記録する決算システムから経営管理を支える基盤へ!  グローバルの最新事例に学ぶSAP S/4HANAによる会計業務の高度化アプローチ


2017年5月16日(火)から 5月18日(木)の3日間、米国フロリダ州オーランドにて、SAP最大の年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW」が開催され、今年も多くのソリューションやお客様の先進的な事例が発表されました。
毎年多くのお客様にご講演頂くのですが、今年は例年以上に、日本でも有名なグローバル企業様(下記)が登壇され、SAP S/4HANA(以降S/4HANAと記載)の価値を共有頂きました。事例ロゴ講演頂いた企業様の資料やリプレイ動画は、こちらになります。 (英語サイト)http://events.sap.com/sapandasug/en/home

今回は、SAPPHIREの熱が冷めぬうちに、その中で紹介された2つの事例、電力会社のENEL(イタリア)社と我々日本人にも青果物で馴染み深いDole(米国)社をご紹介したいと思います。両社ともに、SAPの旧ERPを活用頂いてきた経緯をお持ちで、従来の経営課題に対し、ERP活用で一定の成果を得て来たものの、市場の変化や自社の事業規模拡大などにより、新たなビジネス課題をお持ちでした。そのビジネス課題に対してS/4HANAを適用し、大きな成果を挙げられています。これら事例からの学びは、特に現在SAPの旧ERP->SAP Business suite(SAP ERP)以前をご利用頂いているお客様はもとより、新規もしくは既にS/4HANAを活用頂いているお客様にも有益な内容となっています。

ENEL: 複雑なランドスケープ環境(法人ごとのERPなど)を打破 セントラルファイナンスを活用し、月次決算を16営業日から5営業日に早期化

ENEL社は、イタリアに本社を置く大手の電力・エネルギー会社です。元々は、1962年に複数の電力会社から合同で設立された国営企業でしたが、1990年代に始まった欧州諸国の電力自由化の動きにより民営化、さらに競争を促進するための措置により、持ち株会社形態の下、事業部門ごとに解体されました。その後、各国の電力会社を買収、多国籍化を進め、今や5大陸30か国以上で事業を展開し、世界屈指の大手エネルギー企業に成長されています。

<ENEL社の現状と目指す姿>
この歴史の一端を見るだけでも、組織やシステムがかなり複雑なランドスケープになっていることが容易に想像出来ると思いますが、それを定量的に理解するための具体的な数値が示されております。下記の通りです。

・ERPシステムとそのバージョン数: SAP ERP 19インスタンス / 5バージョン
・連結対象企業数と国: 484社 / 23か国
・伝票数と伝票明細数: 7,500万件 / 9億5,000万件

これらの数値が示す「複雑性」こそが、ENEL社の持つビジネス課題の根幹にあり、事業規模が拡大していく中、早期に自社の経営状態を把握し、迅速な対策を取る仕組みづくりが急務となっていました。そこで、新しく着任されたCFOの立ち上げたプロジェクトが、下記チャートで示された「Fast Closing 2.0」です。ENEL_AsIsToBe解説しますと、「Fast Closing 2.0」プロジェクトのターゲットは、言うまでもなく、データの正確性を担保しながら月次決算の早期化を図ることです。その実現のため、従来は、子会社で一旦孫会社を連結(サブ連結)した後、親会社がその子会社を連結するという2段階での連結プロセスを踏んでいたものを、フラットな連結プロセスに変えられています。さらに、グループ会社毎に異なる会計の締めを待つのではなく、着地見込データの活用、多くの煩雑なマニュアル作業をシステムにより自動化、各タスクの優先順位含めた業務ルールの体系化といった、抜本的な業務改革を実施されたことが示されています。

<ソリューション>
この業務改革を支えるためのソリューションとして、下記チャートにある、S/4HANAの「セントラルファイナンスを活用したアプローチ」を実行されたのですが、プロジェクトの1stフェーズは、何と5か月という短期間で稼働に至ったとのことです。なぜ、そんなことが出来たのでしょうか。ENEL_ソリューションその答えとして、ここでセントラルファイナンスの基本コンセプトについて改めてご紹介しておきたいと思います。セントラルファイナンスは、グループ各社が保持する会計システム(SAP & Non-SAP)から会計伝票を明細レベルでリアルタイムに収集し、グループの統合GLとして総勘定元帳を管理する仕組みです。要は、既存のERP資産を最大限に活かしつつ、S/4HANA上で蓄積される各種会計明細を利活用し、ビジネス価値を最短距離で享受出来る仕組み、ということです。
このプロジェクトでは、既存のSAP ERP 19インスタンスはそのまま、それをデータソースとして会計伝票をリアルタイムに収集・統合し、既存の連結会計システムへ連携する基盤として位置づけることで、従来はマニュアルで行われていた連結データ収集・統合作業を自動化し、連結プロセスのフラット化を実現されています。

