もうひとつの「ERP」 - ドローン・データ・IoTを使った野生動物の保護
作成者:横山 浩実 投稿日:2018年6月21日
SAPのERPといえば?
- 「人」「モノ」「金」を統合管理する業務用パッケージソフト(エンタープライズリソースプランニング)
- SCMやCRMもあわせたビジネススイート
- ECC6.0からSAP S/4HANAへ
どなたもそう理解されていると思います。でも・・・
実はSAPには、ビッグデータのリアルタイム性を生かしたもうひとつの「ERP」の話があります。本ブログでは、もう一つの「ERP」- ドローン・データ・IoTを使った野生動物の保護をご紹介します。
アフリカ南部では、1時間に4頭ものゾウが、そして、毎日3頭のサイが殺されている現実をご存知でしょうか?
この現実に危機感を感じて立ち上がったのがgroupelephant.comの参画企業であり、参画企業が出資して設立したNPO法人Elephants, Rhinos & People 、通称「ERP」です。
「営利目的を超え」ビジネスの力を集結させることが重要であると考えています。ゾウやサイを救い、同時に、それらの命を脅かしている農村地帯の貧困問題も解決したいと思っています。
— Johnathan Tager, CEO, groupelephant.com and Elephants, Rhinos & People (ERP)
貧困対策
密猟の要因の一つは農村地域の貧困です。サイを殺し、闇市場でその角を売りさばくことでしか生き抜くことができない農村地域の実態があります。そのため、ERPでは、20以上もの不動産開発やエコツーリズムなどのプロジェクトを立ち上げ、人々に生活する術を身につけさせています。また、そのひとつである養蜂ビジネスは、南アフリカの野生ゾウ保護区の防御壁としての役割も同時に果たすものとなっています。すなわち「人とゾウの共存」をするための手段としても機能しているのです。
密猟対策―――ERP Air Force
中長期の野生動物の生存戦略のためには、自らの意思で動き回る彼らを”攻めのアプローチで守る”ことが重要となります。
ERPでは、SAPのソリューション及びgroupelephant.comの参画企業の知見を活かして、次に紹介するようなミクロな情報をマクロで使う画期的なやり方で密猟対策を行っています。
保護区内のゾウはドローンによりその居場所を捕捉され、監視対象となります。密猟者の動きも同時に確認できるため、大きな抑止力として機能すると同時に、様々な証拠を得ることもできます。
また、一部のゾウにはGPSセンサーがつけられ、その移動状況がリアルタイムに確認できるようになっており、履歴がすべて記録されています。ゾウは水飲み場を求めて保護区の外に出てしまうことがしばしばありますが、保護区の境界に近づくとレンジャーに対し自動警告が発せられる仕組みとなっているため、即座にレンジャーはゾウを保護区内に戻すためのアクションをとることができるようになっているのです。さらには、蓄積されたビッグデータを用いた分析を通じ、適切な保護に向けた予防的な対策も採ることができるようにもなっています。
■成果
45,000エーカーの保護区内での密猟 | 0件 |
保護区内での密猟の未然防止 | 20件以上 |
直接的・間接的な受益者 | 50,000人 |
利用可能なデータ量が増大することで、動作パターンを決定するAI技術や予測分析機能を効果的に使うことができるようになります。それにより、資源をより効果的に使うことや、適切な予防措置をとることも可能になるのです。
— Quintin Smith, partner, groupelephant.com, and director of Elephants, Rhinos & People (ERP)
里山を追われた野生動物との共存
我が国では、里山の衰退に伴って鹿やイノシシ、サルなどの野生動物が山から下りて人の住む集落に出没し、農作物が被害にあう事例が増加しています。このような獣害防止のためには、ゾーニング(集落との境界に柵等を設ける)及び追い払いを行っていますが、賢い野生動物を抑え込む・追い払うのは非常に難しく、結果として、捕獲・狩猟による個体減らしをせざるを得ない状況にもなっています。
今後日本でも、ERPのケースのように、IoTとビッグデータを有効活用することで、野生動物の位置の把握や行動予測を行うことができれば、野生動物と人が共存できる環境が実現できるかもしれません。
社会課題解決に向けたSAPの取り組み
今後も、様々なビジネスの知見を使って、このような社会課題を解決するために、様々な取り組みを行いたいと思っています。
“人は、どうしてその仕事をするのでしょう?そして、なぜ生きるのでしょう?
私は少なからずこう思います。その目的は、私たちが見つけた場所の将来をよりよくすることであると”
— Quintin Smith, partner, groupelephant.com, and director of Elephants, Rhinos & People (ERP)