セントラルファイナンスを活用した経営管理の高度化ステップ ~グローバル企業に学ぶ効率的かつ柔軟な経営管理基盤の構築~


去る9月9日(金)、マンダリンオリエンタル東京において、企業のCFO、経理財務担当の皆様をお招きした、SAP Finance Summitが開催されました。(前回の記事はこちら)SAPが提唱するセントラルファイナンスを主なテーマとする本イベントでは、経営戦略や経営管理プロセスの構築から始まりSAPシステムの導入コンサルティングまで豊富な実績を持たれるデロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員の安井望氏をゲストスピーカーとしてお招きし、「海外事例から学ぶ:効果的かつ効率的な経営管理基盤の構築 ~グローバルに活躍する大手製造業の選んだ最良の策とは~」と題して、これからの経営管理に不可欠なセントラルファイナンスという考え方と、それを支えるプラットフォーム、さらに海外の最新事例について講演しました。

「デジタル化」は経営管理の高度化において不可避の課題

img_0334_%e5%ae%89%e4%ba%95%e6%b0%8f冒頭で安井氏は、最新のテクノロジーや環境変化が経営管理にもたらす影響について、次のように話されました。

「デジタル化によって、経営の意思決定に用いられる情報の量は膨大になっています。同時にデータのコネクティビティとスピードも大きく変化し、企業は破壊的な変化に直面しています。これまではカスタマーエクスペリエンスの向上が多くの注目を集めてきましたが、デジタルで顧客接点が変わる、フロントエンドが変わるということは、バックエンドの基幹システムにおいても変革が待ったなしの状況です。SAPのデジタルコアというメッセージもこうした背景から出てきていて、SAPシステムにとどまらず、現在の経営においてデジタル化は避けられません」

こうした変化は当然、経理財務の業務、また経営管理プロセス全般にも大きなインパクトをもたらします。意思決定は、ただ単に情報が見えているだけでは成り立ちません。正確かつタイムリーな情報に基づいて迅速な判断を行い、アクションにつなげることが重要となります。勘と経験に依存した判断が許容されたのは、すでに過去の話です。データドリブンな企業経営の時代において、多くの企業は現在、次のような環境整備が必須となっています。

  1. 情報の粒度、スピード、精度をどの程度に設定するかを明確にする
  2. 的確な意思決定、高度な経営管理を実現するための仕組みを用意する
  3. 情報とプロセスのモニタリングを常時行える環境を構築する

意思決定のスピードを高める「ソフトクローズ」という考え方

こうした課題への対応において、安井氏は「日本の企業、特に大企業はいつも同じところでつまずくケースが多いと感じています。それは、データのインプットの課題です。データのインプットが最終的な意思決定を含めたすべてのプロセスを左右することを、今あらためて認識するべきです」と警鐘を鳴らします。0909fs_02-01

SAPのソリューションを導入する多くの企業は、その効果として「リアルタイム」を期待しています。しかし、データの入力、インプット自体がリアルタイムで行われず、しかも不正確な状況では、経営者やマネジメント層から「レポートの内容が本当に正しいのか疑わしい」といった声が上がり、せっかく投資を行った仕組みも経営に生かされません。つまり、「最新の正確なデータが存在している」という状況を確立しないことには、経営管理の変革に向けたスタート地点に立つことはできません。

また日本企業にとっては、「データの粒度」「情報のスピード」「情報の精度」も大きな課題です。

「データの粒度」について考えると、経営層、ミドル層、現場の各階層で求める粒度はそれぞれ異なります。経営層は販売予測、マーケット情報といったビジネスポートフォリオに関する意思決定に必要な情報、またミドル層では経営層よりも粒度が細かいプロダクトポートフォリオなどに関するデータ、さらに現場ではオペレーション上の意思決定を支援するデータが必要になります。粒度が異なるとはいえ、これらの情報はすべてつながりを持っています。しかし、これまでは各階層それぞれの考え方で分断されてしまっていました。やはりデータドリブンな経営管理を実現するためには、意思決定に関わるデータは同じソースから集約し、インプットの段階から一元的に管理されなければなりません。0909fs_02-02

次に「情報のスピード」です。安井氏によると、スピードは従来からの日本企業の継続的な課題であり、特に意思決定の迅速化は大きなテーマです。グローバルでは当たり前になってきている週次の意思決定を実践できている日本企業は、サプライチェーンの領域などを除いてまだ多くありません。この根本的な原因となっているのも、やはりインプットの課題です。

