あるベンチャー企業の成長の軌跡からみる SaaS ビジネスの教訓


※本記事は Redpoint Ventures社のTomasz Tunguz氏の記事をご本人の承諾を得た上で、翻訳、掲載しています。原文は こちら よりご覧いただけます。


この米国ITベンチャー企業は設立当初、パッケージソフトウェア企業として事業を開始。フロッピーディスクやCD-ROMに保存された経費管理ソフトウェアを店舗で販売し、その後、ソフトウェアライセンスを営業が企業に販売するモデルとなりました。

同社は1998年に見事にIPOを果たすものの、2001年に経営危機を迎え、当時の時価総額がわずか8百万ドルにまで落ち込みました。

この経営危機を乗り切るべく、既存のビジネスモデルを完全にSaaSモデルへ切り替え、ウェブブラウザから誰もがアクセス可能なソフトウェアとして販売を開始、13年後の2014年に年間売上高は600百万ドル以上となり、SaaS業界で最大規模となる83億ドルでSAPへの事業売却にも成功しました。

IPOで資金調達、企業価値を向上させ最大規模の事業売却。このような成功例はSaaS業界でも唯一であり、それを実現した企業こそ、出張・経費管理クラウドを展開するConcur(コンカー)です。

SaaS自体の歴史はあまり長くありませんが、コンカーの成長の軌跡は、様々な点において際立っています。創業者たちは自社の事業にこだわり、固執し続けることで、今まで存在しなかった市場カテゴリー自体を定義できるほどにまで企業に成長させることに成功しました。また、コンカーはビジネストランスフォーメーションの過程でソフトウェアライセンス型とSaaSビジネスモデル型の2つのビジネスモデルを展開していたため、比較して分析することができます。

上のグラフでは、1995年〜2014年までのソフトウェア提供形態(CD-ROM、ライセンス、クラウド)に分け、コンカーの売上高を表現しています。

まず、営業がソフトウェアライセンスを企業に販売するモデルに切り替えました。この結果、約2百万ドルを売上げ、2001年にSaaSモデルで販売以前の5年間でも、約41百万ドルの売上を記録しています。その後、2005年にクラウドへの完全移行、2014年には7億ドル以上の売上高を達成しました。

コンカーの総利益率は、クラウド時代の終盤に最も高くなりました。

提供形態がCD-ROMの時代では、ディスクにソフトウェアを書き込む費用、梱包、出荷、箱の仕入れ、および小売店への販売手数料の支払いなどで総利益は40%以下となっていました。

営業が企業に販売するモデルに転換することで、粗利益率を60%以上に向上しました。このモデルでは、プロフェッショナルサービス(トレーニングおよびカスタマイズ)が、ビジネスの売上原価の大部分を占めていました。

そして、提供形態を現在のようなクラウド型にすることで、規模の経済が働くこととなり、2010年のコンカーの総粗利益率は約72%を達成しました。

次に収益性に注目してみましょう。コンカーはビジネスモデルをSaaSに移行させることで、売上に対する収益の割合が-100%を下回る事業を、純利益を稼ぎ出す事業に転換させることに成功しました。

また、ほぼ同時に事業のキャッシュフローはブレイクイーブンとなり、純利益をも生み出した事は、決して偉業ではなく、コンカーのビジネスモデルの強さと経営陣の規律を示すものです。

コンカーの創業者でCEOのスティーブ・シン氏は、同社の歴史についてこう語っています。

私たちのツールはキャッシュフローを潤沢に生み出すものではありませんでした。企業の規則・ルール・ガバナンスを守らせるツールでした。しかし、、、私たちはお客様の利益を生み出すものにしたかった。この弱点を補完、強化できれば私たちはビジネスで勝てると思いました。

1つの主要なビジネスモデルで進化し、生き残る企業はごくわずかです。設立当初から創業者がビジネスを牽引し、驚異的な財務パフォーマンスを実現した、コンカーの繁栄はこの2点を両立した極めて例外的なケースです。

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