SAP Master Data Governance(SAP MDG)で実現する業務部門主導のマスタデータ管理戦略


マスタデータ管理は、特にグローバルに事業を展開している、あるいは複数の事業部門を抱える企業において、長期的な課題のひとつではないでしょうか?マスタ管理のための組織、標準プロセス、管理基盤は確立されているでしょうか?確立されていないとしたら、様々な部門の業務において業務効率が低下している、あるいは、企業全体で統合された情報分析が出来ない、各種レポート作成に多くの手間と時間がかかっているといった課題が発生しているのではないでしょうか?

本ブログでは、このようなマスタデータに関する課題への回答として開発されてきたSAPのマスタデータ管理ソリューションSAP Master Data Governance(以下、SAP MDGとする)が志向する管理モデル、取り組み方法の推奨案、ビジネス価値、概要、SAP S/4HANAとの関連性を示します。皆様の企業におけるマスタデータ管理の検討の参考になれば幸いです。

目次:

  • 企業の発展とマスタデータ管理モデルの進化
  • マスタデータ管理への取り組み
  • SAP MDGのビジネス価値
  • SAP MDGとSAP S/4HANA
  • まとめと追加情報

企業の発展とマスタデータ管理モデルの進化

企業の発展と共にマスタデータに関するニーズ、ソリューションも進化していきます。

フェーズ 1: 小規模かつ単一事業を展開している企業においては、マスタデータの登録、変更などの管理プロセスはシンプルな日々の業務の延長であり、データにコンフリクトがあったとしても(例えば、製品名称の表記に対して販売部門と生産部門とではニーズが異なる)解消は容易です。

フェーズ 2: 事業が複数になるあるいはグローバルに展開していくと、それぞれにERPシステムが導入され、マスタデータは分散管理され、グローバルではマスタデータは整合しない状況になります。

フェーズ 3: このような状況を解決するためにIT主導での集中管理のコンセプトが導入されます。本社IT部門がマスタデータの管理の役割と責任を引き受けます。マスタデータの登録を本社で集中的に行い、そこから各ERPに配信する集中管理の形態を目指します。プロセスはマニュアル(例えば、Excelの一定の書式にデータを入力しメールで送付)あるいはシステム的に連携されます。このフェーズでは、マスタデータ管理主体(オーナーシップ)はITに移行し業務部門の手からは離れます。ビジネススピードは損なわれる傾向になります。

フェーズ 4: SAP MDGが本質的に志向するマスタデータ管理モデルです。フェーズ3からの進化として、あるいはフェーズ2からの移行先として、業務部門主導での集中管理型のマスタデータ管理モデルがあります。マスタデータ管理主体は業務部門です。マスタデータ管理のプロセスは標準化され、また、日々の業務の拡張としてマスタデータ管理プロセスが定義されています。ビジネススピードとガバナンスはマスタデータ管理基盤によって実現されます。

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マスタデータ管理への取り組み

長期的構想の策定(Think Big)

長期ビジョン無しでは、行き当たりばったりのプロジェクトを繰り返すことになります。あるべき姿(ビジョン)を描き、現状とその間のGAPを埋めるための転換プログラムを企画します。通常、マスタデータ管理のための転換プログラムには、戦略、組織、ガバナンス、プロセス、データ品質、テクノロジーといった要素が含まれています。

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業務部門と連携した戦略的プロジェクト(Act Small)

最初のステップを小さく始めることは、様々な成功事例からも言える原則です。戦略的にビジネス上の優先順位に従い、業務部門とITが協力して第一段階のイニシアティブを構想します。例えば、本社の製品企画、生産の部門と連携して製品マスタをターゲットとしたり、あるいは、経理、購買部門と連携してビジネスパートナーをターゲットとします。

最初のプロジェクトは限定的なスコープで開始します。例えば、業務部門とITが共同で、複数部門をまたがる製品マスタ管理(あるいはビジネスパートナー)の管理プロセスをSAP MDGを使って実現します。これにより、マスタデータをグローバルで統合し標準化するための技術的基盤とフレームワークが整います。

