農作物病害との戦いにビッグデータで立ち向かう ~ ウォーターワッチ・コーペラティブの挑戦


世界的な飢餓の問題は複雑であり、世界の食糧供給に対する脅威として、人口増加、耕作地の喪失、水資源の先細り、気候変動などがあげられます。

これら現代のチャレンジだけではなく、農業に従事する人々にとって何世紀にもわたる「敵」がいました。農作物病害です。agri disease

害虫や病原体による農作物の損失は毎年数十億ドルもの損失となっています。

そこに最新の情報テクノロジーで古い敵との戦いの流れを有利にもっていくことができるのではないかと考えるイノベーターたちが現れました。

 

そのひとりであるアド・バスチアンセン氏はオランダに拠点を置くNPO法人ウォーターワッチ・コーペラティブの会長であり、農業のバリューチェーン全体に重要で利用可能な情報サービスを展開することが使命としています。「私たちは地球全体での食の安全に貢献したいと考えています」

農作物病害警報アプリ

そこから生み出されたのが農作物病害警報アプリです。農業従事者に彼らの農作物が危険に瀕していることを特定します。警報アプリは農業従事者のスマートフォンで利用でき、農作物の成長をモニタリングし、環境の変化を見つけ、農作物の種類ごとに特定の病害の危険性を分析できます。agri disease app

「とても複雑なアルゴリズムをシンプルに使ってもらうようにするのは大きなチャレンジです」とバスチアンセン氏は言うとおり、警報アプリはまさにそれを実現しています。

分析結果は直観的にわかる「交通信号」で表現されています。緑は脅威無し。黄色は特定の感染力の強い病原体が広がる脅威がある状態を示します。赤は差し迫った病害の脅威があり、直ちにアクションに移る必要があることを示します。

ユーザインタフェースの単純さが背景で使われている大量の情報のことを忘れさせます。この警報アプリは大量の地理空間データ、気象データ、農学データを収集し解析しています。衛星、ドローン、地表のセンサ、さらには農業従事者からのフィードバックをも情報源にする能力を備えています。農作物病害警報アプリは古くからあるこの問題をビッグデータアプローチによって解決しようとしています。このアプリはSAP SEを含む多くのパートナーの協力によって開発されています。特にSAP Cloud Platformのビッグデータ管理能力に大きく依存しています。

農業ビッグデータの威力

ウォーターワッチ・コーペラティブの警報アプリを利用したビッグデータの威力はすでに大きな成果をもたらしています。バスチアンセン氏によるとオランダに拠点を置くウォーターワッチ・コーペラティブの農作物病害が25%から40%削減でき、水・肥料・殺虫剤などの資源のより効果的な利用が可能になってきているとのことです。

バスチアンセン氏はおよそ70%の食糧は小規模な農業従事者により生産されているとして、費用的にも利用可能な警報アプリを作ることが重要であると言います。「農作物病害警報アプリの利用料を年1米ドルにしたいと考えています。5億人の農業従事者が彼らの農作物の正しい情報を得られるようになることを実現したいのです」

ウォーターワッチ・コーペラティブは小規模な農業従事者の生産性を高めるための新しいアプリを開発するパートナーを探しています。現在取り組んでいるプロジェクトには東アフリカのブルンジ共和国で土地質・天候条件・利用可能な種・市場の情報などから作付けする農作物を選定する支援をするものがあります。また、ベトナムではコーヒー農園で季節に応じた作業をデジタルカレンダーにしたアプリを提供しています。

戦いの流れの変化

農作物病害の影響は非常に大きいものです。ひとつの例を出せば、ウガンダの報道によると一つの病害によるバナナの被害額は年で2億99百万6千ドルにもなり、そのバナナの生産にかかわるウガンダ人は13百万人もいるのです。

農作物病害と戦う効果的な方法を見つけ生産高を増やすことは小規模な農業従事者の収入を守り、より持続可能な世界の食糧供給を実現することになるのです。

アド・バスチアンセン氏は指摘します。「農作物の生産高を増やしたいなら、より優れた種子を使い最新の農作業機器を使えるでしょう。しかし、正しい情報を適切なタイミングで利用することでも生産高は増やすことが可能なのです」

ウォーターウォッチ コーポラティブ:SAPとの協業による農業従事者への農作物病害警告アプリ提供 動画はこちら

これらのウォーターワッチ・コーペラティブの取組は SAP Innovation Award 2018 を獲得しました。  (参照:https://www.sap.com/bin/sapdxc/inm/attachment.19630/pitch-deck.pdf )

ウォーターワッチ・コーペラティブのホームページはこちら https://waterwatchcooperative.com/

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、ウォーターワッチ・コーペラティブのレビューを受けたものではありません。