ベーリンガー・インゲルハイム:患者さんに正規の医薬品を届けるために


グローバル製薬企業トップ20のひとつであるドイツのベーリンガー・インゲルハイム社は、医薬品のシリアル番号を管理する法規制に対応、患者さんの手元に届くまでのさまざまなビジネスパートナーと連携するサプライチェーンプラットフォームを構築し、2017年夏に稼働させました。

スクリーンショット 2018-05-24 16.29.12

正規の医薬品とは、偽造薬とは

日本のように、製薬企業から患者までの、安全で強固な医薬サプライチェーンが確立された国に住んでいる私たちは、通常偽造薬という言葉そのものにほとんど馴染みがありません。

この私たちの状況は決して世界標準ではなく、偽造薬により命を落とす人は年間100万人に上るとのこと。既にグローバル視点では深刻な社会問題となっています。

こうした状況への対策として、諸外国では、法規制により二次元バーコードによる製品のシリアル番号を政府や専門機関に報告することを義務付けています。幸い現在日本には偽造薬対応のシリアル番号管理要件はありませんが、海外でビジネス展開する日本の製薬企業様は対応が必要です。

さて、現在報告形態は国・地域によって大きく3つのタイプに分けられます。

  • トルコ、中国、アルゼンチン、インド、韓国、ブラジル、ロシアなど– 政府当局システムにシリアル番号を含む製品情報を登録。
  • EU – 当局システムに域内における流通の始めから終わりまでの医薬品包装の真正性と安全性を証するシリアル番号を含む製品情報を登録(2019年2月より発効)。
  • US – 当局システムにサプライチェーン全域におけるロット単位での医薬品販売単位(中箱)の受け渡し、受け取りに伴う所有権の移転について製品データを登録管理。ユニットレベルのトレーサビリティー管理は2023年11月より発効。

弊社では、国毎の発効時期を鑑みたソリューション開発ロードマップを策定、リリースしたソリューションのご導入をお決めくださったお客様の導入サポートを行なっています。

具体的なソリューションは、大きくふたつに分けています。製薬会社内部でのシリアル番号管理のためのSAP Advanced Track and Trace for Pharmaceutical (ATTP:緑)と、サプライチェーンネットワーク横断のシリアル番号連携のためのSAP Information Collaboration Hub for Life Sciences (ICH:青)です。

スクリーンショット 2018-06-11 11.14.32

ATTP概要

ATTPは製薬会社内でのシリアル番号管理ソリューションで、法規制に対応した以下の機能を実現しています。

  • 国別要件に準拠したレポーティング– 現在アルゼンチン、中国、EU、インド、韓国、トルコ、US要件をカバー、2018年Q2にロシア要件をカバー
  • SAP ERPマスターデータとの連携– 取引品目、ロケーション、ビジネスパートナー
  • ビジネスプロセス統合– ERPトランザクション、倉庫管理システム、パッケージングライン
  • グローバルシリアライゼーションリポジトリー– ERCISあるいはPMLイベントをキャプチャー、GS1標準をサポート
  • グローバルナンバープール– 包括的シリアル番号管理、番号範囲や個別シリアル番号の管理、シリアル番号ランダム化機能内臓
  • トラックアンドトレース– 取引品目/ ロット/ イベント/ 取引書類のシリアル化、当局やビジネスパートナーとのレポーティングメッセージなど

ATTPは2018年Q2時点で約70社の世界の医薬関連企業が採用しています。その中にはグローバルトップ30の製薬企業のうちの15社、USのトップ3のホールセラーのうち2社が含まれています。

ICH概要

ICHはATTPと連携し、パッケージ毎に発番したシリアル番号を医薬サプライチェーンにおけるビジネスパートナーとのメッセージ交換に含めることでコラボレーションを実現します。

医薬サプライチェーンのプレーヤーであるCMO(医薬品製造受託機関)、3PL、卸、顧客(医療機関・薬局等)は、製薬会社同様医療における重要な専門分野を担っており、俯瞰的にみるとほぼ既にプレーヤーは決まっています。平たくいえば、各製薬会社の取引先であるCMOや3PLはどこもほぼ同じです。ICHはその点に着目しました。要は、製薬会社様を含む各プレーヤーの方々にICHプラットフォームに一度参加していただければ関わるエンティティー全てと繋がることができるのです。”Connect ONCE – Share with All”がそれを簡潔に表しています。

初期の段階でこのICHプラットフォームに参加する意思をご表明いただいたのは13社。そのひとつがベーリンガー・インゲルハイム社で、動画によりその成果を発表しています。

なお、初期段階ではこのソリューションをPharma Networkと称していました。動画ではその呼称を使っていますが、2018年初めにリブランディングし、SAP Information Collaboration Hub for Life Sciencesが正式名称になりました。-> 動画はこちら:患者さんに正規の医薬品を

スクリーンショット 2018-05-29 13.52.28

すべてのステークホルダー間でPharma Networkを活用することで、偽のコピーではなく、必要な薬を患者が受け取っていることを保証する透明性が得られます

Andreas Henrich, IT Enabling Functions and Platform Services

Boehringer Ingelheim GmbH

導入により、正規の医薬品を患者さんに届けるだけではなく、新たなビジネスパートナーをネットワークに取り込む際のコストの削減や、SAPソリューション活用による各国法規制への迅速な対応を実現しました。

Pharma NetworkからSAP Information Collaboration Hub for Life Sciencesへのリブランディングは、単にシリアル番号交換に留まらず、デジタル化によって、ビジネスパートナーを含むライフサイエンス業界全体の各業務レイヤーにおけるネットワーク統合の意思の現れです。動画後半の「ビジネスプロセスや現在の品目フローの透明性をリアルタイムで大幅に高められることができるようになり、さらに機械学習やIoTといったビジネスにメリットをもたらす新しいテクノロジーにも検討できるようになりました」というコメントがそれを予感させます。

これからSAPがベーリンガー・インゲルハイム社だけでなく、ライフサイエンス業界全体のさらなる変革をお客様と一緒にこれを推し進めていけることを何より誇りに思います。

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、ベーリンガー・インゲルハイム社のレビューを受けたものではありません。