SAP Leonardoにより進化するデジタル時代の財務経理組織の在り方と デジタルファイナンスプラットフォーム


多くの企業のCFO部門が、デジタルテクノロジーを活用し始めています。SAPジャパン株式会社、CFOソリューション推進室、シニアソリューションプリンシパルの中野浩志は、2018年3月13日に開催されたセミナー「SAP Finance Day 2018、CFO領域におけるデジタルテクノロジーの活用」の中で、SAPが実施した組織/人、ルール、業務プロセス、ITの「四位一体」のファイナンストランスフォーメーションを紹介。さらに、SAP Leonardoによる、ファイナンス領域における機械学習の活用について講演しました。

CFO組織を「ビジネスパートナー」に変える

SFD_Nakano

SAPは事業構造を大きく変革しています。2010年には売り上げの9割以上をERPが占めていました。しかしその後、M&Aにより構造変革を進め2015年はERPの割合は4割以下になっています。

M&Aによる事業構造変革が続く中で、ファイナンス部門は、多様な商習慣や文化を持つ事業に対し、適切なガバナンスを効かせて可視化しながら、オペレーションの最適化を推進することが求められるようになりました。

さらに、M&Aで加わった事業の多くはクラウド型なので、既存の売り切り型のERPとは課金のタイミング、収益の認識タイミング、回収方法や頻度などが大きく異なります。こうした変化に対し、コストを増やさず、柔軟に対応して事業貢献することが大きなテーマでした。

これは、ITだけでは解決できません。ITに加え、組織や人材、ルール、業務プロセスの4つを再定義しながら、CFO部門を事業に貢献できるビジネスパートナーにするためのトランスフォーメーションを進めました。

SFD_Nakano_01

以前のSAPグループは、グローバルで200以上の法人があり、それぞれに経理、財務、資金などの間接機能がありましたが、これらの機能を再配置。ビジネスを直接支援するファイナンス機能の「ファイナンスプランニング&分析」「案件サポート」「法務」は各法人に残しましたが、それ以外はすべてグローバル組織に本籍を移しました。そのうえで、定型的に処理できる業務については、シェアードサービスを通してサービスを提供。監査や税務のように、一定の専門性を伴った意思決定が必要な業務はCOE(core of expertise)として専門家がサービスを提供する形に変えました。M&Aで加わった会社も、ある程度の移行期間を経て間接業務はシェアードサービスに統合し、このサービスを利用することになります。

グローバルシェアードサービス組織を作り、地域シェアードサービスセンターに横串を通してみると、同じ会計処理でも地域によってやり方が大きく異なることがわかりました。そのため、地域軸ではなく、記帳からレポート、受注から回収など、エンドツーエンドでの業務プロセス軸で標準化・簡素化・自動化を推進しました。そのエンドツーエンドのプロセス単位の責任者として「グローバルプロセスオーナー」を設置し、地域横断でエンドツーエンド業務プロセスの標準化、簡素化、自動化の責任を負うようにしました。

こうした取り組みが功を奏し、例えば「受注から入金」のプロセスを見ると、2011年から2015年にかけて、M&Aなどにより取引の総量は26%増えましたが、コストは8%下がっています。売り上げが増えても、コストを抑え、収益を落とさない仕組みを作ることで、CFO部門がビジネスに貢献できています。

それぞれのプロセスには、品質を測るKPIと効率化を測るKPIを設定して可視化しています。KPIは、サービスを利用する法人と、シェアードサービスセンターの間で結ばれるSLA(サービス品質保証)にも記載されます。利用者側も、提供されるサービスの品質をモニターできるようになっています。

トランスフォーメーションを支えるSAP S/4HANA

SAPのトランスフォーメーションを支えているのが、次世代型ERPであるSAP S/4HANAです。これまでは、技術的な制約によって、取引を処理するシステムと、それを利活用するシステムを分けて持たざるを得ず、データの二重持ちや、タイムラグによる相互の誤差が発生することがありました。しかしSAP S/4HANAでは、テクノロジーの進化により、発生した取引明細データをそのまま使って多軸の分析ができるようになりました。