次に、これを拡張あるいは展開していきます。例えば、グローバルのすべてのERPシステム、あるいはグローバルデータウェアハウスに管理範囲を拡大します。拠点(ローカルのERPシステム)で管理されていた製品マスタ(あるいはビジネスパートナー)があればそれをグローバルマスタ管理に移行します。グローバルに展開する際は、マスタデータの属性を、SAP MDGを使って集中管理すべきグローバル共通の属性項目と、配信先のローカルで管理すべき属性項目とに分類することが重要です。

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SAP MDGのビジネス価値

マスタデータ管理で得られるビジネス価値は、IT部門のみならず、様々な業務部門にわたって存在します。下図は、SAP MDGの導入事例から、お客様が得られた価値をいくつかのグループに分類したものです。多くのケースで単一バージョンのマスタデータの確立が最終的な目標として掲げられています。また、典型的なメリットであるマスタデータのメンテナンスコスト削減とレポートと分析の改善以外にも様々なメリットがあります。

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SAP MDGとは

SAP MDGを使って、マスタデータの集中管理型の登録、変更、検索、および配信(SAP MDG、集中管理シナリオ)と、様々なソースからのマスタデータの統合(SAP MDG、統合シナリオ)を実現できます。SAP MDGは、SAPおよびSAP以外のアプリケーションが混在する企業のランドスケープ全体に対して、設定だけですぐに利用可能なアプリケーションです。

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SAP MDGは、SAP ERPあるいはSAP S/4HANAの追加コンポーネントとして提供されており、その中に、会計、品目(製品)、ビジネスパートナー(得意先、仕入先)、その他のカスタムオブジェクト(任意のマスタデータ)の集中管理と統合のための、データモデル、ユーザーインタフェース、ワークフロー、ステージング(有効なマスタデータとは別の仮領域)、チェック、配信、統合などのアプリケーション機能が含まれています。

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SAP MDGの技術的な導入形態としては、ひとつのSAP S/4HANAシステムを業務アプリケーションとして利用すると共にマスタ管理基盤としても利用することも可能ですし、業務アプリケーションとしてのSAP S/4HANAとは別にマスタ管理専用のシステムを構築することも可能です。企業のシステムランドスケープに応じて選択可能です。

SAP MDGとSAP S/4HANA

もし、マスタデータ管理への取り組みと、SAP S/4HANAの新規導入あるいは既存のSAP ERPからの移行を検討されているのであれば、以下の理由から、SAP S/4HANAと同時のSAP MDGの導入を推奨します。

  • マスタデータをグローバルで統合し標準化するための技術的基盤とフレームワークが整います(前述の「業務部門と連携した戦略的プロジェクト(Act Small)」の章を参照ください)。
  • S/4HANAの新規導入、移行のいずれの場合でも、主要なマスタデータは見直しされ、一定以上の品質になっています。SAP MDGは、この品質を将来にわたって、維持、あるいはさらに向上していくことに役立ちます。
  • SAP MDGは、本稼働準備としての旧システムから新SAP S/4HANAへのデータ移行において、あるいは並行稼働段階においての稼働システムからSAP S/4HANAへのマスタデータ転送においても利用できます。
  • SAP MDGのFioriアプリによるマスタデータの登録や承認は、SAP S/4HANAのフロントエンドであるFiori launchpadに統合され、日々の業務の拡張として利用できます。

まとめと追加情報

SAPのマスタデータ管理ソリューションSAP Master Data Governanceは、企業のマスタデータの集中管理と統合を可能にするアプリケーションです。ひとつのSAP ERPあるいはS/4HANAにおけるマスタデータ登録、変更、参照のためのステージングとワークフロー機能としてシンプルに利用することも、複数ERPを横断するグローバルでのマスタデータ管理を実現するための共通基盤として活用することも可能です。SAP MDGを使ったマスタデータ管理への取り組みをご検討ください。

SAP MDGに関するお役立ちサイト

SAP Master Data Governance に関する各種ヘルプのエントリーポイント

SAP Master Data Governance とは何かを理解するための製品紹介サイト

SAP Master Data Governance に関する技術者のコミュニティサイトとWiki

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