新たなイノベーションフレームワークが生み出すビジネスの可能性とは? – SAP Leonardo Executive Summitレポート

作成者:SAP編集部 投稿日:2017年11月27日

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2017年1月の正式発表以来、イノベーションの推進を支援する新たなフレームワークとして、各方面から熱い視線が注がれている「SAP Leonardo」。日本においては、2017年10月からSAP Leonardoの導入を支援する「SAP Leonardo Innovation Services」の提供もスタートし、具体的な活用に向けた期待がさらに高まっています。こうした中、この新たなフレームワークのブランドを冠した国内イベント「SAP Leonardo Executive Summit」が、10月24日にグランドハイアット東京で開催されました。SAP Leonardoの全貌を明らかにする基調講演をはじめとするセッションは多くの参加者で賑わい、SAPユーザーの枠を超えた高い関心をうかがわせました。このブログでは、会場でも紹介されたSAP Leonardoの概要のほか、SAPの展示でお披露目された具体的なユースケースをレポートします。

SAP Leonardo – お客様との協働を通じて、イノベーションの
推進を支援する新たなフレームワーク

これまでSAPは基幹システムとしてのERPのほか、さまざまな業界・業務に特化したアプリケーションやベストプラクティスの提供を通じて、お客様のビジネスの成長を支援してきました。SAP Leonardoは、こうした特定の目的に特化した製品・サービスではなく、システムに蓄積された膨大なデータ、また外部のデータを活用して、お客様のビジネスに最適なイノベーションの実現を支援するフレームワークです。

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世界で次々と起きているイノベーションの多くは、人、モノ、ビジネスがインテリジェントにつながることで実現しています。ここでは、ビッグデータ、クラウド、IoT、マシンラーニングといったテクノロジーや手法が用いられますが、イノベーションはこれらの個々の要素だけを持って実現するものではありません。
実際、ITを活用した優れたビジネス基盤やアプリケーション、またデータの宝の山があるにもかかわらず、必要なデータを収集することができない、あるいは収集できたとしても効果的な活用法を見いだすことができないといった課題を抱えているSAPユーザーは、依然として多いはずです。ましてや、競合他社との差別化を図るために、ここにサードパーティのデータが加わるとなると、問題はさらに複雑になります。
SAP Leonardoは、SAPがクラウドソリューションとして提供してきたテクノロジーやサービスを、「IoT」「マシンラーニング」「ビッグデータ」「アナリティクス」「ブロックチェーン」「データインテリジェンス」の6つの領域でポートフォリオ化し、真のライブビジネスのための洞察を導き出し、イノベーションの実現に向けた行動に転換します。

SAPでは現在、SAP Leonardoの適用対象として、以下のようなビジネスシナリオを用意しています。

Connected Products つながる製品
Connected Assets つながる設備・機器・施設
Connected Fleet つながる輸送機器・車輌
Connected Infrastructure つながる社会インフラ
Connected Market  つながる市場メカニズム
Connected People つながるヒト

これらのシナリオにおいては、いずれも基幹システムにある自社のデータ資産をIoTセンサーで集約されるデータ、あるいは消費者の行動に関するサードパーティのデータなどと連携させて、新たな付加価値を生み出す分析によって、リアルタイムな意思決定と行動へとつなげていきます。
さらに、SAPはSAP Leonardoの活用支援において、すべてのフェーズでデザインシンキングの手法を採用しています。アイデアの集約、プロトタイピング、また具体的な製品・サ-ビス化に至るまで、短いサイクルでトライ&エラーを繰り返しながら、完成度を高めていくことがイノベーションへの近道です。2017年10月にスタートしたSAP Leonardo Innovation Serviceは、まさにこうしたプロセスをエンドツーエンドで支援するサービスです。

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4つのデモブースでSAP Leonardoのユースケースを紹介

SAP Leonardo Executive Summitでは、この新たなフレームワークが可能にするビジネスのユースケースが以下の4つの展示ブースで公開されました。

SAP Leonardo Machine Learning – 企業内データを価値へと変えるエンタープライズAI

SAPは近年、基幹系のERPや生産管理/在庫管理などのシステムを通じたお客様の支援にとどまらず、外部企業とのパートナシップを通じて、新たなビジネスの創出に向けた取り組みに大きな力を注いでいます。
あるパートナー企業との協業では、小売り店舗にAIロボットを投入することで、来店客が店舗にどれだけの時間滞在したか、どういった商品を手に取って、どういったタイミングで購入したかといった傾向を、店舗で集約されるデータを使って分析しています。この取り組みでは、在庫管理は従来のERPで、接客などはマシンラーニングの機能を持ったAIロボットが担いながら、両者が連携することで店舗運営、あるいはマーケティング施策の最適化が図られています。
SAPでは、この小売り店舗におけるAIロボット活用以外にも、次のような同様の施策を推進しており、これらの具体的な成果を踏まえ、SAP Leonardoのさらなる活用の可能性を探っています。
その1つが、人事領域におけるAI活用です。新たなプロジェクト、事業の立ち上げにおいて、人事担当者は膨大な人材プールの中から適任者を選定しなければなりません。こうしたニーズに対しても、人事アプリケーションにマシンラーニング、AIの機能を実装することで、候補者、応募者のレジュメを分析して適性を判断することができます。
もう1つの例が、データサイエンティスト領域における取り組みです。あるエンタテインメント企業では、ダイレクトメールを使った約6,000万人の会員向けのマーケティング施策において、最新のデータ分析手法を用いた会員のターゲティングを行いました。その結果、それまでの施策において1.4%程度だった会員の来店率が4.7%に向上。店舗へ誘引する会員数を、約200万人増加させることに成功しました。
これらの事例はいずれも、AIや新たなデータ分析手法を基幹システムと連携することでさまざまな業務が自動化され、これまでにないカスタマーサービスが着実に生み出されている事例だと言えます。

