意外と知らないAI(人工知能)進化の歴史 – 過去にもブームがあった!?


昨今いろいろなところで耳にするAIですが、決して最近になって突然発明されたものではありません。AIとは何かをより深く知るために、コンピュータ黎明期の1950年代から続く開発史や最新の取り組み、さらにAI時代に必要な人間の思考法についてもご紹介します。

AI開発史を振り返る ― エキスパートシステムからディープラーニングまで

人工知能(artificial intelligence)という言葉が初めて使われたのは、今から半世紀以上前の1956年、ダートマス会議のことだといわれています。つまり、コンピュータの黎明期から、人間の思考や知的機能を持った人工的なシステムは研究されてきたのです。この1950~60年代の研究は「第1次人工知能ブーム」と呼ばれており、チェスや迷路など決められたルールの中で最短・最適の解を探索するシステムが生み出されました。しかし、企業や社会が求める「実用」には遠かったこともあり、いったん研究は冬の時代に入ります。
次の「第2次ブーム」はそれから10数年を経た1980年代に起こりました。この時期の研究の中心は「エキスパートシステム」と呼ばれる、さまざまなデータを定式化しそれらを組み合わせた推論から解を導き出すシステムです。「もし〜ならば〇〇だ」といった形で、専門家が問題を解決する際の思考プロセスを模しているため実用化への期待が高まりましたが、結局人間が持つ知識はあまりにも膨大でインプットしきれないという壁を打ち破れず、このブームも下火になっていきました。

そして、2010年ごろから盛り上がってきた現在の「第3次ブーム」は、「ディープラーニング」によって引き起こされています。これは人間があらかじめ定義を与えるのではなく、大量のデータからAIが特徴を抽出して自ら学習するというもの。AIが多層的に自ら学習するという画期的な技術ですが、これに加えてビッグデータを解析するためのコンピュータの処理性能や画像・音声認識技術の飛躍的な進歩が現在のブームを支えているといえるでしょう。

現在のAI活用例と今後の見通し

「第3次ブーム」をむかえたここ数年の間に、さまざまな分野でのAIを活用した事例が報告されています。2016年度版の総務省による情報通信白書では冒頭でAIやビッグデータが特集されており、いくつかの具体例も掲載されています。

この時期のAIは、クイズ番組で人間のチャンピオンに勝ったことで一躍有名になりましたが、実は情報白書でも触れられているように、どちらかというと「第2次ブーム」でさかんに研究されたエキスパートシステムを最新技術で構築したといった性質で、特に医療分野での成果が報告されています。80年代と違う点は、膨大な臨床事例や文献を「1秒に8億ページ」という驚くべきスピードで読み込むことで、そうした情報を組み合わせて症状から病名を特定したり、特定に必要な追加質問をしたりといったシステムが構築されています。
このほかにも、同白書では「今後活用が望ましい分野」として、健康診断や公共交通の自動運転、緊急車両の最適搬送ルートの探索、といった社会インフラ的な活用が期待されている調査結果を提示。さらに雇用面での影響として、少子化による労働人口減少の補完や女性・高齢者などの労働環境の改善といったポジティブな面も紹介しています。

AIがヒトの仕事を奪う!? ― デザインシンキングの重要性

第3次ブームによって、最近では多くの分野でAIの話題が出るようになりました。しかし、AIの進化は「○○という仕事を奪う」という論調で語られることもしばしばです。実際に、単純作業などAIによる代替が進むであろう仕事があることは事実ですが、一方で多くの業務において最終的なアクションをとるのは人間であることは忘れてはなりません。
そうした業務をリードしていく人として、今後より重要になっていくと予想されているのが「デザインシンキング」です。これはデザイナーが行う思考過程をモデル化したもので、データや機能ではなく人を中心に発想することでイノベーションを生み出しやすくなる考え方だといわれています。新しい商品の企画を例にとると、従来のやり方では実現したい機能や商品を投入すべき市場に着目して企画を進めていたといえます。この手法は数値化して表しやすいためにプロジェクトを進めやすかったのですが、その反面でデータから出発する手法は既存の価値の延長線に着地しやすく、イノベーションを生み出すハードルは逆に上がってしまっていました。デザインシンキングは「人間」を中心に据えて物事を考えていきます。例えば、対象とする使用者の生活シーン、そこで行われる行動、さらには感情などを徹底して観察、課題を抽出します。さらにそれを解決するために多くの試作をつくって実際に使ってみる、問題点が見つかれば再度それをクリアした試作をつくり……というプロセスを繰り返します。非常に手間のかかる手法であり、顧客体験の共感という部分から出発しているために次のステップも分かりづらいものです。しかし、ユーザーの体験や感情に深く共感するところから出発しているため、従来のやり方にとらわれずに本質を的確にとらえたソリューションの創造が可能になるのです。
すでに見てきたように、AIは大量のデータを処理することで人の思考プロセスをなぞることができます。これに対して、感情は人間だけが持つものです。だからこそ、AI時代にも仕事をリードしていくために「人間」を主軸に据えるデザインシンキングの重要性がますます高まっているといえるでしょう。

最近のブームにより突然登場したようにも思えるAIですが、実はもう半世紀以上もの開発の歴史があります。本稿で取り上げたディープラーニングはSAP Leonardoの1つのテクノロジーであり、IoTやビッグデータ、分析と予測といった機能と組み合わせることで実際のアクションにつなげていくという強みを実現しています。
AIの開発が盛んになっている背景には、日本の労働力の深刻な減少があり、特に東京オリンピックが開催予定の2020年をめどにさまざまなAIによるソリューションが実現されようとしています。このように、労働力確保の面からもAIに任せられる業務は徐々に増えていく流れですが、逆にいえば単純作業ではなく人間にしかできないクリエイティブな仕事にシフトするチャンスともいえるでしょう。本稿で紹介したデザインシンキングはそのための1つのよいヒントになるかもしれません。