SAP Leonardoが企業のデジタル変革を推進!- 「6つの技術」と活用シナリオ
作成者:SAP編集部 投稿日:2018年1月31日
現在の企業システムは、財務会計や販売管理といった既存の基幹システム(SoR:System of Record)と、IoTをはじめ、新規ビジネスを担うシステム( SoI:System of Innovation)に大別することができます。
このSoRとSoIの連携をより密にすることがIoTの課題解決には欠かせないが、これは「AI活用」「データ分析」など、ほかの新規ビジネスに取り組む際も同様だ。そこで、基幹システムのグローバルベンダーであるSAPは、長年SoRに蓄積したデータをSoIと連携することでビジネス革新につなげる、デジタルイノベーションシステムを発表した。それがSAP Leonardoです(※図1)。
SAP Leonardoでは、「機械学習」「ブロックチェーン」「データインテリジェンス」「ビッグデータ」「IoT」「アナリティクス」という6つのテクノロジーコンポーネントを必要に応じてSAP Cloud Platform上に展開し、そのコンポーネントを組み合わせたアプリケーションを作成することができます。
既に多くの企業が利用しているSAPの基幹システムと接続・連携できることはもちろん、SAP Cloud Platform上に作成したアプリケーションをマイクロサービス化したり、オープンAPIを活用したアプリケーションにすることで、外部サービスとの柔軟な連携も可能となります。
活用シナリオ1:膨大な衛星画像や気象データを活用
SAP Leonardoのメリットは、活用シナリオを見ると分かりやすいため、以下に2つの取り組みをご紹介します。
1つ目は「災害対策」です。SAPは欧州宇宙機関(ESA)とのパートナーシップに基づき、詳細な衛星画像データのビジネス活用を提案しています。衛星画像データの活用領域は多岐にわたるが、自治体などが活用すれば広域防災のリスク管理に生かすことが可能になります。例えば、膨大な過去の画像データを収集・分析すれば、近い将来に土砂崩れが起こる確率を予測し、地図上で可視化することができます(※図2)。
具体的には、膨大な画像データを機械学習にかけることで、都市部と農村部それぞれの土壌の水分量や植生などを特定。そこに住民の分布状況や動態、交通網のデータなども掛け合わせることで、重点的に対策すべきエリアなどが「見える化」することができます。
自治体は、これを基に避難ルートや災害対策本部の設置場所、事後対応の手順などを策定できるほか、住民管理システムなどのSoRと連携することで、いち早く該当地域の住民に避難を呼びかけるといったことが可能になります。
このシナリオでは、SAP Leonardoの「ビッグデータ」「アナリティクス」「機械学習」といった技術が使われています。また、予測精度をさらに高めるため、雨量を測るセンサーを山林に設置し、データを組み合わせる方法も考えられますが、その場合は「IoT」のコンポーネントを追加します。このように、オンデマンドで必要な環境が用意できる点は、SAP Leonardoの特長の1つとなっています。
活用シナリオ2:空港内の人、モノの流れを最適化
2つ目の想定シナリオは「コネクテッドエアポート」である。空港における人やモノ、カネの動きなどを可視化することで、旅行客の利便性向上、および空港内店舗の売上向上などに活かすものです。
この場合、基礎となるデータは人の流れです。空港内の各所に設置したセンサーを通じて、混雑や滞留に関する情報をリアルタイムに取得し、ヒートマップで表示しつつ、機械学習によりスタッフの増員人数を計画して確認することで、有効な対策が打てるようになります(※図3)。
リアルタイムな混雑状況が見えるため、手すきのスタッフに連絡して臨時の現場対応に向かわせることができます。また、eコマースソリューション「SAP Hybris」と統合し、無線LANを使ってスマートフォン向けのクーポンをモバイルデバイスに配信すれば、混雑度の低いエリアにある店舗に一定量の人を誘導するといったことも実現できます。あるいはクーポンではなく、あらかじめ設置したデジタルサイネージに情報を表示することで、利用者のストレス改善と、店舗の売り上げアップにつなげることが可能になります。
また、同様の仕組みは空港のほかのエリアにも適用できます。例えば、駐車場A、Bが満車で、C、Dには余裕があるといった場合、空港に進入してくるドライバーのスマートフォンにリアルタイムな駐車情報を送信することで、スポットを見つける時間を節約しスムーズな駐車を促したり、駐車スペースの直接予約・モバイルデバイスでの料金支払いなどの新しいサービスを提供することが可能です。
さらに、飛行機への荷物の積み下ろしを行うフォークリフトの居場所や稼働状況を捕捉すれば、稼働最適化につなげることもできます。コンテナの積み込みに起因する便の遅れなどを防ぐ上で有効な手段となります。
このようにSAP Leonardoは、IoTを核とするSoIの活用に取り組む企業に、これまでにないイノベーションの可能性を提示しています。もちろん、紹介した災害対策や空港のシナリオはあくまで一例で、同様の仕組みはあらゆるビジネス領域に新しい可能性をもたらすものといえます。
2つのシナリオの実現に必要な要素技術は既にそろっており、その気さえあれば、すぐに実現に向けて着手することができます。ビジネスイノベーションを手にできるかどうかは、企業の発想の転換にかかっているといえるでしょう。
※図1
デジタルイノベーションシステム「SAP Leonardo」
企業がIoTをはじめとする新規ビジネスに取り組む際、必要な環境を統合的に提供するサービス/コンセプト。デザインシンキングに基づくビジネスモデル策定支援から、実際のツールまでを提供します
※図2
台風通過後の状況を予測した画面(一部)
中央のバーを左右にスライドさせることで、台風通過後の川の状況や土砂崩れの状況などを、通過前の状況と比較しなから確認できます
※図3
SAP Leonardoで実現するコネクテッドエアポート
車両情報のリアルタイム化や資産の機械学習などを使用して、空港内の混雑状況や周辺のプロセスフローを最適化しスタッフの配置転換や増員といった対策を打つことも容易になります