基幹情報システムに情報分析が完全に統合され、経営レベルのKPIからリアルタイムの明細データにまでドリルダウンして原因追求を行うことが可能になりました。地域や製品等分析したい軸を指定すると明細データから即時集計できるため、事前集計値の準備が必要なく、分析軸の変化にも柔軟に対応できます。損益計算書で異算値があっても、その場で明細までドリルダウンが可能です。

SFD_Nakano_02

さらに、SAP Digital Boardroomの活用で、会議のあり方も大きく変わりました。以前は会議があると、事前に資料を作ってそれを持ちより、資料の内容について疑問があっても、持ち帰って調査するしかありませんでした。しかしSAP Digital Boardroomは、明細即時集計型のダッシュボードなので、事前準備は不要ですし、疑問点があってもその場でドリルダウン調査が可能です。これらにより、意思決定が早くなりました。

機械学習が、スピードと正確性を向上

SAP S/4HANAに蓄積された明細データは、SAP Leonardoの機械学習で、さらに高度な活用を行っています。その一例が、年度着地予測の精緻化・早期化です。

これまでの着地予測は、各国のデータを順に集計するというボトムアップで算出していました。このため、時間がかかり、恣意性が入るなどして正確性に欠けていました。また、売り上げを左右するドライバーも分かりません。

機械学習の導入により、これらの課題が解消されました。昨年1年間、SAPの年度着地予測について、従来の積み上げによるボトムアップで出したものと、機械学習によるものでベンチマークを行ったところ、機械学習のほうが正確だったため、今年から機械学習をベースにしたものに切り替えています。

着地予測への機械学習導入は、コントローリング部門の役割の再定義にも繋がっています。現在の同部門の業務は、7割が集計などの業務で、3割が業績管理やビジネスパートナーとしての業務ですが、これを逆転させることを目指しています。着地予測や財務計画プロセスを簡素化・自動化することでデータ収集・集計等の単純作業を減らし、データサイエンティストやIT部門などと協力して予測モデルの質を上げ、これを事業部門に提供して意思決定に寄与する仕事にリソースシフトしています。

不正検知にも機械学習を活用しています。以前はERPから明細をダウンロードし、監査用のパソコンで不正検知プログラムを組み込んで夜間バッチを回し、翌朝その結果をチェックしていました。今は、SAP S/4HANA上で、不正検知のツールSAP Business Integrity Screeningを使って全件を常時モニタリングし、不正リスクのある取引を自動的にチェックしています。不正のパターンも、機械学習を使って精緻化を図っています。

銀行からの入金報告に基づき売掛金や未収金を消し込む入金処理も、SAP S/4HANAに蓄積された過去の入金消込パターンを機械学習させて入金と売掛金/未収金のマッチング提案を表示させるようにしています。SAP S/4HANAに蓄積されたデータをそのまま機械学習に利用し、機械学習した結果をSAP S/4HANAの日常業務プロセスにシームレスに組込める点がSAPの機械学習の特徴になります。マッチング提案の際、マッチングの正確性も合わせて表示されるため、正確性100%のものは自動消込み処理に繋げるなど段階的に入金処理業務自動化の範囲を広げることができます。

移行のアプローチはさまざま

新しいテクノロジーを活用する際には、将来のCFO部門のあるべき姿を描き、ロードマップを描いたうえで、ぜひ組織やプロセスの再定義も同時に推進していただきたいと思います。また、今の仕組みを一気に移そうとすると大変ですが、さまざまなアプローチがあります。例えば、今あるERPはそのままに、別途SAP S/4HANAを入れ、既存の明細データをそこにコピーしてグローバル経営管理・可視化基盤として利活用していくアプローチもあります。そして、既存ERPがシステム更改のタイミングになったら、徐々にSAP S/4HANAに移していきシステム統合と合わせてTCO削減やグローバルシェアードサービス化を推進していくのです。多くの大手企業で採られているアプローチです。

今皆様のビジネスを支えている基幹システムは導入当時の技術的制約を踏まえたベストな仕組みだと考えています。テクノロジーの進化で技術的制約がなくなった今、皆様のあるべき姿とそれを支える組織・ルール・プロセス・ITを再定義して施策を検討・推進する際、ここでお話ししたSAPの取組が少しでもお役に立てば幸いです。

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)