「人材の見える化」が見せてくれるもの 第1回


こんにちは、SAP ジャパンの籔本レオです。SAP ジャパンでは、来たる10月24日 (火) に「SAP HR Connect 2017 Autumn」を開催する運びとなりました。今回は「未来を切り開く人事~個の力を解き放ち、世界で戦う組織へ~」というテーマで、人に関わるあらゆる情報をデータ化し自動分析する最先端のテクノロジーを取入れ、人事から見える「未来」をより鮮明にする取組をご紹介すると共に、柔軟な働き方や、多様性、将来の人材に対するニーズにタイムリーに対応し、グローバルマーケットで継続的に勝てる組織を築く手法についてご紹介させていただく予定です。本ブログでも、当該イベントに関連したテーマとして、人に関わる情報のデータ化、すなわち「人材 DB の構築」について紹介したいと思います。

 

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「人材の見える化」を食べられる餅とするか、食べられない餅とするか

人材 DB を検討している会社でよく出てくる言葉は「人材の見える化」です。タレントマネジメントシステムやグローバル人材 DB を導入したいという相談や提案依頼を受けることがよくあるのですが、システム導入により何をしたいのかを質問すると「人材の見える化」という回答が返ってくることが少なくないです。

「人材の見える化」とは、たいていの場合は「自社 (自グループ) 全体に散在する人材情報を人材 DB に一元化し、どのような人材が存在するのかをデータで見えるようにすること」ということを意味しているのですが、その前後の文脈によっては、仮にシステム導入の強い意思があってもシステム化をすすめない場合があります。それは、なぜ「人材の見える化」をしたいのか、ということと、「人材の見える化」をして何をしたいのか、ということです。弊社 (SAP) はソフトウェアベンダーであるため、弊社製品を購入いただきシステム導入を進めてくれる方がうれしいのですが、「なぜ (=意義・目的)」が曖昧で、「何を (=活用イメージ)」ができていない場合、お金と時間をかけて構築したのに使われない、さらには、活用されない人材 DB を運用するためのオペレーションだけが残り続けるという残念な結果になるリスクもあり、こうなってしまうと、お客様も投資効果が得られず、また、弊社製品の評判も悪くなり、みな不幸になってしまいます。

そのため、システム導入検討の相談をいただく場合は、意義・目的や活用イメージを確認させていただくようにしており、それらが不明確である場合は、会社や人事が目指したいこと等をヒアリングして考え方を整理させていただくなどの検討のお手伝いをさせていただいてから、具体的なシステム導入検討に入っていただく場合もあります。

もし以下のような考え方で検討を進めている人事の方がいましたら要注意です。目的・意義や活用イメージもあわせて検討しているか再確認いただくことをおすすめします。

例1) とにかく人材データを1か所に集めて「見える化」すれば何かが見えてくるはず。きっと。。。

今は何が見たいかわからない、考えてもいないという場合が多いです。「見える化」がされた後に何が見えてくるのかとわくわくドキドキしているかもしれませんが、その期待は残念ながらわくわく感のまま終わってしまうかもしれません。ちなみに、最近はデータ分析の技術が進化しているので、大量データを機械に読み込ませて人が気づかないことを見つける、何かをマッチングさせる、推奨させる、といったものはありますが、そもそも何をしたいということが不明確であると、これらの機能も十分に活かせなくなります。

例2) 人材の「見える化」をすることによってグループ・グローバルでの適材適所が実現される。

例1に比べ、単なる「見える化」ではなく「適材適所」という目的があるのではないか、と思うかもしれませんが、ここで注意したい点としては、「人材の見える化」と「適材適所」がつながる活用イメージを持てているか、ということです。世界地図上で人が行き来するようなコンセプトの絵が1枚あり、それ以外に具体的な内容がない場合は要注意で、「絵に描いた餅」となる可能性が高いです。「適材適所」は理想の人材配置を意味しており、人事・人材戦略でよく使われる言葉でありますが、それを実現するには人材配置に対する考え方、判断ロジック、制度面、文化・意識面など、さまざまなハードルがあり、これらの理論的なこと、現実的なことをバランスよく考えた活用イメージができているかがポイントです。これから取り組もうとする新しい施策であれば、先が読めない部分や不確定な部分があり活用イメージを具体化していくことは難しいですが、検討時点で既に”絵餅感”が出ている場合は要注意です。

