多様な「人財」の発掘と育成を実現する – 三菱地所株式会社の人事システム変革


「働き方改革」に注目が集まる昨今、従来の人事給与管理を超えて、将来を見据えた人財情報活用へと踏み出す企業が増えています。東京・丸の内を基点にオフィスや商業施設等の開発、賃貸、運営管理を手がける総合デベロッパーの三菱地所は、2018年1月の本社移転を機にオフィス環境改革と制度改革を推進。さらに、国内グループ約40社を統括する人事給与システムとタレント管理ソリューションの導入により、将来の経営を支える人財活用をシステム面からも変えようとしています。

新たな価値を創出し続けるオフィス

三菱地所は2018年3月期~2020年3月期の中期経営計画において、変革のための共通テーマとして、グループの強みを活かした拡大再生産、経営資源の徹底的な有効活用、意思決定の質とスピードの向上を掲げています。人事面でも、グループ経営の進化/効率化とダイバーシティを促進する人事制度の整備、生産性の向上につながる「働き方改革」とワークプレイスの刷新、個々の社員が有する知見や情報ネットワークを組織の強みに昇華する仕組み作りを推進しています。

その一環として設置した社長直轄の「働き方改革推進委員会」を通じて、生産性の向上による新たな価値創造の実現に乗り出しました。さらに、本社オフィス移転に伴い「新たな価値を創出し続けるオフィス」の実現に向けて、業務環境と制度の改革に着手。同社のオフィス自体がショールームとなって、次世代オフィス環境のあり方を顧客に提案できる、非常に画期的な空間が作られています。

新オフィスでは最先端の指紋認証テクノロジーによる入室/キャッシュレス決済システムを採用。また、従来の固定座席を廃止して部署単位の緩やかなフリーアドレスを導入し、各部の部長を含めた社員全員がローテーブル、ハイテーブル、大机、個別机など多様な席で働けるようになりました。同時にペーパーレスも徹底し、移転前と比べて紙の資料を7割削減しています。一方で、社内全体のコミュニケーションの活性化を図るべく、オフィス内の随所に共用スペースを整備。作業に集中できるブースや知識のインプットのための「ライブラリ」、人財交流とアイデア創出を促すゾーン、さらには仮眠スペースまで多様な環境を用意しています。さらに社員食堂とワークプレイスを兼ねたカフェテリアを新設し、ビジネスに「食」がもたらす新たな可能性も模索しています。

オフィス内共用スペース「ライブラリ」

オフィス内共用スペース「ライブラリ」

制度面では社員の生産性の向上に向けてテレワーク制度を本格導入し、自宅、サテライトオフィス、カフェなどでも勤務ができるようになりました。社内外からアクセスが可能なネットワーク環境を整備し、Web会議システムや社内チャットなども導入しています。さらにフレックスタイムに加えて1時間単位で年次有給休暇が取得できる時間単位有給休暇制度を導入し、育児中や介護中の社員でも柔軟に働く時間が選べるようにしました。

人財育成についても17年ぶりに制度を改め、「志ある人」「現場力・仕事力のある人」「誠実・公正である人」「組織で戦える人」「変革を起こす人」の5つを備えた、人物本位の階層別研修や能力開発プログラムを実施。アジア圏へのビジネス展開を目的に、グローバル人財の育成にも力を注いでいます。

業務の標準化に向けグループ全体で人事給与システムを統合

三菱地所株式会社 人事部長 相川雅人 氏
これまで三菱地所グループ各社では、人事給与システムを個別に運用していました。人事給与の管理業務はシェアードサービス会社(メック・ヒューマンリソース)が担っていますが、各社の業務特性により管理プロセスは少しずつ異なっているため、個々のやり方に対応する必要がありました。そこで本社の人事給与システムの更改に合わせて、グループ全体で人事システムを統合して業務の標準化を図るとともに、タレントマネジメントソリューションまでを視野に入れたシステムの導入を決断。「グループ全体で生産性を高めて収益体質の改善を図りながら、情報連携を強化して適材適所の人財配置を実現していきます」と、人事部長の相川雅人氏は語ります。

新システムには、ユーザーインターフェースのわかりやすさ、将来の拡張性、導入/移行への支援体制などを評価してSAP ERP HCMとタレントマネジメントのSAP SuccessFactorsを採用。現在は三菱地所本体に導入中で、2018年秋の本稼動を予定しています。「本社と主要グループ会社の業務を基準にシステムと管理業務のテンプレートを作成し、それをベースにグループ各社に展開していきます」と、人事部 専任部長 給与・厚生・働き方改革推進ユニット ユニットリーダーの安達憲瑞氏は語ります。最終的には2020年頃を目処に日本国内の連結対象子会社約40社への展開を終える計画です。

事業モデルの革新に向けてSAP SuccessFactorsでタレントを発掘

三菱地所は長年、丸の内エリアのオフィススペース「EGG JAPAN(日本創生ビレッジ)」に国内外の成長企業を多数誘致するなど、企業活動を支援してきました。さらに日本最大級のビジネス支援施設「グローバルビジネスハブ東京」、FinTechに取り組む企業のためのコワーキングスペース「FINOLAB(フィノラボ)」なども運営しており、ベンチャー企業と三菱地所が共同で新規事業の創造を目指す「Corporate Accelerator Program」も主催してベンチャー企業に資金や技術を提供しています。

さらに2018年4月には丸の内エリアをはじめとする各エリアにおいて、国内外のスタートアップ企業や成長企業との共創を促進するための「xTECH(クロステック)営業部」を新設し、ビジネスチャンスの拡大に向けた取り組みを開始。世界のイノベーション拠点としての丸の内エリアの魅力を発信していくことを目指しています。
三菱地所株式会社人事部 専任部長 給与・厚生・働き方改革推進ユニットユニットリーダー 安達 憲瑞 氏
このような取り組みに携わる人材を支援するためにも、三菱地所グループではSAP ERP HCMに人事給与管理業務を集約し、グループ社員の労働時間を一元的に管理しながら36(サブロク)協定の遵守を徹底し、KPIをベースに各種の人事施策に反映していく予定です。SAP SuccessFactorsについては2020年のグループ展開に向けて、約8,600人のグループ社員のプロファイルを一元化し、今後の要員計画、後任者計画、キャリア開発、採用管理などにも活用していく構えです。

さらに、SAP SuccessFactorsによるタレントマネジメントには、中期経営計画で掲げている「事業モデル革新」への貢献が期待されています。例えば、インバウンド観光需要の掘り起こしや、丸の内エリアの魅力を高めるための新事業の創出などの計画が明らかになっています。また、2018年4月に新設する「ホテル・空港事業グループ」により、リゾートホテル開発や地方空港の運営を受託する空港運営事業への取組みを強化する方針も打ち出しています。

「空港事業や、国内外のスタートアップ企業との共創などの新しいビジネスを推進していくには、従来の概念にとらわれず、多様な人財を採用、育成していく必要があります。人事交流も含めたキャリアパス形成において、グループ横断型のタレントマネジメントの検討を進める意義は大きいと考えています」と安達氏は語ります。

さらなる働き方改革と人事戦略について、「新オフィスや人事制度は完成形ではなく、進化形として捉えています。今後も環境整備と社員の能力開発に向けて、トライアル&エラーで改革を進めていきます」と、相川氏は継続的な変化への意欲を強調しました。