SAP® S/4HANAの最新リリースでイノベーションされる会計プロセス


2016年10月31日にSAP® S/4HANA Enterprise Management 1610(以降、SAP S/4HANAと表記)が
リリースされました。SAP S/4HANA 1511のリリースが昨年11月でしたので、オンプレミス版としては、約1年振りのリリースになります。(2016年11月時点で本稼働が342件、プロジェクト中は1507件となっています)今回のブログでは、11月17日に公開させて頂きました全体概要に続きまして、この最新リリースでどんな機能が拡張されイノベーションが図られたのか、会計プロセスの視点からご紹介したいと思います。

まず、当リリースでは、下図に示すように大きく10のカテゴリにおいて機能拡張が行われています。何れも欲しかった機能ばかりですが、新たに連結領域としてリアルタイム連結機能が登場しました!内容につきましては、後半に概要やコンセプトを書かせて頂きましたので、宜しければ
ご一読ください。まずは、下記に機能拡張されたそれぞれのトピックスについて、簡単な内容と
お客様における活用メリットなど、考察を交えご紹介していきます。

1

ユーザインタフェース

SAP Fiori(以降Fioriと表記)が2.0にバージョンアップしました!会計領域でのFiori活用につきましては、2016年10月13日号でご紹介させて頂きましたが、このFioriにたくさんのアプリが追加されました。一例を挙げますと、グループ間取引の照合機能や入金データ(FB入金データなど)の消込状況を管理する機能、製品原価の分析機能、金融商品におけるポジション分析機能などなど財務会計領域、管理会計領域、資金財務領域に渡る範囲でも約180のアプリが拡張もしくは新規追加になっています。また、Fiori2.0では新たにユーザー通知機能が追加され、自身が行うべきToDoを素早く
確認し、仕事の漏れを防ぐことも可能になりました。Fioriは、従来のユーザインタフェースであるSAP GUIと比較して、約30%~50%程度の操作性向上(画面遷移や見易さ、クリック箇所の削減など)をもたらすと言われていますが、こういった機能の追加で効率性は増々アップすることになりそうです。

ユニバーサルジャーナル

ユニバーサルジャーナルは、いわゆる総勘定元帳の伝票明細が格納されているテーブル(ACDOCA)になります。従来、伝票明細上で管理される通貨は、取引通貨以外に管理通貨としてローカル通貨とグループ通貨×2種類での管理が可能でしたが、この機能が大幅に拡張されており、最大10通貨での管理(帳簿毎に)ができるようになりました。また、システム稼働後において、新たな会計基準用の総勘定元帳を追加することも可能になっています。(新規の帳簿設定と初期残高や既存会計伝票の移行処理が可能)これによって、IFRSや管理会計(複数通貨や複数会計基準による業績管理など)への対応がより柔軟に行えるようになったと言えます。(なお、トランスファープライス:内部振替価格機能も当リリースでサポートされました)

収益性分析機能

収益性分析機能は、収益や原価について、相手先や用途、地域、事業、商品分類など多次元での採算分析を行う機能ですが、勘定ベースPAと呼ばれる勘定科目をベースとした分析機能が強化されました。例えば、損益計算書の売上原価や原価差額といった財務数値とその内訳である製造原価数値を容易に把握する(原価計算機能の利用が前提)ことができるようになりました。従来は別々の
レポートとして見る必要がありましたので、レポート間の整合性や複数のレポートをエクセルで
1つに加工するといった手間が掛かっていました。この機能強化によって、1つのレポートにて素早く制度会計上の勘定科目から製造コストに関する原価内訳を分析することが容易に行えるようになりました。

2

また、プロジェクト収益に関する予測機能も追加されました。プロジェクトに関する収益認識は、一般的に原価計上の進捗(工事進行基準)によって行われますが、これまでの機能では、この処理を月次や期末処理として行う必要がありました。従って、期中においてプロジェクト収益が見えにくかったのです。当リリースでは、プロジェクト別収益レポートの出力時に、自動的に原価進捗を計算して収益を予測しますので、常に最新の収益状況をモニタリングすることが可能になりました。

更にもう1つ、これまで収益性分析機能はPL勘定に限定されていましたが、売掛金や仕掛品といったBS勘定についても多次元での分析が行えるよう、機能を強化していく方向性になっています。
分析の効率性と用途の広がりによって、よりデジタルな数値を活用した経営支援ができるようになります。

回収管理機能

回収管理機能は、債権管理の入金管理プロセスと密接に関連する機能です。当リリースでは、日本向け機能として仮想口座番号(入金処理の際の得意先マッチングを効率化する仕組み)や締め請求機能などがFiori対応しています。その他、B to C領域での回収管理機能が強化されていますが、ここでの説明は、割愛させて頂きます。

支払管理機能

支払管理領域では、SAPのクラウドソリューションであるAriba(調達管理)やConcur(旅費精算管理)との連携が強化されました。特にAribaとの連携では、直接材のプロセスにエンドツーエンドで対応できるようにサプライヤに対する支払通知情報の連携機能(SAP S/4HANA→SAP Ariba)が追加されました。
これまでは、間接材中心に使われることが多かったAribaですが、SAP S/4HANAとのプロセスの
住み分け、必要データの連携機能などが一通り整備されたことで、直接材、間接材を問わずSAP Aribaを通じた調達プロセスの効率化と標準化を実現できることになります。

