データマイニングを進化させる機械学習の台頭 日本のAIビジネスの進化を阻むものの正体は?
作成者:SAP編集部 投稿日:2017年7月28日
データを分析することによって新たな知見を得る「データマイニング」は、近年進化が著しいAIと融合することによって、新たなビジネスを生み出しています。今回は日本におけるAIの現状を踏まえたうえで、AI × データマイニングのビジネス事例をご紹介します。
豊富な学習データと知識不足のギャップで苦戦する日本のAIビジネス
2017年4月、調査会社MM総研は日本、アメリカ、ドイツの企業を対象にAIに関するアンケートを実施した結果をまとめた報告書「人工知能技術のビジネス活用概況」を発表しました。同報告書では、まずAIの業務への導入状況に関して質問したところ、「導入済」という答えがアメリカでは13.3%、ドイツでは4.9%だったのに対し、日本は1.8%で最下位でした。
また、AI導入を決定する権限を有するマネジメント層に対して、AIに関する知識に精通しているかたずねたところ、「精通している」と答えた割合がアメリカ49.8%、ドイツ30.9%だったのに対し、日本は7.7%にとどまりました。
ただし、人工知能提供企業にAIの「強み」を聞いたところ、日本は「良質な学習データを保有」という答えが16.9%となり、ほかの国より高い割合となっています。
以上の調査報告から、日本は優れた学習データの保有というAI導入の下地があるにもかかわらず、マネジメント層の知識不足からAI導入が他国に比べて遅れているのではないか、という現状を推測することができます。
AIに関する用語整理
ここ数年でAIに関する話題は、一般的なニュースでも非常によく耳にするようになりました。しかし、実際には先の調査結果が示すように、多くのビジネスパーソンにおけるAIの理解度はまだまだ十分とはいえません。そこで、AIに関してよく使われる専門用語を整理しましょう。
特化型AIと汎用型AI
AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、ヒトの知的活動を模倣したコンピュータプログラムと定義できます。現在のAIは、ヒトの知的活動のうち特定のタスクのみを模倣するにとどまっています。こうしたAIは「特化型AI」と呼ばれます。これに対して、ヒトの知的活動のすべてを模倣するAIは「汎用型AI」といいます。最近よく聞く「シンギュラリティ問題」で言及されるAIは、汎用型AIを意味しています。汎用型AIは、現時点ではそのプロトタイプも実現していません。
機械学習とディープラーニング
特化型AIは、特定のタスクに関するデータを学習することで、驚異的な能力を発揮します。その学習方法には「機械学習」と「ディープラーニング」があります。
機械学習とは、大量の学習データから特定のパターンを抽出し、その抽出されたパターンを再利用して精度の高いパターン認識を実行するアルゴリズムを意味します。つまり、コンピュータは人が作ったアルゴリズムを実行するのではなく、コンピュータ自身が学習を通じてアルゴリズムを改善していくのです。
ディープラーニングは、最近になって実用化された機械学習の一種といえるでしょう。ディープラーニングでは、パターン抽出をヒトの脳の仕組みを模倣して実行します。「ディープ」という形容詞は、人工的な神経細胞を、ヒトの脳のように半球形に配置するのではなく、何層にも積み重ねて「深い」処理を行うことからつけられました。
機械学習をデータマイニングに活用したビジネス事例
大量のデータから学習するAIは、同じく大量のデータから新たな知見を得るデータマイニングと非常に相性がよいのは明らかでしょう。以下では、そんな機械学習するAIを用いたデータマイニング・ビジネスを紹介します。
SAP Service Ticketingは、企業のサポートセンターに蓄積されたQ&Aから機械学習して、新たな問い合わせに対して最適な回答を自動応答するサービスです。この機械学習は自然言語を理解できるので、既存のデータ入力方法を変更せずに導入が可能。同サービスを活用すれば、回答するまでの時間短縮と回答の品質改善が期待できます。
以上のように、今日の企業活動はあらゆる局面で大量のデータが発生するので、AIを導入することで改善される余地が大いにあります。AIを導入することにより、企業においては業務改善に大きな成果が見込まれます。多くの企業が直面する人材不足という課題を解消するための第一歩として、まずはAIをよく知ることから始めてみてはいかがでしょうか。SAPでは企業のAI化を「SAP Leonardo」テクノロジーによってサポートいたします。