「人材の見える化」が見せてくれるもの 第3回 – 人材データベースを腐らせない方法


こんにちは。SAPジャパンの籔本レオです。「守りの人事から攻めの人事へ」というテーマで人事領域に関連するトレンドや考え方を紹介しています。
今回のテーマは「人材DBの構築」です。第1回では人材DBを有効活用するには、
・人材DB構築の意義・目的を明確にし、活用イメージをもった上で検討・構築を進めること
・人材DBで定義したデータについて、精度・鮮度高い状態で管理され続ける状態をつくること
が重要であること、第2回では、意義・目的の整理の仕方や、活用イメージをもっていただくための参考となる考え方を紹介させていただきました。
第3回では、人材DBで定義したデータについて、精度・鮮度高い状態で管理され続ける状態をつくるための参考となる考え方を紹介します。

(第1回はこちら)
(第2回はこちら)

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絵に描いた餅ではないが、腐った餅

「人材の見える化」の意義・目的が定義されており、具体的な活用イメージができ、管理すべきデータが定義されている場合でも、そもそもデータが活用できる状態でなければ意味がありません。人材DBを構築した時点では、そのタイミングに合わせてデータ移行をしているのでデータがきれいな状態になっていると思いますが、そこから1か月、半年、1年とたっていくと予定どおりデータが入力されない、更新されないといったことが起こりはじめ、データの精度・鮮度が低下します。

 

人材DBが腐り始めます。

腐り始めたことは気づきにくく、その間にも腐敗は進んでいくので、気づいた頃にはデータ活用できない状態になっていることもあります。一度腐った部分はそのままでは回復しません。そして、腐ったことがエンドユーザー(人事担当者、現場マネージャーなど)に認識されると人材DBは活用されなくなり、活用されなくなるとさらに悪化するという悪循環に陥ります。多少腐っていても気にせず使う、腐っていない範囲で使うという対応をとることもできますが、当初の活用イメージの実現からは遠ざかっていることでしょう。人材DBの活用がうまくいっていない会社の中には、データを入れる箱が悪かったということで人材DBを再構築する例もありますが、何も対策せず再構築してもお金と時間がかかるだけで同じ結果になってしまう可能性が高いです。このような状態を避けるためには、人材DBの管理対象となるデータがそれぞれどのように生成されるのかを理解し、それらがデータ精度・鮮度を維持できるプロセスとなっていることを確認することが重要です。

 

人材データの作られ方

人材データ生成のパータンは大きく以下のように分類できます。

パターン1:特に何もしなくても自動的にデータが生成され人材DBに蓄積される

パターン2: 業務・イベントによりデータが生成され人材DBに蓄積される(業務をまわすために必然的にデータが生成・管理されるプロセスとなっている)

パターン3:業務・イベントによりデータが生成されるが、人材DBへのデータ入力は必然的ではない

パターン4:従業員個人が持っている情報であり、従業員本人の意思がなければデータが生成されない

それぞれのパターンの特徴と人材DB活用のためのポイントを紹介します。

 

パターン1:特に何もしなくても自動的にデータが生成され人材DBに蓄積される

特に業務やデータ入力作業を行わなくても自動的にデータが生成されるパターンです。カードリーダーでオフィスのドアロック解除を行う場合に生成される入退室ログ、システムを使用した時のログイン履歴などが該当します。また、最近では人事領域におけるIoT活用ということで、ウェアラブル端末で運動量、健康状態などを測り、関連データを自動生成するものも出てきています。
このパターンではデータがリアルタイムで自動生成されるため、基本的に精度・鮮度に問題はないのですが、人材DBとは別の専用端末でデータ生成されることが多いため、データ連携をする場合は精度・鮮度を落とさないように注意する必要があります。

 

パターン2:業務・イベントによりデータが生成され人材DBに蓄積される(業務をまわすために必然的にデータが生成・管理されるプロセスとなっている)

業務・イベントの作業・手続きを進めることによりデータが生成され、かつ、人事システム(人材DB)にそのデータが蓄積される、つまり、プロセスを進めるためにデータ生成・蓄積のステップを必ずとおるというパターンです。給与計算業務での給与計算結果、入社、異動、退職などの手続き業務における発令データなどが該当します。
このパターンではデータ生成のステップをとばしてプロセスを進めることはできないため、業務が適切に遂行されれば正しいデータが生成されますが、業務自体は人が行うものですので、データを手入力する部分、人がシステムを操作する部分でミスなく各作業が行われていることの確認、ミスが起こるリスクに対して対応策を立てておくことが重要です。また、データ鮮度という点では、データ生成のタイミングは業務に依存することから、関連業務が行われるタイミングを把握したうえでデータが適切なタイミングで生成されているかを確認し、必要に応じて業務を見直すことが重要です。

 

