通信販売ビジネスのカタログ送付数や顧客分析に 人工知能や機械学習が貢献


機械学習を活用した分析手法を採用して業績を伸ばしているジャンルの1つに、通信販売ビジネスがあります。2017年11月に開催されたSAP Analytics Summitでは、テレビ朝日グループでテレビ通販ビジネスを展開するロッピングライフと、カタログ通販大手のディノス・セシールの先進的な取り組みを紹介し、SAP Predictive Analyticsの導入/運用支援パートナーであるブレインパッドと共に、活用ポイントや留意点についてパネルディスカッションを行いました。

AS_panel

ツールを使った自動分析への移行で通販の売上を拡大

ロッピングライフとディノス・セシールの両社は、マーケティングデータの分析基盤にSAP Predictive Analyticsを活用して実績をあげていますが、導入時期や導入目的は異なります。2016年にSAP Predictive Analyticsを導入したロッピングライフの目的は、販売促進活動のROI(投資対効果)の最大化にありました。事業開発部 データベースマーケティンググループ 課長の西部好範氏は、テレビ通販のメインターゲットである60~70代の女性にどうアプローチするかが課題になっていたと語ります。それまでもRFM分析で購入日、購入頻度、購入金額をベースにマーケティングを行っていたものの、分析に長い時間を要していました。そこでSAP Predictive Analyticsの導入を検討し、通販カタログの送付先を分析するPOC(実証実験)を実施したところ、それまでのRFM分析と比べて売上高が9%増加したことを確認し、本格的な導入に踏み切りました。

一方、ディノス・セシールがSAP Predictive Analytics(前身のKXEN)を導入したのは10年ほど前のことです。同社の主力事業であるカタログ通販の場合、カタログ制作コストが1冊数百円かかるため、発行部数や送付先の最適化が重要となります。マーケティング本部 ディノスマーケティング部 販売推進ユニットの小山斉氏によると、以前は人手によるRFM分析を行っていましたが実際に施策を打って見なければ結果はわからない側面があり、最終的に過去の経験値をベースに決定していました。そこでSAP Predictive Analyticsを導入し、機械学習の予測モデルに基づいてカタログ送付先を決定。その結果、顧客1人ひとりの期待値に基づく事業収益や損益分岐の判定が可能になり、カタログ送付の冊数が客観的に判断できるようになったといいます。同社の通販ブランドの中には、責任者からのリクエストに応じて分析を行い、前年比55%までカタログ部数を絞り込んだところ売上が120%になった事例もありました。

ただし、アナリティクスツールは導入してすぐに活用できるというわけではありません。ディノス・セシールでは、ツールを使う人材を育て、徐々に具体的な成果が目に見えるようになってからは、従来の人手によるRFM分析から、機械学習によるツールでの分析をメインに行っています。現在はわずか数名のメンバーで年間数十回にも及ぶカタログ発行の部数決定をしているため、かなりの省力化につながっています。また、カタログ発行責任者とマーケティング担当者が同じ数字を見ながら議論ができるようになり、意思決定のスピードも早くなりました。「ツールを使うことで顧客1人ひとりの期待値という客観的な指標に基づいて判断ができるようになったことで、RFMと比べて意思決定が早くなり、その時間を企画などに充てられるようになりました。」と小山氏は語ります。

POCを正しく実施して効果を示す

SAP Predictive Analyticsの導入に向けたPOCの実施には、課題を正しく認識し、効果を示すことが重要です。ロッピングライフでは、3年前の2年分のデータを利用して、そこから直近1年間を予測する目隠しテストを実施。そこでの予測と実績の差を示しながら経営層や現場の説得にあたったと西部氏は振り返ります。ディノス・セシールにおいても実績データをもとにテストデータを作成し、過去に実施したキャンペーン施策の結果とSAP Predictive Analyticsの予測値を比較して、予測精度が高いことを証明したといいます。

ブレインパッド デジタルソリューション統括部 統括部長の東一成氏は、「POCを実施する際は、まず結果が出やすいケースで実施して、成功体験を重ねることです。また、結果が出るまでに長期間かかるものより、短期間で成果がわかるものが有効です」とアドバイスを送ります。

ただし、データの信頼性を確保するためにはデータのクレンジングも必要です。例えば、日常的に通販で商品を買う人と、クーポンを送った時だけ買う人では属性が異なるため、日常的に買う人にクーポンを送ってよいのかなど、分析の前に実務面を考慮しなければ意味がありません。過去のデータを使う場合も、顧客マスタや商品マスタが最新の状態しかもっていない事が非常に多いです。過去のある時点での分析をしたいので、顧客マスタや商品マスタも昔のある時点のものを保持していないといけません。通販の場合、顧客の属性は氏名、住所、電話番号など取得できる情報が限られていても、SAP Predictive Analyticsの機械学習の機能によって過去の実績からその他の属性を補いながら判断できるのがメリットで、両社ともこれによってデータの信頼性を高めているといいます。

ロッピングライフでは今後、顧客の行動ログを分析しながら、販売促進の最適なタイミングを見ていきたいとしています。ディノス・セシールでは、顧客の購買意欲が高まるタイミングでカタログが送付できるよう、継続的に最適化を図りつつ、質の高いカスタマーエクスペリエンスを提供していく方針です。最後に東氏が、「予測モデルは1回作って終わりでなく、状況に応じて変えていくことが顧客の育成につながり、本当の意味でのカスタマージャーニーにつながっていきます」と締めてパネルディスカッションを終了しました。

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)