SAP S/4HANAで総合物流業務を実現
作成者:山内 尚彦 投稿日:2017年11月2日
10月19日投稿の「SAP S/4HANAの最新版、1709リリース」の中で物流領域の輸送管理(SAP Transportation Management=TM)もSAP S/4HANA(以降、S/4HANA)のコア機能に取り込まれたことをお伝えしました。
SAP製品、さらにSAP ERPで物流実行管理?と聞いても中々イメージしていただけないかもしれませんし、あまり認知されていないかもしれませんが、昨年の1610リリースでコア機能に含まれた拡張倉庫管理(SAP Extended Warehouse Management =EWM)と合わせて、物流現場のオペレーション実行・管理がS/4HANAの中で実現可能となりました。
今回は輸送管理をメインに拡張倉庫管理も含めたSAP物流実行系ソリューションのご紹介させていただきます。
輸送管理(TM)
一般的にTransportation Management System(TMS)と呼ばれる輸配送管理システムは、主に直送貨物の陸送などの輸配送実行、配車、運賃計算・精算、車両・ドライバー、実績を管理し、効率的な輸配送を実現するためのものです。
これまでSAP ERPやSAP S/4HANAの外付けでご利用いただいているTMも同様に輸送プロセスを管理・サポートしていますが、航空、海上、鉄道、トラックなどマルチモーダルの国内・国際輸送の総合物流にも対応しており、荷主企業様だけでなく、郵便、小口貨物および国際物流などを取り扱う物流業者・LSP様にもご利用いただいているソリューションです。
S/4HANA 1709リリースでコア機能に含まれたTMには、従来のSAP ERPの物流管理ー輸送(LE-TRA)モジュールの基本出荷に対応した機能に加え、ユーザーインターフェースとしてS/4HANA同様にFioriが提供され、ビジネスパートナや品目などマスタデータの統合をはじめ、輸送計画のガントチャートや積載計画・組み合わせの3D表示、配送先や車両の位置情報を地図と連携、輸送の様々なKPIの組込分析などの機能が組み込まれており、ユーザビリティや視認性が向上しています。
今回のS/4HANAのTMには荷主企業様向けの業務シナリオにフォーカスした機能が組み込まれています。
荷主企業様では、倉庫や輸送の管理を物流業者・LSP様へ外注・委託され、自社システムと外部倉庫管理システムとインターフェースすることが多いと思われますが、物流効率の向上や物流コスト削減などを目的として、自社業務の受発注や製造に連携した物流管理の可視化やグループ企業内または同業他社様との共同配送を実践するために上流プロセスから倉庫・輸送を含めた一元管理をご要望されるお客様も増えており、このようなケースでS/4HANAとTM・EWMの統合プロセスをご利用いただくことで、業務の上流からシームレス連携した倉庫・輸送の現場作業の実行・管理を同一プラットフォーム上で実現し、サプライチェーン全体をリアルタイムで可視化することにつなげることが可能となります。
現状では航空・海上の混載業務など国際物流業者・LSP様の業界固有プロセスの機能は外付けのTMでの対応となっておりますが、他のSAP製品同様にTMも定期的な機能拡張が予定されており、お客様の業務や要件に合わせ、S/4HANAへの組込型または外付けどちらのオプションも選択いただけます。
拡張倉庫管理(EWM)
EWMについては、前述の通り、昨年のS/4HANA 1610リリースでコア機能に含まれた高度な倉庫管理機能です。
※2016年11月25日投稿の「SAP S/4HANA1610のロジスティクス領域における進化」 3) Extended Warehouse Management(EWM)による高度な倉庫管理 にも説明がありますので併せてご覧下さい。
一般的にWarehouse Management System(WMS)と言われる倉庫管理システムと同様にEWMも入出庫、在庫管理の庫内作業を実行・サポートするためのシステムですが、S/4HANAの調達購買・発注の入出庫だけでなく、製造プロセスと連携した部材供給、完成品棚入、製造完了後の部材消費、および拠点間の部材移送などとも統合して倉庫現場のオペレーションを実行できます。
このように調達購買・発注および製造から倉庫管理、入出荷・配送までのエンド・ツー・エンドのプロセスをS/4HANAの中で統合された機能を活用して、物流現場を含めたオペレーションの実行及び一元管理が可能になりました。
その他物流実行系の拡張ソリューションとして、倉庫作業や輸送状況のイベント・マイルストーン管理のTrack & Trace、コンテナヤード・鉄道ヤード管理のYard Logistics、空コンテナ・貨車など輸送機材管理のTransportation Resource Planningなどがあり、TMやEWMと組み合わせることで、物流現場全体の管理の効率化に役立てることができます。
グローバルでは、これらソリューションを組み合わせた統合プロセスを活用した導入事例が広がり始めておりますので、国内でもご紹介できる事例ができましたら物流実行系の新規ソリューションや新機能などと合わせてまた情報発信させていただきます。
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