今こそ、日本がふたたび世界をリードする存在に – SAP SELECT Tokyo 2017基調講演


SAP SELECT Tokyo 2017の基調講演「It‘s time. 今こそ、日本がふたたび世界をリードする存在に。」で、SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎が最初に指摘したのは、第4次産業革命が日本でもようやく動き出し、業種を超えたコラボレーションが始まっていることでした。
2017年3月、ドイツのハノーバーで開催された展示会「CeBIT 2017」には日本企業が108社参加したほか、安倍首相も訪れ、IoTを始めとする先端技術分野における日独協力の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」を採択。このときSAPは、ブースを訪れたメルケル、安倍の両首脳にむけて、気象衛星を用いた災害対策プラットフォームのデモを行い、世界に向けて従来の業界の枠を超えたオープンイノベーションをアピールしています。
SAP Select

また、2017年7月にはコマツとNTTドコモ、オプティム、SAPジャパンの4社が各社の強みを結集した土木建設業向けクラウドIoTプラットフォーム「LANDLOG」を共同で企画、運用することを発表するなど、日本発のデジタルトランスフォーメーションが目に見える形で現れてきました。

日本がデジタルトランスフォーメーションに取り組まなければならない理由は、今、本気にならなければ世界から置いて行かれる危機感があるからです。今や生産性を示す1人あたりGDP(購買力調整後)で日本は世界27位、1人あたり輸出額は世界44位。かつての日本は、有効需要の創出で不況を回避してきましたが、古典的な対策には限界があります。
SAP Select 米倉様

パネルディスカッションに登壇した法政大学院イノベーション・マネジメント研究科教授/一橋大学イノベーション研究センター特任教授の米倉誠一郎氏は、現在はUberやAirbnbのように、使われていない資産を効率的に使う「マッチング」のアイデアが重要な時代であると指摘しました。
今や企業が1社でできることは知れており、オープンイノベーションに舵を切ることは必須です。そのためにはIoTやAIの利用は避けて通れず、イノベーションを起こすために余剰と余裕を持たなければ日本企業は沈んでしまうという痛烈なメッセージです。

資生堂が進めるグローバルマーケティング改革とマトリクス組織によるイノベーション

このような状況の中、日本発グローバル企業として気を吐いているのが資生堂です。ゲストとして登壇した同社の代表取締役執行員社長 兼 CEOの魚谷雅彦氏が強調したのは、日本発の技術には優位性があっても、その良さを世界にアピールしていくためには戦略的なマーケティングが必要となることでした。同氏は、日本コカ・コーラでマーケティング担当役員、社長、会長としてブランド発信に携わってきた経験を買われ、資生堂で初めてとなる社外出身の社長に就任。現在、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティカンパニーへ(Be a Global Winner with Our Heritage)」という中長期戦略を掲げ、デジタル変革を含めたグローバル視点でのビジネス戦略を進めています。
SAP Select 魚谷様
魚谷氏は資生堂に就任直後から組織の統合と効率化を実施し、経営体制としてはマトリクス組織を導入して世界6拠点に地域統括会社を設置。2017年1月にはアメリカ地域本社を通じてシリコンバレーのスタートアップ企業「MATCH Co」を買収し、スマートフォンのアプリケーションで肌の色を精緻に計測し、それに合わせて色を調合したファンデーションを直販するビジネスを展開しています。これはまさにカスタマイゼーションのビジネスモデルであり、顧客データを活用するプラットフォーム形成にもつながります。また、SAPを活用してITシステムのグローバル統合も進めており、主要な取引先とPOSデータを連携して化粧品のブランド別の販売実績をリアルタイムに把握する可視化にも取り組んでいます。

世界、日本で続々と進行するデジタルトランスフォーメーション

SAPも、世界各国でさまざまなデジタルトランスフォーメーションを手がけています。例えば、イタリアの大手鉄道会社トレニタリアは、SAPと連携して、鉄道車両の状態をセンサーで把握し、状態基準保全(Condition-based Maintenance)を行うことで年120億円相当の保守コストを削減するプロジェクトを実施中。また、人口800万人を擁する中国の南京市は、SAPと共同で主要道路の交通状況をリアルタイムに把握するシステムを2016年10月に稼動させ、渋滞の緩和や適切な交通手段の選択に活用しています。ドイツのシーメンスも産業機械向けのオープンなデジタルプラットフォーム「MindSphere(マインドスフィア)」をSAPと共同開発し、ユーザーに提供しています。

さらにSAPは、「2020年の訪日外国人旅行者数4,000万人達成」に向けたアクションの支援としてデザインシンキングの手法を提供。米シリコンバレーのSAP Academyで学ぶ30カ国160人の新卒社員の多様な知恵を結集し、訪日客が継続的に日本を訪れる仕組みを検討するワークショップを実施予定(※2017年9月実施)です。観光業のみならず、社会インフラ全般に対する施策を検討することで日本経済に新たなイノベーションを起こせるよう、ソーシャルインパクト(社会的貢献)の推進企業となるべく、SAP自体も変化していくといいます。

SAP SELECT 2017訪日外国人旅行者数

デジタル化された世界のためにSAPが提供するエンタープライズアーキテクチャー

パネルディスカッションに続き、SAPエグゼクティブボード(取締役会)メンバーでクラウドビジネスグループ プレジデントのロバート・エンスリンが、SAPのデジタル戦略について解説しました。
SAP Select Rob
日本は、世界と比べると、デジタル化を最優先事項としている企業も、IT予算に占めるデジタル化の割合も、バイモーダルアーキテクチャーを活用している割合も高くありません。しかし最新のテクノロジーを使えば、誰でも手頃な価格、かつ持続可能な状態で実現が可能です。SAPはデジタル化された世界のために「ビジネスプロセス」と「ビジネスインテリジェンス」をつなぎ、すべてのトランザクションデータをSAP S/4HANAに格納し、そこからさまざまな示唆を得てアクションに結びつけるエンタープライズアーキテクチャーを用意しています。トランザクションに対するアクションから意思決定までがリアルタイムにできるのはSAPだけで、エンタープライズアーキテクチャーが実現する無限大モデルによってビジネスの再創造が促進されます。

さらにこの無限大モデルを核とするデジタルコアを中心に、Concur、SAP SuccessFactors、SAP Hybrisなどをパブリッククラウドサービスとして提供。さらにテクノロジー・プラットフォームの中心となるSAP Cloud Platformを利用することで、クラウド上でアプリケーションを拡張、統合、構築することが可能になります。
SAP Leonardo
SAPは2017年に新たなソリューションセット「SAP Leonardo」の提供を開始し、SAPプラットフォーム内で機械学習、AI、分析などのツールが実行できるようにしました。世界5カ国のLeonardoセンターでは、デザインシンキングのセッションが可能で、アイデアを試しながら、ビジネスの成果に結びつけることもできます。

さらに日本でNTTグループとSAPが共同で行ったIoTプロジェクトも紹介されました。バスの運転手が身に付けたウェアラブルセンサー「hitoe」から心拍数などをリアルタイムで収集し、疲労具合とハンドルやブレーキなどの動きなども含めて総合的に分析し、異常を見つけて事故を未然に防ぐ実証実験を実施しています。

「SAPはより良い世界の実現に貢献し、人々の生活をより豊かなものにしたいと考えています。世界中の企業に、SAPが提供する次世代のコアテクノロジーを活用し、画期的なイノベーションを実現していただきたいと願っています」とエンスリンは力強く語りました。