攻めの採用 第2回 – 採用母集団を形成し関わり合う

作成者:籔本 レオ 投稿日:2017年4月3日

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こんにちは。SAPジャパンの籔本レオです。「攻めの人事へ」というテーマで人事領域に関連するトレンドや考え方を紹介しています。
今回のテーマは「攻めの」採用として、採用手段やプロセスについて説明した上で、自社の採用を見直すためのヒントを紹介していきます。第1回では採用手段について分類や特徴を紹介させていただきました。第2回では自社の採用を見直すポイントについて紹介します。

(第1回はこちら)

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採用において実現したいこと

「優秀な人をたくさん採用したいので、自社採用サイトに直接応募できる仕組みを作り、外部に払っていた採用コストを削減します。」
「海外現地法人で現地の優秀人材を採用したいので、日本の本社の採用案件をすべて英語化して、グローバル人材を採用します。」
「国内特定地域におけるパート・アルバイト採用を強化したいので、自社採用サイトで世界地図、日本地図から募集案件を探せるようにし、グローバルで募集案件があることをアピールします。」
「人件費を適正管理するために、採用申請のプロセスにおいて年収予算もしっかりレビュー・承認しますが、候補者に確実にオファーを受けてもらいたいので本人の希望額を第一に優先します。」

上記は採用において実現したいことがあり、それに対してどのようなことをして何をねらうのかを説明しているのですが、読んでいて違和感を感じることと思います。はじめの例では、「自社採用サイトに直接応募でいる仕組み」があるからといって優秀な人をたくさん採用できるとは限りませんし、ねらいが「優秀な人材の採用」ではなく「採用コストの削減」になっています。他の例も同様にロジカルではなく前後につながりがありません。このように一文で書いてしまうと不自然さが明らかですが、実際にこのような検討がされている状況を見ることがよくあります。何かしら課題認識はるものの、実現したいこと、優先度の高いことが不明確なまま検討を進めてしまい、検討状況から説明しやすそうなソリューションに落ち着いてしまうことが原因です。

まずは、採用において何を実現したいのか、その中で優先度の高いことはどれなのか考えてみましょう。以下は実現したいことの例です。実現したいことが複数ある場合もあります。検討内容によってはトレードオフの関係になるものもありますので、その場合はどれが最も実現したいことなのかを考え、優先度をつけておきます。

 

 実現したいことの例

1) 採用の質の向上

  • 募集要件に見合ったスキル・経験のある人材を採用したい
  • 自社に長く定着してくれる人材を採用したい
  • 海外拠点で現地人材での幹部候補を採用したい
  • ポテンシャルの高い人材を採用したい

2) 採用人数の確保

  • 要員計画に必要な採用人数を確保したい
  • 拠点新設に伴う現地スタッフを採用したい
  • 欠員/欠員予定ポジションに対して、すぐに人材を補充したい
  • 特定の専門スキルをもった人材を一定数採用したい

3) プロセス・コストの最適化

  • 採用に関わるコストを削減したい
  • 採用に関わる業務を効率化したい
  • 募集から入社までの採用日数を短縮したい
  • 選考見送り、オファー辞退等の採用ミスマッチ率を下げたい

4) ビジネスへの貢献

  • 募集元部門(Hiring Manager)の採用に対する満足度を向上させたい
  • 募集元部門に採用活動状況(応募数、選考状況等)を見せたい
  • 会社・部門にあった優秀人材の傾向を分析したい

5) 思いつき・手段の目的化(こちらの目的はあってはなりませんが良くない事例として)

  • 採用のトレンドらいしのでSNSを活用した採用活動をしてみたい
  • 記事で読んだ珍しい採用手法がかっこよいのでまねしてみたい
  • きっと何かよいことがありそうだから採用システムを導入したい

※詳細を確認されたい方は、Web電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)へ、
お気軽にお問い合わせください。

 

採用プロセスの全体像

実現したいことを整理した後は、その実現のための方法を検討することになりますが、ここからは採用関連プロセスを5つのフェーズに分けて紹介します。目指す姿を実現するために必要な方法の参考となるよう、それぞれのフェーズごとにグローバルのトレンドも含めて説明します。

  • Source:母集団を形成する

  • Engage:関わり合う

  • Hire:採用する

  • Onboarding:入社する

  • Analytics:分析する

Recruiting Process

採用プロセスの全体像

 

1.Source:母集団を形成する

採用活動において、会社にとって必要な人材・優秀な外部人材を顧客とみなし、顧客を効率的に集められるような採用手法及び媒体の選択を行い、積極的に候補者の母集団を形成していくことを「採用マーケティング」といい、会社の認知度向上、働きがいのアピール等を行う「採用ブランディング」と合わせて重要な取組となります。

