業務プロセスと連携するSAPのAI(Deep Learning、GPU) -SAP Leonardo Machine Learningとは-

作成者:羽石 哲也 投稿日:2017年8月29日

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◆SAPにおける機械学習の現在

世界を見渡すとドイツ医療の世界では、患者の病歴や投薬の履歴からこれから起こりうる疾患の予測と適切な予防処置を弊社の機械学習製品であるSAP Predictive Analyticsを活用してサービス提供を実現しています。

ドイツ最大の健康保険組合であるAOK社では、被保険者2400万人の過去の診療、投薬履歴を機械学習で解析することにより、個々人に合わせた予防的ケアが可能になりました。また、同社は7.7億件にのぼる年間の診察/投薬の保険請求、年間6.3兆円にものぼる保険金支払いを行っています。

健康を保ち、医療費を抑えつつ、保険組合財政の健全性も維持する、一石三鳥を狙っているというわけです。機械学習というテクノロジーの進化によって、医療の高度化と今まで医師がケアしきれていなかった領域まで小さなお医者さんが存在することになります。

また、小売業の世界ではDeep Lerningによって画像解析を行うことにより在庫量を把握するということができるようになっています(以下添付写真は画像解析を通じて在庫管理を行なっているプロジェクトの一例です。)。画像を解析により在庫量を把握し、ERPシステムと連携し、在庫の発注を行うということも可能になります。

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SAPでは、企業で必須の基幹業務内の構造化されたデータに加えて、Deep LearningやGPUなどを活用した画像、動画、テキスト解析をするための仕組みを提供することにより、それらと業務プロセスを繋ぐということを戦略的に行なっており、ここにSAPが機械学習を通じてお客様に貢献できる大きな意義があります。
SAPでは機械学習を行う仕組み(データ加工、モデル作成、モデルの運用/管理etc)をいくつもご提供しており、国内/国外合わせて数千社以上のお客様にご採用いただいています。本ブログではSAPがもつ機械学習を行う仕組みの中でもSAP Leonardo Machine Learning Foundationという仕組みをメインにご紹介します。

 

◆SAP Leonardoとは?

2017年の年次カンファレンスSAPPHIRE NOW 2017では、IoTに加えて機械学習、ビッグデータ、アナリティクス、ブロックチェーンの領域とデザインシンキング等のサービスを含むSAP Leonardoを正式発表しました。本ブログではSAP Leonardoの主要領域である機械学習(下記写真のハイライト部分)のポートフォリオであるSAP Leonardo Machine Learning Foundationの機能について具体例を上げながら全体感をご理解いただくための説明したいと思います。Screen Shot 2017-08-14 at 2.57.48 PM

◆SAP Leonardo Machine Learning Foundationとは?

SAP Leonardo Machine Learning Foundationには大きく分けて以下3つのカテゴリから構成されています。

Screen Shot 2017-08-14 at 5.50.15 PM

1.Business services…機械学習を組み込んだアプリケーション
現在10弱のアプリケーションがこのカテゴリに含まれていますが、一部の概要を記載します。今後アプリケーションの種類が増加する予定です。
•SAP Brand Impact
主にスポーツのテレビ中継で広告主が出している広告であるロゴがどれだけテレビ中継に映っているか、動画解析を行うアプリケーションです。
スポーツのテレビ中継の際に広告がテレビに映っている時間を把握することにプラスしてROIの計算も同時に行うことができます。
これにより、広告枠を買う際、テレビ広告を出すことによって測ることのできなかったROIがどれだけ出ているのかということが把握できます。
それに対して広告枠をを売る際、広告枠の価格決めることもできます。Screen Shot 2017-08-14 at 5.42.00 PM
•SAP Resume Matching
企業の人材採用活動において、適切な候補者を探し出すために非常に時間がかかるかと思います。
SAP Resume Matichingでは履歴書をアプリケーションに読み込ませると、経験、スキル、キャリアなどを考慮して、適切な候補者を洗い出してくれます。ResumeMatching
•SAP Service Ticketing…サービスチケットを適切なカテゴリー内で自動的にタグ付け
•SAP Customer Retention…顧客離反の分析や把握、利用継続のための施策を実施が可能
•SAP Cash Application…入金消込のマッチング率をログとして一覧表示が可能
•SAP CoPilot…SAP S4/HANA活用のユーザをサポートするデジタルアシスタント

•SAP Fraud Management…不正検知アプリケーション。リアルタイムに異常な取引を検出し分析が可能

 2.Functional services…動画/画像解析、レコメンデーションなどを含むAPIと画像データ機械学習で解析するためのGPU環境の提供
言語解析、画像解析などを用いたAPIが現時点で11種類用意されています。
一例としてImage Classification APIについてご紹介します。上記リンクをクリックしていただくと以下画面が表示されます。
こちらに現在Alpha版も含めて現時点で11のAPIが公開されています(今後拡張予定)のでImage Classification APIをクリックします。
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/inference_syncを押ししたするとAPIに関する説明が表示されます。
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files右のChoose Fileを選択いただくと、ファイルを選択する画面が表示されますので、ビンの写真を選択します。今回ビンが上から撮影された少しわかりにくい写真を選択しています。(※こちらの機能を試していただくにはログインが必要になります。)Screen Shot 2017-08-21 at 5.38.26 PM結果が以下に表示されました。
“pop bottle”が一番確率が高く、その次に”wine bottle”、”beer bottle”の確率が高いと表示されています。
こちらのAPIではpre trainingということで、写真をあらかじめ学習させており、事前に学習させた写真から推測して、今回読み込ませたビンの写真が何であるか確率を算出していますのでAPIを使用される方は、あらかじめ学習が行われている状況のモデルをAPIとして活用することができます。

“Label”には読み込ませた写真が何であるか。”score”にはその写真がどれくらいの確率か算出されています。F5EC73BB-BA2B-4B65-914F-5DE0C3111B64

3.Lifecycle management…機械学習のモデル作成/管理するのためのインフラ。近日リリース予定です。

◆まとめ

ご覧いただきましたように、SAP Leonardo Machine Learning Foundationは大きく分けると①アプリケーションレイヤであるBusiness services、②Deep LearningやGPUが活用可能なAPIレイヤであるFunctional services、③機械学習のモデル作成/管理するのためのインフラであるLifecycle management(③のみ今後リリース予定)の分かれています。
今までと同様システムを使っていたらいつのまにか機械学習の機能を使っているという状態が現実になりつつあります。また、冒頭の機械学習による患者の解析から、小売業における在庫量の把握を行う事例までお客様とSAP Leonardo Machine Learning Foundationを活用した新たな領域へ向けたプロジェクトを進めています。
SAP Leonardo Machine Learning Foundationを活用することで、各業務部門のユーザの方にお使いいただくとともに、APIを活用したカスタムアプリケーション開発が可能です。現在日本のお客様もこうした新たな領域の取り組みを実施している状況です。

 

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