IoTで新たなビジネス創造を目指すイノベーターが集結-Business Innovators Network キックオフ(前編)


2016年10月、SAPジャパンは、各企業でイノベーションをリードする“企業イノベーター”どうしの交流会「ビジネス・イノベーターズ・ネットワーク」を立ち上げ、そのキックオフイベントとして「SAP IoT Executive Summit 2016 Tokyo」を開催。大手企業のエグゼクティブはもとよりスタートアップ経営者、日独政府など、80余名が参加し、活発な情報交換が行われた。前後半の2回に分け、サミット内で語られたIoT活用の最前線を通じて、これからの日本企業のイノベーションの姿について考察する。(後編はこちら

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SAP IoT Executive Summit 2016 Tokyo オープニング

 

IoT推進に向け日本とドイツの連携が加速

サミット冒頭では、経済産業省 商務情報政策 統括調整官の𠮷本 豊氏が挨拶。経済産業省は「IoT推進ラボ」を組織し、先進的なIoTプロジェクトの発掘・育成に向けて、企業連携・資金・規制改革支援を実施しており、SAPを始め国内外のICT企業や教育・研究機関が参加している。𠮷本氏は、「ラボでは、数多くのIoTビジネスのアイデアを皆様からいただいていますが、その実現には既存のさまざまな規制が障壁となることも少なくない。経済産業省としては、そうした規制の緩和に向け、各所管省庁に働きかけるお手伝いをしたいと考えています」と、行政からの力強いサポートを表明した。

また、インダストリー4.0を牽引するドイツと日本の提携も始まっている。在日ドイツ連邦共和国大使館の一等書記官 マルコ・シュルト氏は、ドイツ経済エネルギー省と経済産業省の間で2016年4月に交わされたIoT/インダストリー4.0協力に関わる共同声明に触れ、「ドイツ政府としては、この分野における国際標準化、産業、サイバーセキュリティ、規制緩和、研究開発などについて、政府間協力だけにとどまらない業界間の協力も促進していきます」と、両国政府が全面的な協力関係を推し進めていくことを表明している。

 

IoTの進化と社会への拡がりに向け包括的なソリューションを提供photo_tanja

続いてSAPからは、SAP本社ソフトウェア開発部門のエグゼクティブ・バイスプレジデントとしてIoTおよび新規製品開発に携わるターニャ・リュッカートが講演。IoTへの取り組みの一例として製造業のデジタル化を取り上げ、インダストリー4.0を受けて大規模な変革のまっただ中にある製造業にとって、デジタル化への大規模投資が必要だと指摘する。

「製造装置や車両などの機械をシステムの一部に取り込むことができれば、そこから得られる膨大な情報を1つのネットワークにすべてまとめることができる。その情報を関係者全員が共有したり、使用履歴や得られたデータを機械自身が学習していくことで、さらに新しい知見や技術、人と機械の関係そのものにも大きな変化が起こり、新たなビジネスが生まれてくるでしょう」tanja
SAPではIoTのあらゆる分野におけるポートフォリオを提供

 

ビジネスに、医療に、パラダイムシフトを目指す日本のIoTのパイオニアたち

ここで、日本におけるIoTのパイオニアといえる3つの事例をご紹介したい。他に先駆けてIoTを実践しているだけでなく、それぞれのビジネスや事業に変革をもたらす挑戦と呼ぶにふさわしいものばかりだ。

物流現場の手押し台車を自律型ロボットに:

株式会社ZMPphoto_taniguchi

1つ目は、株式会社ZMPによるロボット技術のソリューションだ。同社はロボット分野を世界的なレベルでリードする技術力で知られており、とりわけ自動運転車などの移動するロボットを得意としている。2008年には自動運転のためのR&Dプラットフォームを開発し、2015年にはDeNA社とロボットタクシーの合弁会社を設立した。そのZMPが現在注力しているのが、物流の現場で働くロボットのためのIoTパッケージ開発だ。

代表取締役社長の谷口 恒氏は、「これまで物流の現場で使われてきた手押しの台車にセンサーやRFIDシステムを搭載。SAP ERPや物流システム(WMS)と連携してロボット化し、在庫管理から経営の効率化までを支援可能なパッケージとして提供していく計画です」という。

この「CarriRo(キャリロ)」と名付けられたパッケージは、すでに2016年8月から出荷が開始されている。年間稼動数100万台と言われる物流現場のプラスティック台車が、今後、急速なペースで自律稼動するロボットに変身していくのは間違いない。日常見なれた道具ですら、IoTの視点で見直すことで革新的な自律稼動システムに生まれ変わるという好例だ。

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自律移動・自動追従する台車CarriRoをSAP ERPや物流システム(WMS)と連携

 

スマホを介して妊婦のデータを収集。妊娠糖尿病予防ケアを実現:

国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科photo_arata

次は、IoTを医療分野で活用している国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科だ。同科では妊娠準備・妊娠中・産後のケアを一貫して行うことで、女性と子どもの将来にわたる長期的視野に立った健康管理を実現している。

その中でも力を注いでいるのが、妊娠糖尿病のリスク発見と予防・治療だ。妊娠糖尿病とは、「妊娠中に初めて発見または発症した、まだ糖尿病には至っていない糖代謝異常」を指す。妊娠全体の1割に現れる症例で、周産期の難産や早産、死産の増加に加え、妊婦やその子供が将来糖尿病を発症する可能性など、長期にわたるリスクが明らかになっている。

同科医長・医学博士の荒田 尚子氏は、「母性内科では、スマートフォンで妊婦と医療者をつなぐ『妊娠糖尿病プログラムパッケージ』を通じて、産前産後を通じた妊婦の支援をまさに行おうとしています。SAPのヘルスケアIoTソリューションであるSAP Health Engagementで妊婦のビッグデータを蓄積し、データを活用した診察や妊娠糖尿病予防・治療のためのプログラム提供などによって、産前・産後を通じた多角的で精度の高いケアの提供が可能となります」と語る。

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産前・産後を通じて大量のデータを蓄積し、妊娠のステージに応じた最適のケアを実現

 

業界初の「月額定額乗り換え放題」で革命を起こす自家用車サブスクリプションモデル:

株式会社IDOMphoto_kitajima

3番目は、2016年4月にガリバーインターナショナルから社名変更した、株式会社IDOM(イドム)だ。全国規模での中古車販売・買取で知られてきた同社だが、自動運転車の実用化やカーシェアリングのような市場の変化に対応するため、よりユーザーの視点に立った新たなサービスパッケージ創造に精力的に挑む(IDOM)。

その目玉とも言うべき新サービスが、2016年8月から始まった”車のサブスクリプションモデル”である「NOREL」だ。執行役員 新規事業開発室長の北島 昇氏は、「月額4万9800円で、当社がご用意した買取車の中から、最短90日で自由に乗り換えられるというサービスです。いま世の中では『所有から利用へ』といった動きがありますが、実はこうしたカーシェアリングを利用されている方は、現在車を所有していない方です。そこで私たちは、いま車を所有している方々がどんなサービスを求めているかに着目し、新たなお客様として取り込んで行こうと考えました」と明かす。この目論見は見事に当たり、最初の先着100名限定の予約は即日完売となったという。

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NOREL: 毎月一定額を支払うだけで、100車種以上から好きな車を自由に乗り換え放題

 

後編に続く