「ここで重要なのが、ソフトクローズという考え方です。誤解を恐れずに言えば、グローバル企業では、月次決算を含めて数字の正確性はある意味でアバウトです。意思決定のスピードを何よりも優先するため、直ぐに判断ができることが重要だということです」

これは「情報の精度」の課題についても同様で、グローバル企業ではスピーディな意思決定を誤らない程度の情報の正確性、タイミングが保たれていれば、それで十分だという考え方が主流です。早く情報を集めて、早く意思決定する、そのサイクルが短縮化することによって判断の修正も少なくて済むため、このようなマインドを持たないことには、不完全なインプットに始まる負の連鎖をいつまでたっても解消することができず、グローバルな市場競争に打ち勝つことはできないと安井氏は指摘します。0909fs_02-03

セントラルファイナンスで経営環境を段階的に整備

こうしたソフトクローズの考え方、意思決定のスピード化を実現するためには、最新のテクノロジーを使った仕組みの構築、あるべき姿のプラットフォーム化が必要です。安井氏は、このプラットフォームの第1の要件は「柔軟性の確保」だとして、以下の3つのポイントを挙げました。

・システムが標準化 or 統合されている(個別対応が不要)

・データの連携方法が標準化されている(すぐにデータが取り込める)

・要件変更時に修正箇所が少ない(スピードの向上)

「世の中には、標準化と柔軟性は両立しないという考え方もあるようですが、これは誤解です。柔軟性とはすべての人の意見を受け入れることではありません。これだけ変化に富む社会で、変化に迅速に対応する上では、上記の3つのポイントにもある標準化が重要な意味を持ちます」0909fs_02-04

また、安井氏は自身の豊富なコンサルティング経験を踏まえ、こうしたプラットフォーム化の取り組みは、会計システムの高度化、標準化からスタートする企業が多いと話します。グループの中で異なるERPが稼動している場合、それらの会計システムをすべて入れ替えるのは無理があります。既存の環境を生かしながら、できるところから段階的に統合していくことが、今後この課題に取り組む日本企業に対する最善の解ではないかと話します。この考え方を体現しているのが、まさにSAPが提唱するセントラルファイナンスです。

「デロイト トーマツ コンサルティングでも、会計データの高品質化に向けたさまざまな取り組みを支援していますが、これは複数の国にまたがると大変なプロジェクトとなります。そのため、当社のお客様のケースでも、まずGLの統合から着手して、グループ内の会計データの連携ポイントを増やしながら、プラットフォーム(セントラルファイナンス)上でデータの精度を高め、AP、ARの統合は第2段階、第3段階からという進め方が多くなっています」

GLの統合を先行させたグローバル企業の成功事例

安井氏はこの具体的な事例として、グローバルでビジネスを展開する製造業の例を挙げました。相次ぐ企業買収によってITの複雑化、また個々のシステムの老朽化に悩まされていたこの企業は、SAP S/4HANAを使ったセントラルファイナンスによって、大きな成果を上げつつあるといいます。この企業も、セントラルファイナンスの導入においてはGLの統合を最優先し、10週間という短期間でプロトタイプを完成させました。

「この事例では、まずGLの統合を行った後に、各プロセス(AP、ARなど)の統合を段階的に進めるアプローチで、ビジネスユーザーに対する影響を最小限にしています。また地域の子会社へのパイロット導入を実施し、今後は地域特性や通貨単位に応じた柔軟な展開が可能になっています。ここでは、1つのプラットフォーム上に徐々に吸収させていくアプローチの有効性が明確に示されているといえます」

また、もう1つの例として挙げられたのが、消費財企業の事例です。この企業がセントラルファイナンスを導入する大きな目的は、会計データの統合だけではなく、シェアードサービスの促進による競争力の向上にありました。そのプラットフォームとしてSAP S/4HANAを選択した同社は、シェアードサービスの展開を加速することで、プロセス統合を含めた変化の基盤を構築するとともに、これまで実現できていなかった経営管理情報の統合による自在な財務レポートの作成が可能になっています。また、連結決算のスピードが飛躍的に改善されたことで、株価への市場のポジティブな反応にみられるなど、企業価値の向上においてもセントラルファイナンスが貢献を果たすようになっています。

これらの先進的な事例は、テクノロジーの飛躍的な進化によって、ここ数年で大きな進展を見せている取り組みの一例です。SAP S/4HANAを使ったセントラルファイナンスのプラットフォームは、段階的な選択肢を提供する高度な柔軟性を備えているだけに、各社のビジネス環境に応じたスピードで進められるようなっています。今後、業界を問わず、経営管理の高度、グローバル市場における競争力の向上を目指す企業にとって、これらに先進事例は非常に参考になるはずです。

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