2017年、先読む人事は、常識を重んじる!
作成者:荻野 まどか 投稿日:2017年1月20日
2月7日には、SAP SuccessFactors恒例のValue & Innovation Practice(VIP)イベントを開催します。今回は、以前よりお伝えしています、Steven Hunt博士をお招きしています。そのHunt博士は2016年新年に、「Has Anything Changed? Analyzing the 2016 Human Capital Predictions 」と題して2004年と2016年の人事トレンド予測の相違について書かれています。(参照:”Has Anything Changed Analyzing the 2016 Human Capital Predictions, https://www.eremedia.com/tlnt/has-anything-changed-analyzing-the-2016-human-capital-predictions/)10年の間にどれだけ、人事関係のトレンドが変化したのでしょうか。その話題を今回はご紹介しましょう。
Hunt博士の人事システムに関する理論は、著書のタイトル“Commonsense talent management: using strategic human resources to increase company performance” に色濃く出ています。彼の理論は別に難しいことに基づいていません。つまり、働く人々を生かすには、常識的な考えに基づけば良い、ということです。しかし、多くの企業や組織は、その常識的なことを忘れがちなため、彼の理論が再検討されています。私たちも、一日のほとんどの時間を仕事関係の環境で過ごしています、それは、家族との時間より遥かに長い時間です。その大半の時間を生き生きと暮らせなければ、大事なはずの家庭での時間も暗くなってしまいます。人を幸せにするような仕事環境を考えれば、おのずといろいろな答えが見つかるのではないでしょうか。
Hunt博士によると、2004年と2016年の米国における人事トレンド予測は、10年という年月の開きに反して、驚くほど似ていたそうです。例えば、次のリストから、2016年には入っていたが、2004年の予測に入っていなかったのはどの項目だか、わかりますか?
- 人員配置や人員補充のプロセスは最初の採用決定に留まらず、採用された人間が組織に深く関わり、会社に溶け込むまでの長い期間を追うようになる。
- 企業はバーチャルなワークスペースという概念を実践的に使うようになり、社員が世界のどこの人とでも仕事ができるようなシステムについて学習する機会や製品を与えるようになる。
- 就職希望者は、パソコンなどの情報端末機を駆使しての在宅勤務を許可しているかどうかで就職先を決めるようになる。
- より年配の就労者の興味、動機、能力、制限を企業は注視するようになる。
さて、10年後にどれだけ変わっていたのでしょうか。多くの人の予測に反し、あまり変化はありませんでした。答えは、”3″ だけです。大きな変化のなかった理由として、Hunt博士は人間の根本に関係するとしています。つまり、大きく変わったのは技術や環境だけで、人間自体は根本的に大きく変わっていないのですから、人に関係する人事部門の問題もそう大きくは変わらないということです。魅力的な人材を惹きつけ、その人々の才能を開発し、彼らを組織に取り組み、引き留めることがすでに2004年には、企業間で大きな問題でした。それは、現在でも全く同じです。しかし、10年たった現在では、これらの問題を指摘し、改善する方法が変わってきているということは確かでしょう。
2017年もおそらくそれほど2016年と状況は変わらないでしょう。ただ、働く人々の幸せを基本に考えれば、彼らのやる気や組織への意識が高まるでしょう。それには、個々の要求に対応できるような柔軟性を持つことが大きな基礎となるのではないでしょうか。幸せは人それぞれ、年齢や性別、家族体制などで異なります。皆を一括した人事管理ではうまくいかないことをより考える必要があります。そして、常識を重んじる企業文化があれば、いろいろな不正事件はなくなるはずです。
話は変わりますが、フランスでは、就労時間外のメールを禁ずる規制で話題になっています。この勤務時間外の業務メール禁止法について、Hunt博士は反対の意見を持っています。(参照: ”Don’t Limiting Emailing: Train People How To Do It Right” https://www.eremedia.com/tlnt/dont-limit-emailing-train-people-how/) つまり、メールは問題の症状であって原因ではない、ということです。原因はそもそも、人々が効率的にメールを使用していなく、相手の立場に立って書いていないこと。そして、出す時間も相手の時間を尊重していないことです。メールを週末に書いたり、チェックしたりすることに問題があるわけではありません。
常識的な人は、誰も午後10時以降に他人の家にはよほどの理由がなければ電話しません。それと同じでメールもよほどのことでなければメールしないのが常識です。メールを出すことを規制するよりも、どうしたら、有効的な内容のあるメールを有効的な時間に出すか、ということではないか、と声をかけています。
企業文化として、重要な時にのみ、効率的なメールを書く。相手に分かりやすく、時間を尊重して出す、というものであればいいだけで、わざわざ、法律で規制することではないと思われます。規制することにより、逆に、メールを見なければならないのに、週にできなかったメールチェックができないため、ストレスとなって病気になるケースも出てくるかもしれません。一般的には、いつでもどこでも仕事は個人の自由でできるものです。それを規制するということは、自由な選択を除いていることになります。
なるほど。なるほど。常識をもとに考えれば、簡単です。言葉に惑わされず、常識を基本に人事の方には新しいことに取り組んでいただきたいです。最近よく聞く用語「待機児童」。これをニュースキャスターやアナウンサーの口からよどみなく流れるとなんとなく、「待たされている子供たち」というふうに取りがちです。しかし、どうでしょうか。子供は好んで喜んで待機しているわけではないのではありませんか?「待機させられている子供たち」ではないでしょうか。親から離されるのを心待ちする幼子たちがまるで、心待ちしているようですが、そうではありません。子供たちを幸せにするような、待機しないでもすむような雇用形態を企業が考えれば、どうでしょうか?子供たちが幸せになれば、働くお母さんやお父さんも幸せになります。ここでも、企業は何かできるのではないでしょうか。
2017年、常識を重んじる人事が一番強い、とみたり!