母集団形成にあたっては、「ポスティング」と「ソーシング」という方法を組み合わせて効率よく進めていきます。ポスティングとは募集案件を採用媒体に掲載する(ポストする)ことであり、候補者の目に触れる状態にすることです。募集案件の掲載となると今までも当然実施していることと思いますが、採用チャネル・媒体が多様化してきたことにより、知名度の高い媒体に掲載していおけば自然に人が集まってくるということはなくなり、適切なチャネル・媒体を選択しなければ狙った候補者の目に届かなくなってきました。そのためどのような候補者をターゲットにするかを明確にした上で、ターゲット層の多くの候補者が活用している媒体を中心とした活動が必要となります。
また、グローバルで活躍できる人材を採用するために、海外での採用活動に力を入れ始めている会社も増えてきますが、日本企業にとって海外での採用活動は国内よりも難易度が高いです。国内よりも会社の知名度が低いこと、日本の雇用慣習のイメージから敬遠されるという要素もあるかもしれませんが、各国の主要媒体、チャネルのトレンドをよく知らないということも大きな原因の一つです。
日本には日本人を集めやすいチャネル、媒体があることと同様に、海外でも各国ごとにトレンドがありますので、その点を意識・理解した上で進めていくことが重要です。また、最近では候補者は採用関連サイトに行くことなく、探している職種・条件等を直接Web検索することにより、条件にあった会社の採用サイトを見に行くという動きもあり、そこに対応するには自社のキャリアサイトを魅力的にするだけでなく、Web検索で見つかりやすくなるSEO対策*も必要になっています。

*SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)

Google等のWeb検索サイトで関連するワードが検索された場合に、検索結果に自社サイトがより上位に表示されるような対策を行うこと。

 

ポスティングが募集案件を掲載して候補者を待つ「プル型」であるのに対して、ソーシングはより積極的に候補者にアプローチしていく「プッシュ型」の手法となります。日本でもLinkedInに代表されるようなビジネス特化型のSNSの利用者が増え、リクルータが個人レベルでアプローチすることが容易になってきました。その一方、ビジネス特化型SNSの活用が進んでいる国では同様のサービスが増えており、どのSNSで候補者を探すべきか迷うことも多くなり、日本でも同様の傾向が進んでくるでしょう。海外ではこのような状況への対応として複数サイトを一括検索し、候補者リストを作成してくれるサービスが活用されています。さらに、最近では機械学習により、自社にとって必要な人材、自社に合った人材の候補を推奨してくれる機能も登場しています。

 

2. Engage:関わり合う

ポスティング、ソーシング等の方法で形成した候補者の母集団は、募集会社に興味をもち自主的に応募してくれた方であったり、募集会社のリクルータから積極的に声をかけてつながりができた方であったりするなど、何かしら募集会社の求める人材像に近い人材の集団です。これらの集団を”今”募集している選考1回限りだけのものにしておくことはもったいありません。その時の要員計画や、募集ポジションによっては、採用したくてもできない場合があり、また、候補者側としても彼らの事情で”今”は会社を変わるタイミングではないという場合もあります。そこで母集団のエンゲージング、つまり、採用選考より広い範囲で関わり合うことで、自社により興味を持ち続けてもらう、または、より強い興味をもってもらうことが重要となります。

具体的には「タレントコミュニティ」というもので母集団管理を行い、会社側としては外部採用が必要となった場合の第一の候補者データソースとして、候補者側としては最新の募集案件情報を受け取れ、いつでも応募できる場所として活用していきます。タレントコミュニティをうまく活用している会社では、コミュニティを活性化させるために、自社採用サイトの最適化、モバイル対応、Eメールアラートのような機能面、及び、一括募集キャンペーン実施、各種情報発信等のブランディング活動の活動面での取組が進められています。

また、タレントコミュニティはこれから会社にくるかもしれない人たちだけでなく、会社を離れていく人たちのためにも活用できます。コンサルティングファームのようなプロフェッショナル人材が多い会社では、自身のキャリアアップのため等、”前向きに”会社を去る方が多いのですが、そのような方々のためのアルムナイ(卒業生)ネットワークという退職者のコミュニティをもっていることが多いです。このコミュニティを通じて、会社の卒業生(退職者)がどのような業界で何をしているかを知り、情報交換したり、協働したりできるようにしているのですが、採用のための主要なデータソースにもなります。”出戻り”と表現するとネガティブなイメージがありますが、実際会社のことを良く知っている卒業生は、出戻った後も立ち上がりが早く、さらに、外の会社で得た知見をもって帰ってきます。優秀な人材が多くいる会社を想像してみると、人材輩出会社でもあることが多いかと思いますが、優秀人材が退職してしまう時に、人材の流出ではなく、輩出すると考え、さらに、戻ってこれる環境を整えておくことも重要です。

女性の活躍という視点で、出産、子育て等で職場を離れてしまった方向けのタレントコミュニティをもっている会社もあります。日本には、子育てをする方のための育児休業、時短勤務等の法があり、また、ワークスタイルの改革や、男性が育児休業を取得するというケースも増えてきていますが、それでも出産、子育てを機に退職される女性は依然として多いです。このような方々も前述のアルムナイの例と同様に優秀な方であったり、会社のことを良く知っている等、会社にとっては貴重な人材です。また、タレントコミュニティはフルタイムの採用のためだけでなく、期間限定であったり、パートタイムの人材採用にも使えますので、コミュニティのメンバとWin Winな関係を築きやすい場所でもあります。

上記では候補者エンゲージンの場として、タレントコミュニティを紹介しましたが、実際に構築する際は、不採用者のデータ管理の承諾、コミュニティ脱退(データ削除)の権利、データ保持期間、個人情報の取り扱い等のルールづくりも合わせて検討する必要があります。

 

第2回では自社の採用を見直すポイントと、採用プロセス(Source:母集団を形成する, Engage:関わり合う)ついて紹介させていただきました。次回は続きの採用プロセス(Hire:採用する, Onboarding:入社する, Analytics:分析する)について紹介予定です。

 

ご質問はWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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