また、上記ソリューション概要図のチャートで示されている内容を補足します。
・SAP Financial Closing Cockpit(FCC)の活用(チャート内①)により、各グループ会社の月次決算作業状況を確認し、どこのグループ会社の決算が遅いのかを判断できるようにしました
・見込みや予定(仮)データをグループ会社から入力してもらい、着地の精度を上げることに成功しています(チャート内③)
・こうして収集・統合されたGLデータは、SAP Intercompany(チャート内②)機能を利用し、月末を待たずに照合作業が進められるようになり、作業期間のさらなる短縮化に寄与しています

このセントラルファイナンスを基盤とした実現ポイントのまとめになりますが、上述の業務改革を伴うアプローチにより、これまで16営業日要していた月次決算のプロセスを5営業日まで、大幅に早期化することに成功されています。

<まとめ:ENEL社におけるセントラルファイナンスを基盤とした月次決算早期化実現ポイント>

・業務プロセスのシンプル化(サブ連結からフラット連結へ)
・照合作業の前倒し
・着地見込データの活用
・連結データ収集・統合の自動化
・月次決算16営業日->5営業日

 

Dole: 営業の評価を量から質へ S/4 HANAの活用による会計イノベーションが起こす営業改革

Dole社は、米国に本社を置く、言わずと知れた青果物の生産・販売・加工を世界規模で手掛ける会社です。1851年に創業したDoleは、現在、北米、南米、アジア、ヨーロッパなど世界90ヶ国以上で事業を展開されており、特にバナナとパイナップルの販売量では世界最大規模を誇ります。日本市場における事業展開においては、伊藤忠商事グループにより同社のアジア事業の買収を経ており、我々日本人には、より馴染みが深いブランドと言っても良いのではないでしょうか。

<Dole社の現状の課題>
さて、本題となる今回の事例についてですが、純粋に会計業務の改革に留まらず、会計視点から営業の評価の仕組みを改革したという点が、他の事例と異なり我々が学ぶべきポイントになっています。では、Dole社が示した、下記、ターゲットとされた業務課題について考察していきます。Dole_課題チャートの中で旧SAP ERPベースの運用において示されている業務課題は、大きく下記2点です。
1点目は、従来、債権債務データと総勘定元帳データが分かれていたため、相手先別債権債務レポートと勘定(債権債務)別レポートは、別々に作成し、お互いを照合する必要があり、その作業に多大なワークロードが多く発生していたこと。
2点目は、各種マネジメントレポートの作成において、SAP BWへのデータ転送のために、都度、3時間ものバッチ処理が必要だったため、それを深夜時間帯に実行する運用をせざるを得なかったことです。これにより、日中のレポートは、1日タイムラグがあり、かつ現場には分かり易い販売数量などの量的データに基づいて価格や在庫数量計画の見直しなどの業務推進をしているのが実態で、本来あるべき、「本当に儲かっているのか?」という会計視点を持ってタイムリーなPDCAサイクルを回すことが出来ていませんでした。
Dole社は、鮮度が命である青果物を扱われている特性上、各種マネジメントレポートのデータに1日タイムラグがある状態で意思決定をしていることが、大きな機会損失などに繋がっていたものと考えられます。

<ソリューション>
このような業務課題をターゲットに、S/4HANAによるソリューションを適用されました。
結果、1点目の照合作業のワークロードの課題について、S/4HANAでは債権債務データと総勘定元帳データが統合(Universal Journal)されたため、例えば、勘定別レポートから相手先別にドリルダウンして その内訳が確認できるようになったことで照合作業の大幅な削減が可能になりました。また、2点目の各種マネジメントレポートにおける課題についても、必要な情報をいつでも可視化出来るようになりました。これは、基幹系と情報系が統合されたS/4HANAのアーキテクチャ革新によって、従来のSAP ERPからBWへのデータ転送が不要になり、各種マネジメントレポートが、日中含め、いつでも必要な情報の取得が可能になったためです。これにより、本来あるべき必要な会計視点でのデータを見ながらタイムリーにPDCAサイクルを回せる仕組みが整いました。

<営業の評価方法を改革>
Dole社の事例は、これだけでは終わりません。必要な会計データがリアルタイムに活用出来るようになったことで、さらに、並行して推進していた販売促進活動を支援するシステムの刷新との併用により、顧客別の各種プロモーションのマーケティングROI、ひいては顧客別の粗利益を可視化することが可能になりました。この可視化によって、これまでの営業の評価を、量(ケースの販売個数)ではなく、質(顧客別の利益)で管理するという方法に切り替え、下記チャートで示されているように、会社の財務目標と整合した仕組みに革新することに成功されています。Dole_営業改革

最後になりますが、今回のブログでは、2つの事例をご紹介させて頂きましたが、如何でしたでしょうか?いずれの事例も従来は、「単純に経理計数を記録、管理する会計システムであったのに対し、S/4HANAを経営管理の基盤として活用」、自社の課題にアプローチされ、高い成果を挙げられています。今後、グローバルと同様に、国内でも基幹システムの刷新・検討においては、S/4HANAをどのように経理管理の基盤として活用するのかが、より重要な論点になるものと確信しており、そういった観点で継続して皆さまに情報発信して参りたいと思います。

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