あらゆる企業にデジタル変革の可能性がある
〜 多様なデジタル変革事例が明示する法則とは 〜

作成者:SAP編集部 投稿日:2016年11月25日

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デジタル変革は「さまざまなテクノロジーの進化を起点に、新たな価値を創出すること」と定義することができます。多様化し、より変化が加速するテクノロジーの潮流の中、デジタル変革は現実のものとなってきています。7月29日に実施されたSAP Forumでは、SAPジャパン カスタマーオフィサー、大我猛が「あらゆる企業にデジタル変革の可能性がある」と題して、従来の手法や範囲を超えた新たなビジネスの実践例を交えながら、デジタル変革の法則をご紹介しました。

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デジタル変革には「法則」と「再現性」が不可欠

モバイル、IoT、ビッグデータ、クラウド、機械学習など、さまざまなテクノロジーの台頭や進化を起点に、新しい製品、サービス、ビジネスプロセス、そしてビジネスモデルを通して新しい価値を創出することを「デジタル変革(デジタルイノベーション)」と定義しています。イノベーションとは、発明(インベンション)とは異なり、既存の要素の新結合によって新しい価値をもたらすものです。デジタル変革もまた、一握りの天才だけが実現するものではなく、法則があり、再現性があることが重要と大我は語ります。

アカデミックな世界でもビジネスモデルに関する研究が行なわれており、スイスのザンクトガレン大学では、ビジネスモデルを精緻に分類することで、現時点では55個のモデルに類型可能であることを明らかにしています。興味深いのは、実際のビジネスの場において、特定の業種で当たり前になっているモデルを他業種に適用したところ、大きな効果を発揮したというケースがあることです。「新たな発明ではなく、既存の要素の再結合」を行うには、異業種から学べることが多いのです。

ただし、55個のモデルは実際に扱うには多すぎるため、SAPではデジタル化によるビジネストレンドを17に分類し、これらのトレンドを組み合わせることで新たな6つのビジネスモデルが可能となるとしています。 %e5%9b%b32

デジタル化による新たな6つのビジネスモデルと適用事例

これらの6つのビジネスモデルを以下に示します。

ビジネスモデル 概要
Outcome-based Business Model
「成果に基づくビジネスモデル」
既存のビジネスから、新しい価値提案と収益モデルの確立を行う
Shared Economy
「資産の共有コミュニティ」
シェアリングエコノミーとは商品やサービスへのピアツーピア型のアクセス共有を意味し、その活動はコミュニティベースのオンラインサービスによって調整される
Digital Channel & Business Platform
「デジタルチャネルによる新たな顧客接点の創造」
消費者と企業をつなげる大規模なコミュニティとの接点をつくることで、既存のビジネスから、新しい価値提案と収益モデルの確立を行う
Digitalization Of Products & Services
「商品とサービスのデジタル化」
「デジタル商品の DNA」を保管し、3Dプリンタのような高度なテクノロジーを活用して、必要な時点で物理的な商品に変換し提供する
Compete As An Ecosystem
「エコシステムを構築して戦う」
自社既存ビジネスのコア資産と他社のコア資産の融合によるエコシステムの創造
Expand to New Industries
「新たな業種への事業拡大」
自社の潜在能力を活かしたパワフルなイノベーションにより、新たな業種に事業を拡大する

これらのモデルを活用することで、大きな価値や成功をもたらした事例は既に数多くありますが、ここではケーザーコンプレッサーの例をご紹介します。同社では、上記6つのビジネスモデルのうち1つ目のOutcome-based Business Model(成果に基づくビジネスモデル)が適用されています。

・ ケーザーコンプレッサー社

「成果に基づくビジネス」モデル:圧縮空気を使った分だけ支払うサービスを再創造

圧縮空気をつくるコンプレッサーを製造/販売するメーカーのドイツのケーザーコンプレッサー社。近年、競争が激化し空気品質・節電・稼動率を各社が競っているコンプレッサー業界にあって、同社は生き残りのための検討を進めました。ここで浮上してきたのが、単なる製品販売ではなくユーザーの利用に基づいたサービスの提供というビジネスモデルでした。実現されたのは「圧縮空気を使った分だけ支払う」というサービスでした。本来ユーザーが望んでいたのは、コンプレッサーを扱うことではなく「圧縮空気を安定して、リーズナブルに使いたい」ということでした。

このビジネスモデルを17のビジネストレンドの一部を使って要素分解すると次のようになります。

「行動の追跡」:10秒おきにコンプレッサーから、空気温度、圧縮レベル、消費電力などの稼働状況を把握可能とする。

「現状把握から予測分析へ」:時系列データをもとに利用パターンと正常な運用状況パターンを分析。正常な運用パターンと対比して異常運転を早期検出できるようになる。

「個別ニーズへの対応」:リモートでの保守運用サービスを提供。稼働率、稼働性能のSLA契約によりサービスレベルを向上。

新たなビジネス変革によるケーザーのサービスはこうして多くのユーザーに受け入れられ、そのビジネスは右肩上がりで伸びています。

SAPによるデジタル変革支援ステップ:デザインシンキング、バリュープロトタイピング、そして成熟度アセスメント

ご紹介した例のように、要件を分解しモデルに適用できることの重要性は、誰でもがこれらのモデルを使用し法則に則った対応を行うことでデジタル変革を起こすことができるという点です。

その手順は明快で、①デザインシンキングを使って顧客の真の欲求を見出し、②これらの要件に対して、デジタル化の新しい17のトレンドを紐付け、③最終的に6つのデジタル化による新たなビジネスモデルを使用して変革するというものです。SAPはこのように体系化・法則化された形で、お客様のデジタル変革をサポートします。

最後に大我氏は、デジタル変革を支援するSAPが提供するフレームワークを紹介しました。そのコアとなるのは、「デジタル成熟度アセスメント」、「デザインシンキング with SAP」そして「バリュープロトタイピング」です。

まず「デジタル成熟度アセスメント」と呼ばれる診断サービスを実施。業種横断的な項目および26の業種別に、お客様のデジタル成熟度のアセスメントを行い、診断結果を提示します。「デザインシンキング with SAP」では、エンド顧客(SAPのお客様のお客様)の「真の要求が何か」という点を掘り下げていきます。思考方法論とも言えるアプローチですが、重要となるのは、あくまでエンド顧客の要求にフォーカスしている点です。SAPが共に参画する形で要求を明確化し、次にこれを実現するためのデジタル・テクノロジーをあてはめていきます。前述の17個あると言われる「デジタル化による新たなビジネストレンド」を意識しながら「バリュープロトタイピング」でアイデアを具体的なスコープやプロセスに落とし込み、UXを重視したアプリケーションや業務フローを具体的な形にした上で評価を行います。そして、このプロトタイピングのサイクルを反復することでデジタル化の精度を向上して行きます。

SAPでは、このようなフレームワークを提供することで、お客様がデジタル変革を実際のビジネスの場に適用する際のハードルを低減して、具体化していきます。

成功事例を紹介しながらその意義を明らかにした本講演を通じて、「デジタル変革は、今日の企業がそのビジネスをより価値あるものとして顧客に提示し、企業活動を継続していくために不可欠です」という大我のメッセージは、多くの参加者に共感を持って受け入れられたようです。

 

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