シンプルに入力し、シンプルに可視化する。SAP S/4HANAはなぜ現場に有用なのか?
作成者:鈴木 章二 投稿日:2017年9月27日
業務処理情報を一元化し意思決定に活用するというERP(統合基幹業務システム=Enterprise Resource Planning)の目的は、時代が変われど不変です。
一方で今後大きく変わるのは、その一元化された情報は、『誰が使うべきか』という点です。事業責任者や経営役員だけで十分でしょうか?
人口減少社会への適応が求められるタイミングは迫っています。これまでのような実行と意思決定の役割分担や垣根はほとんどなくなり、業務は増えど時間は増えない状況は容易に予想できます。本当にERPを使い倒して頂きたいのは、経営層だけでなく、現場の全てのユーザーなのです。
複雑・難解と思われてきたERPを、現場のユーザーに使い倒して頂く為にSAPがSAP S/4HANA(以降、S/4HANA)に織り込んだ特徴を紹介します。
ERPが保持する情報をエンドユーザーが自分で直接取り出せる工夫
昔ばなしをしましょう。ERPの保持するデータをエンドユーザーが取り出したい場合、そのレポートは時間をかけて開発される必要がありました。仮にレポートが揃っているといってもそれは取り出したいアウトプット単位でのレポートであり、例えば損益を把握したいなどという話になれば、沢山の単発レポートをそれぞれ取り出し2次加工する必要がありました。
情報システム部門への開発リクエストに載せても目的を十分に果たすレポートが提供されるまでには時間がかかり、その頃には既にレポートの切り口がニーズに合わないなんて状況もあったかと思います。
じゃあやはりデータウェアハウスに全部移してから別のツールで開発すれば良いのでしょうか?
SAPはS/4HANAへのEmbedded Analytics機能を組み入れることで、データ鮮度を落とさずにユーザーの欲しい情報を抽出することを可能にしています。その一例を紹介しましょう。
多次元の都度(オンザフライ)集計レポートって何だ?
S/4HANAのEmbedded Analytics機能の一つに、Multi-dimensional Reportがあります。
要はエクセルでいうピボットテーブルのようにユーザーが見たい切り口を自分で切替え、都度SAP HANA(以降、HANA)データベース内のERPデータをリアルタイム集計するレポートです。
予定や目標への進度実績を把握したり、実績を多角的に分解したりと、行と列を様々切り替える都度リアルタイムにHANAデータベースで高速集計が行われ表示されます。
当然S/4HANAのデータを直接抽出しているわけですから、複数のレポートシステムやメニューに都度アクセスし複雑な加工処理を繰り返す必要もありません。
シンプルだと思いませんか?
オンラインであるため数値の元になる原始伝票までジャンプできることは言うまでもなく、視認性の点で2次加工の為にエクスポートすることもできます。
この多次元レポーティングの特徴は、切り口の幅広さにあり! なぜそうできるの?
ユーザーにとって、レポートを実行する際に欲しいアウトプット情報は毎回1つだけとは限りません。既述の多次元レポートを実行するとしても、例えば売上を見れば利益が見たくなり、コストが見たくなり、要素を予実で比較したくなり、顧客や製品に分解したくなるものです。
ERPであるが故に実現できる訳ですが、他方、切り口を様々な切替ニーズに対応できるように揃えておくというのはすごく大変な下準備作業なのでは?と想像される情報システムの方も多いでしょう。。。
そうじゃないんです。
実はS/4HANAでこういった多次元アドホックレポートがシンプルに実行できるのは、S/4HANA自体のデータモデルをシンプルにしたことが大きく貢献しています。
例えば、統合仕訳帳という会計データを保持する新しいテーブルを見てみましょう。
この統合元帳というテーブルは、技術名をACDOCAと言い、「アクドックエー」もしくはドイツ語では「アクドックアー」と言います。
SAPの世界ではこれまで、FI(財務会計)とCO(管理会計)の2大モジュールがそれぞれの伝票体系を保持して処理する仕組みであったため、BS情報とPL情報を横断したレポートの仕組みを構築するには多大な開発工数をかけるか、それぞれのモジュールから何本ものレポートを抽出してユーザーが二次加工する必要がありました。
S/4HANAでは、GL(財務GL)と勘定ベースの収益(Profit Analysis)、管理会計明細、固定資産、製品原価の情報がこのACDOCAテーブルからだけで抽出することができます。
要は、カネに関してはこのテーブルだけで様々な切り口の情報を即座に取り出すことができる訳です。業務ユーザーとしてこれまでは切り口のリクエストはできてもSAPのERPのデータベーステーブルそれぞれの技術名や項目名がわからず、クエリを作成する技術も難しい為非常に煩雑なレポート作成を行っていたかと思います。
それがこの新しい統合仕訳帳が保持するデータ項目名を既述のようなMulti-dimensional Reportに表示させ、切り口を変えるだけで、難しい技術知識なくタイムリーに情報をレポートすることができるわけです。
業務レポートを抽出すると必ず脳裏に浮かぶ「ということは・・」や「ちなみに・・・」といった関連や付帯情報を把握したいニーズを消すことなく幅広い切り口選択肢から連続的に可視化を進めることができるのは、データを保持する(つまり入力する)仕掛け自体もシンプルに見直されているS/4HANAだからなのです。
今回はS/4HANAの特徴を、ユーザーが実行するレポートを例にご紹介しました。
シンプルに入力、出力を行うことができるERPは、経営層だけがメリットを享受するだけでは不十分です。限られた業務時間内で考えながら仕事をする、エンドユーザー自身がマネジメントする為に使い倒して初めて真価を発揮するとSAPは考えます。
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