パターン3:業務・イベントによりデータが生成されるが、人材DBへのデータ入力は必然的ではない

業務・イベントの作業・手続きを進めることによりデータが生成されるものの、システム外での作業であるなど人材DBとつながっていないことで、誰かがデータ入力をしなければデータが蓄積されないというパターンです。Excelや紙で管理している目標管理・評価シートや、研修担当が個別管理している研修受講履歴のデータなどが該当します。
このパターンでは、データ入力の元ネタは存在するものの、業務遂行上データ入力が必須ではないことから適切な管理がされていないため、業務とデータ入力・蓄積がつながったプロセス設計をすることが重要です。また、データ化の作業負荷がかかるという理由で適切にデータ管理がされていないことも多いですが、プロセス設計においてはデータ入力にできるだけ作業負荷がかからないようにすることも重要です。目標管理、年次評価、研修管理といった人事領域の一般的な業務については、ITシステムの活用によりプロセスの遂行とデータ生成・蓄積をつなげ、パターン2の状態にする事例が多くあります。

 

パターン4:従業員個人が持っている情報であり、従業員本人の意思がなければデータが生成されない

従業員自身のこと、彼らが考えていることなど、従業員個人は情報を保持しているものの 業務上データ入力が必須ではなく、本人の意思がなければデータ入力されることがないというパターンです。 従業員本人のスキル・経験、取得資格、異動希望、キャリア目標などが該当します。
人材DBの検討にあたって、経営者や人事の考えとしては、 従業員のさまざまな情報を管理しておくことで適材適所が実現されるということをイメージしていることが多いのですが、 人材DB構築時点ではまだ従業員が満足するような情報活用がされていないこと、 そもそも「適材適所」=「従業員が満足する人事配置」ではないため、 従業員に自身の情報や想いを自発的・積極的に入力・更新させるほどのモチベーションを持たせることは容易ではありません。

このパターンのデータを適切に管理していくアプローチとして大きく2つあります。

 

4-1) データが活用されていることを見せる

従業員による自発的なデータ入力・更新が進まない主な理由は、「(従業員にとって)データを入れても何も変わらない(と思われている)」ということです。 ですので、「データを入れると何かが変わる」状態を作ることで従業員の意識を変えていきます。 適材適所や人材発掘が目的なのであれば、人材DBで管理されているデータをもとに人材配置、選抜などの実例を作ります。 人材DBの活用が進んでいない状態であれば、人材DBのデータだけでなく、人事やマネ―ジャの頭の中にある従業員の適性・評判を優先して考えたくなるかもしれませんが、 その優先順序が変わらない限り人材DBの活用は進みません。また、現在人材DBでは管理していないがどうしても考慮に入れるべき情報が他にあるのだとすれば、それは人材DBで管理すべきデータということですので管理データを追加することも検討します。さらに、実例については社内のニュースレターでの紹介など、従業員にデータ活用がされていることが伝わる取組も合わせて実施することが望ましいです。

 

4-2) 半強制的にデータ入力させる

会社都合重視の適材適所など、必ずしも従業員がうれしいこととならない場合、データ活用の実例から従業員の意識が変わっていくことを待ちきれない場合などは、半強制的に実施させることの検討も必要です。 人材DB稼働直後に操作マニュアルや動画を配布して、自身の情報を入力してくださいとアナウンスを出す例もありますが、 強制力のないアナウンスでは実施率が低かったり、アナウンスされた時しか実施されないということもあります。従業員の自発的な入力が望ましい人材DBにとってあまり良い方法には見えないかもしれませんが、実施率を上司のKPIとして各組織で取り組ませる、年次評価などの従業員にとって対応必須のプロセスの中に情報入力・更新作業を組み込んでしまうなどの例もあります。ある程度強制的な取り組みとすることでデータが蓄積されてきますが、そのデータがうまく活用されれば、その後は強制力を弱めてもデータ入力・更新を定着させることができるかもしれません。

 

データ生成のパターン

人材DBのデータ品質(精度・鮮度)を高く保つには、データの生成のされ方を理解した上で最適なプロセスを設計することが重要

 

人材データの精度・鮮度について、パターン1または2であると品質維持がしやすく、パターン3または4では品質維持がむずかしいことがおわかりいただけたと思います。そこで重要となるのが、データ品質を維持・向上するということを意識した上で、ITシステムの活用、データ生成プロセスの設計といった業務の見直しとなります。業務を見直すことにより、パターン1または2となるデータを増やすことができたり、パターン3または4であっても品質低下のリスクを抑えることができます。人材DB構築においては、人材DBそのものだけでなく、そこにデータが蓄積されるまでのプロセスも合わせて検討することをおすすめします。

以上、3回にわたって人材DBの構築についての考え方を紹介させていただきました。いかがでしたでしょうか。「守りの人事から攻めの人事へ」変わる参考となれば幸いです。

 

さて、このたび以下の要領により、来たる6月12日(火)に、「SAP HR Connect Tokyo 未来を切り開く人事 ~グローバル戦略とデジタルで描く針路~」を開催する運びとなりました。本セミナーでは、世界を相手にチャレンジされている日本企業の人事部門責任者の方をお招きし、ご経験や人事の打ち手を紹介いただく予定です。当日のプログラムの詳細及びイベントへの参加申し込みにつきましては、こちらのサイトをご覧ください。

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