資金管理・財務取引管理

資金管理領域では、資金ポジションレポートが拡張されました。これまでの銀行や口座別でのポジション管理に加え、資金科目単位での資金の出入りを時系列に可視化できるようになりました。
また、販売管理機能(SD)と調達管理機能(MM)との連携もサポートされ、債権や債務になる前の受発注データを基にした資金の動きから、数か月先(最大で24週間)までの資金繰りがサポートされています。

3

財務取引管理領域では、信用状(Letter of Credit:LC)の管理が新たに追加されています。信用状管理は貿易を行う上で、重要なプロセスとなりますが、これまでの機能レベルは信用状マスタの管理ができるといった程度に留まっていました。これに対して当リリースでは、信用状に関連する取引と信用状ステータスが連動するようになり、会計仕訳にも対応できるようになりました。また、
売り側、買い側のいずれにも対応可能になっています。

計画策定機能

計画策定機能ではSAP BPC optimized for S/4HANA for Finance(以降SAP BPCと表記)でのテンプレートが幾つか追加(新規4つ、拡張1つ)されました。これまで、対応していなかった販売計画における単価×数量や操業度計画における賃率×数量などがサポートされ、より計画のレベルを精緻化できるようになりました。これによって、SAP S/4HANAで蓄積される実績数量や実単価と計画情報との差異分析が可能になります。また、原価シミュレーション機能(配賦元数値の増減や配賦基準の変動など)も追加されています。これは、SAP BPCで入力した部門原価(原価センタ)の計画値やSAP S/4HANA上の部門別実績値をSAP BPC側で配賦処理し、即座にレポーティングするという機能になります。特に実績値の配賦という点では、これまではSAP S/4HANA上の管理会計機能を利用して配賦を行っていましたが、配賦処理結果については、帳簿上に伝票転記が行われる仕組みでした。従って、シミュレーション的に基準値を変えて何度も処理したいという要件への対応が難しかったのですが、この原価シミュレーションの登場によって、配賦処理結果を反映したPL出力がリアルタイムに何度も行えることになり、分析・レポーティング業務において飛躍的な効率化が期待できます。

4

技術的な面では、計画データを統合管理するテーブル(ACDOCP)が新たに追加されました。ACDOCPは、計画実績比較などのレポート作成や分析、SAP S/4HANAから周辺システムへ計画実績データを連携するような場面で、それらをより効率的に行うためのものになります。今後の方向性として、ACDOCPを活用した新たな計画シナリオの提供を検討しています。

レポーティング機能

製造原価に関連するコストレポートがFioriに追加されました。工場別製品別での原価構成や実績と計画の金額や数量比較などを容易に確認できるようになっています。また、制度会計レポート領域での拡張として、XBRLやXML、PDFなどの出力フォーマットにも標準対応しました。

セントラルファイナンス

セントラルファイナンスは、グループ各社で保持する会計システムから会計伝票をリアルタイムで収集し、グループレベルでの総勘定元帳を保持するというコンセプトを持つ機能ですが(詳しくはこちら)、当リリースでは、グループ各社の会計伝票の収集に加え、債権債務の未決済明細(いわゆる債権債務に関連する入金予定や出金予定に相当するデータ)を連携するシナリオが追加されました。もちろん、送り元の会計システムで入金や支払処理、もしくは決済条件の変更などを行うと、そのデータも合わせて連携することが可能になっています。これによって、グループレベルにて相手先別の債権債務の残高や入出金予定の情報、支払遅延や入金遅延といった情報を本社や地域統括会社から、いつでも確認することができるようになります。言わずもがなですが、こういった業務機能は、会計監査や内部統制の点でとても有効な要素になります。また、支払や入金処理をグループ会社から本社やシェアードサービスでの集中プロセスに変更するシナリオも新たに追加されました。資金の決済機能を集中管理することで、資金面での統制や効率化(運転資金の削減など)をサポートできることになります。

5

リアルタイム連結機能

ついにSAP S/4HANA(BPC optimized for S/4HANAの利用が前提)に連結機能が実装されました!この連結機能は制度連結、管理連結をサポートするのですが、SAP S/4HANAにビルトインされた連結機能ですので、前述のセントラルファイナンスと合わせて利用することで、既にSAP S/4HANAに集約された
グループ各社の会計情報をダイレクトに使って連結処理が行えるようになっています。確定前のデータを利用した速報ベースでの連結、確定数値(セントラルファイナンス側で月次締めが可能)での連結などタイミングやデータの再取得などシステム的な制約を気にせず、リアルタイムに連結処理が行えるようになります。また、とかく連結数値はグループ会社の会計帳簿とは切り離されていて、本社ではグループ会社が提出する数値の内訳が分からないという課題がありましたが、この新機能では連結数値から各グループ会社の財務数値をドリルダウンして確認することも可能になっています。このように、ビルトインされたことによるメリットは非常に大きいものがあります。
まだ、リリースしたばかりですので、国内での利用実績はこれからとなりますが、既に多くのお客様がご興味を持たれており、関心の高さがうかがえます。

6

また、SAPが提供するもう1つの連結機能としてSAP Business Objects Financial Consolidationという機能があります。国内でも多くのお客様にお使い頂いていますが、このソリューションにつきましても継続的な改良とサポートを予定しています。

さて、今回お伝えしましたSAP S/4HANA Enterprise Management 1610ですが、当ブログでは、
ほんの触りをご紹介させて頂きました。今後、セミナー等での機能紹介や引き続き当ブログにおいても一歩踏み込んだ新機能のご紹介をしていく予定です。ご期待ください!

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)