「人材の見える化」が見せてくれるもの 第2回 – 見える化の意義・目的を考える
作成者:籔本 レオ 投稿日:2018年3月28日
こんにちは。SAPジャパンの籔本レオです。「守りの人事から攻めの人事へ」というテーマで人事領域に関連するトレンドや考え方を紹介しています。
今回のテーマは「人材DBの構築」です。第1回では人材DBを有効活用するには、
・人材DB構築の意義・目的を明確にし、活用イメージをもった上で検討・構築を進めること
・人材DBで定義したデータについて、精度・鮮度高い状態で管理され続ける状態をつくること
が重要であることを述べさせていただきました。
第2回では意義・目的の整理の仕方や、活用イメージをもっていただくための参考となる考え方を紹介します。
(第1回はこちら)
人材DB構築の意義・目的
意義・目的がないのに人材DBを検討・構築しはじめることなんてあるのか、と思う方もいるかもしれませんが、そのようなことは、、、
「あります!」
経営層から「人材DBをを作るべし」という言葉だけ降りてきてとにかく検討しなければいけないという状況、当初は何かしらの目的があったものの検討を進めているうちにさまざまな目的が混ざってきてよくわからなくなってしまったが構築することだけは検討し続ける状況などが実際にあり、まったく何も考えていないということはないようですが、意義・目的がうまく整理できていないことはよくあります。
意義・目的が明確であれば問題ありませんが、上記のような状況であったり、関係者によって認識が異なりそうという場合は、以下のトップダウン型とボトムアップ型のアプローチを参考にしていただき、意義・目的を再整理していただくことが望ましいです。
トップダウンアプローチは、中期経営計画、事業戦略等から人事・人材戦略(またはIT戦略)を策定し、これらの戦略を実行するための施策として人材DB構築が必要とされるといったものです。グローバルキーポジション管理、グループ横串での人材管理、グローバルモビリティなどの施策と合わせて検討されることが多いです。
ボトムアップアプローチは、現状の業務課題の解決や業務改善のために人材DB構築が必要とされるといったものです。グループ全体のヘッドカウントの早期把握、人材情報が必要となるたびに各担当からExcelファイルを収集してまとめるようなレポート作成作業の効率化などのために検討されることが多いです。
戦略的な観点からはトップダウンアプローチで検討することが望ましいのですが、短期的に現実的な効果をねらうという点ではボトムアップアプローチも重要であり、両者を組み合わせた目的の整理がされる場合もあります。その場合、さまざまな立場の視点での目的があることになり、中には相反するものもありますので、検討の軸とすべき主要な目的と、当該目的よりは優先度が下がるが考慮すべき副次的な目的に整理しておく必要があります。
活用イメージ
意義・目的が整理されたらその目的の実現のために人材DBが活用されているイメージを考えます。どのような時に、どんな人がどのようなデータを使ってどのようなことをするのか、そうするとどうなるのか。現状プロセスのIT化であればなんとなく想像つくかもしれませんが、新しいことを始めようとしている場合は活用イメージを想像することはかんたんではありません。ここでは活用イメージを持っていただくために、「誰が使うか」、「どのような情報をもつか」という点での考え方を紹介します。
「誰が使うか」
人材情報は社内でも機密性が高く扱われるもので、かつては人事だけが見ることができる情報でしたが、上司による人材マネジメント・人材育成の推進、従業員に対する人事情報の透明性確保などの考え方が出てくるようになり、人材DB、人事システムについても、さまざまな関係者が使用するようになってきました。また、人事においても、人事機能の戦略部門化、HRビジネスパートナーモデルの導入などにより、日々の業務を効率よく回すためだけでなく、人事戦略の推進やビジネスへの貢献のためにも使われるようになってきました。以下は役割ごとの活用例になります。こちらを参考に誰にどこまで使わせる、権限移譲する、といったことを考えてみるのもよいと思います。
「どのような情報をもつか」
人材DBの活用イメージができた後は、そのためにどのようなデータを管理すべきかを考えます。管理データの範囲としては、
1) 対象人材の範囲
2) データ項目の範囲
3) データ履歴の範囲
の3軸で整理すると考えやすいかと思います。
「3) データ履歴の範囲」については、履歴保持期間が長い方が望ましいですが、現在の人材DBの仕組みでは履歴保持期間がコストやパフォーマンスに影響を与えることはあまりないため、過去データをどこまで移行するか(できるか)、といったことを検討します。
「1) 対象人材の範囲」、「2) データ項目の範囲」については以下のような整理ができます。
1) 対象人材の範囲
対象とすべき人材の範囲はデータ管理の目的によって変わります。経営レベルポジションの後継者管理ということであれば経営層、上位管理職層だけの管理でよいかもしれませんし、給与計算業務で使用するインプットデータとするのであればパート・アルバイトまで含めた直接雇用の従業員全体が管理対象となります。また、トータルワークフォース管理(直接雇用従業員に限定しない広義の人員・人件費管理)ということであれば、派遣社員などの間接雇用の従業員まで含めた方がよいかもしれません。また、リージョン・国、関連会社、事業部門、職種などにより管理有無、管理対象範囲が異なる場合もありますので、従業員の属性ごとに管理要否を考えることが重要です。
2) データ項目の範囲
データ項目については、存在するものをすべて入れておけばデータ活用において不足することはない、と思うかもしれませんが、データ生成、入力・更新のプロセスの設計及びその運用にかかる負荷、セキュリティ視点でのデータ管理などもあわせて考えておく必要があるため、人材に関するデータをとにかくなんでも溜めておき、かつ、それが品質高く維持されるという状態を作ることはかんたんではありません。
以下はデータの分類の一例ですが、データ管理の目的を明確にした上で、分類ごとにどのようにデータを管理していくか、活用するか、ということを考えておくと、データ項目の定義がしやすくなります。
第2回では、「人材の見える化」にあたっての、意義・目的の整理の仕方や、活用イメージをもっていただくための参考となる考え方を紹介させていただきました。次回は人材DBで定義したデータについて、精度・鮮度高い状態で管理され続ける状態をつくるための考え方を紹介したいと思います。
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