 

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このような絵1枚だけで適材適所といっても現実味がない。。。

 

 

人材 DB 構築における理想と現実

タレントマネジメント、ピープル・アナリティクス等のトレンドにより人材データ管理の必要性が高まることで、人事給与システムでの管理範囲を超えた幅広い人材情報を扱う人材 DB を構築するという事例は多くなってきました。ただし、実際に当初の理想どおりに活用できている会社は多くなく、さまざまな悩みを抱えているようです。そして、 複数の事例のうまくいっていない状況や課題を整理すると、「目的のために管理したい/すべきデータ」、「実際に管理対象としているデータ」及び「適切に管理できているデータ」にそれぞれギャップがあることにより、十分な活用ができていないようです。

人材 DB で何がしたいかが明確であると「目的のために管理したい/すべきデータ」と「実際に管理対象としているデータ」は整合するのですが、活用イメージ・アウトプットイメージがないままとにかく「人材の見える化」を進めてしまうことでギャップが大きくなります。データ分析等のためにできるだけ多くの種類のデータを持っておきたいという考えも間違いではないのですが、手当たり次第データを集めようとすると、作業負荷の増加、データ品質(精度・鮮度)の低下のリスクが高まり、また、特に必要なデータがどれなのか不明確なまま進めることで、結果として確実に使わないであろうデータが管理されていて、本当に必要なデータが一部漏れてしまうというリスクもあります。

さらに、「実際に管理対象としているデータ」と「適切に管理できているデータ」にもギャップが出ることが多くあります。人材 DB の構築後、当該 DB で管理対象とするデータを収集していくことになりますが、半年、1年と時間がたっていくにつれ、データが誤っている、欠落しているといった「データ精度の低下」や、データが長期間更新されておらず最新ではない状態になっている「データ鮮度の低下」といったデータ品質の問題が出てくることがあります。たちの悪い例として、データ品質がどのくらい低下しているのかわからないという例もあり、具体的には、

  • あるデータ項目が欠落している場合に、データが空白の状態で正しいのか、理由があって取得しないようにしているのか、データが欠落しているのかがわからない
  • データの履歴管理はしているものの、基準日の考え方やデータ最新化のタイミングが不明確であり、特定基準日で抽出したデータの精度がわからない

といった例もあり、この場合、どのくらいデータを信じてよいかわからず、実業務でのレポートや分析には使えない、といった問題が起こることもあります。業務上データの正確性が求められる給与計算に使うようなデータでは問題は起こりづらいですが、データの使用目的が曖昧なデータになればなるほどデータ品質の低下リスクは高くなります。

 

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人材DB構築におけるギャップ

 

人材 DB を有効活用するために

このようなギャップをなくしていくためには、

  • 人材 DB 構築の意義・目的を明確にし、活用イメージをもった上で検討・構築を進めること
  • 人材 DB で定義したデータについて、精度・鮮度高い状態で管理され続ける状態をつくること

が重要なポイントとなります。それぞれあたりまえのようでできていないことが多いのではないでしょうか。

 

第1回では「人材の見える化」の意義・目的の重要性と、人材 DB 構築における理想と現実のギャップについて紹介させていただきました。次回はギャップ解消のための考え方について紹介したいと思います。

 

さいごに、冒頭でも少し触れましたが、 このたび以下の要領のとおり、来たる10月24日(火)に「SAP HR Connect 2017 Autumn – 未来を切り開く人事 –」を開催する運びとなりました。 当日、事例セッション・パネルディスカッションでは SOMPO ホールディングス様やハウス食品グループ様の人事部門責任者様にご登壇をいただき、 世界と戦っていくための、「未来」の人事の役割と具体策を考察して参ります。 当日のプログラム等の詳細はこちらの サイト をご覧ください。

 

 

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