Robotic Warehouse – マシンラーニングによる在庫管理の高度化

ますます高度化する消費者のニーズに応え続けるためには、効率的な在庫管理、スピーディな入出荷管理はサプライチェーンマネジメントにおける不可欠の課題です。こうした倉庫管理業務においても、マシンラーニングが大きな役割を果たすようになっています。
このデモで紹介されたロボティック・ウェアハウスは、サプライヤーから入荷した商品パレットを画像認識機能で分類し、どの棚に入るべきパレットかを瞬時に判断します。これだけではありません。このソリューションがマシンラーニングたる所以は、常に学習を繰り返しながら、継続的に倉庫管理の最適化を図れる点にあります。
例えば、一定以上の規模がある倉庫においては、フォークリフトなど倉庫で稼働する車輌が消費するエネルギーは、ビジネスのコストを大きく左右します。このソリューションは過去のデータを分析することで、入出荷の頻度が高い人気商品の棚を出口の近くに変更する、あるいは複数の棚の商品を出荷する場合は、最短の移動距離を学習してフォークリフトの移動距離と時間を短縮するなど、常に改善点を見いだしながら入出荷業務の効率を高めていきます。また、これにより顧客の要求へのスピーディな対応が実現し、高い満足度につながることは言うまでもありません。

Live Airport – 空港における新たな顧客サービスや業務モデルを実現

空港は、飛行機の発着、機体のメンテナンス、空港内における荷の運送、乗客の移動、小売りサービスなど、さまざまな要素が複雑に絡み合う運輸拠点です。このブースでは、データ化されたこれらの要素をSAP Leonardoで一元的に管理・分析し、空港における新たな顧客サービスや業務モデルを実現するデモが行われました。

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空港設備内のすべてのアクティビティが表示されるダッシュボードでは、到着が予定される便にディレイが発生していないかといった情報のほか、ターミナルのパーキング情報、また空港内で稼働しているさまざまな車輌に関する情報などがリアルタイムで更新されていきます。
それだけでなく、SAP Leonardoのフレームワークで構築されたダッシュボードでは、空港内で日々発生する事象をデータ化し、これらを使った高度な予測を行うこともできます。セキュリティゲートを例にとると、セキュリティゲートは空港内でもっとも乗客が滞留しやすい場所の1つです。デモでは、撮影した画像を使ったヒートマップで滞留している人の動き、混雑の度合いが可視化されています。混雑が一定以上の度合いに達すれば、飛行機が予定通りに発着できない可能性があるばかりか、待っている乗客のストレス、小売店での販売機会の損失といったデメリットが生じることになります。
こうした状況に対してSAP Leonardoのダッシュボードは、セキュリティゲートを1つ開けて、乗客の滞留を緩和するサジェッションを行い、さらに1つのゲートを開けることで必要なスタッフの数、待機しているスタッフの数などを把握した上で最適なプランニングを行います。こうしたプランニングを日々繰り返していくことで、毎週何曜日の何時ごろは乗客の混雑がピークに達し、いくつのゲートを開けて、何人のスタッフを配置しないといけないかといったベストプラクティスが明らかになります。こうした成果はすべて、SAP Leonardoで提供されるIoT、マシンラーニング、分析、予測機能の集大成です。

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デモではもう1つの活用例として、危機管理のプランニングも紹介されました。空港内で不審な危険物が発見された場合、運営管理者は速やかに乗客を安全な場所に誘導しなければいけません。その避難プランは、危険物が小さな液体物なのか、あるいは大きな爆発物らしきものなのかによって異なってきます。最大限の安全を考えて、100メートル四方の数十人の乗客を避難させた場合、ダッシュボードには飛行機の離陸にどれだけのディレイが生じるか、またそれによって他の飛行機の運航にどれだけの影響が及ぶかといったシミュレーション結果が表示されます。もちろん、これらの情報は空港の運営関係者とも共有され、安全管理の徹底が図られます。
このデモで公開されたデータの分析結果やプランニングの詳細は、センサーを介して集約されたクラウド上のデータから生み出されており、AR(拡張現実)技術を用いた優れた視認性からも、スポーツ競技が行われる大規模スタジアムなど、多くの人が集まる場所での応用が期待できます。

Smart Racing Car – IoTを活用したクラウドによる自動運転管理

IoTのテクノロジーを活用して、クラウド上のアプリケーションから自動車の自動運転をリモート管理するデモが公開されました。自動運転の普及については、すでに世界の先進的な企業によってさまざまな実験が進められていますが、SAP Leonardoはこうしたシーンでも大きな活用の可能性を秘めています。
デモでは、実車に見立てたミニカーを使ったサーキットレースでの、加速、減速、ステアリング、ラップタイム管理などが、iPhoneに搭載されたアプリケーションでコントロールされました。
データはミニカーに埋め込まれたセンサーからクラウド上に集められ、瞬時に分析が行われます。これを実際の車に応用すれば、多数のセンサーからさらに多くのデータを収集し、車載カメラを使った車間の制御、天候による路面のコンディションに応じた安全走行の管理などが、リモートでコントロールできるようになります。

SAP Leonardo Executive Summitでは、SAP Leonardoという新たなフレームワークの活用例を4つのデモブースで紹介しましたが、「IoT」「マシンラーニング」「ビッグデータ」「アナリティクス」「ブロックチェーン」「データインテリジェンス」という広範なテクノロジー領域をポートフォリオ化したSAP Leonardoに秘められたイノベーションの可能性は無限にあります。SAPジャパンでは、今後もSAP Leonardoのフレームワークを使ったお客様のビジネス変革の成果を、このブログを通じて皆様と共有していきたいと考えています。

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