会員数に達するポイントカードの情報、そして情報システムの強化です。「お客様とのつながりを重視しながら商品を考えて提案していく過程で、店舗や担当者のスキルによる格差をできるだけ排除したいと思っています。提案の品質を高めるため、現在SAPソリューション(SAP S/4HANA、SAP Hybris、SAP Predictive Analytics)の導入プロジェクトが進行している最中です。あらゆる販売チャネルの購買データを基にお客様の動向を分析し、より多くのお客様に合致した商品を最適なタイミングで提供するために、情報システムを活用していく方針です」(山井氏)

お客様と直接触れ合い、語り合う「リアル」な場を大切にしながらも、数十万人と瞬時に情報共有できるSNSなど「デジタル」を最大限に活用し、さらにデータを活用して多岐にわたるニーズに応えるスノーピーク。同社にとって、リアルとデジタルを併用したカスタマーエンゲージメントは、正にコアのビジネス戦略となっています。