中東から世界へ、最先端の保険プラットフォーム作りを目指すエルセコの挑戦


損害保険の歴史、現代、そして未来へ

起源は諸説あるようですが、古代ギリシャ時代の海上貿易と共に海上保険へと発展したと言われています。その後、17世紀のロンドン大火を契機に海から陸へ、世界初の火災保険会社が登場し。その際、過去の火災発生率や建物の数から保険料を算出するという近代的な損害保険の原型が作られたと言われています。

現代生活において我々の日常に浸透している自動車保険、火災保険、地震保険を筆頭に、様々なニーズに応じた個人向け傷害保険からペット保険などの少額短期保険まで広がっています。そして、企業向けには、事業活動を取り巻く様々なリスクに対応するための賠償責任保険が提供されています。

そして、すでに様々な社会活動の中でデジタル渦が押し寄せています。その中でも日本の損害保険大手の収支の半分以上を占めている自動車保険においては、日進月歩で自動運転技術開発が行われており、新規参入も含め市場競争は国を関係なく加熱しています。早晩、現在の自動車保険は関しては大きな変化に見舞われることになると多くの市場関係者が予想しています。

また、ウーバライゼーション(Uberization)という造語まで生まれたシェアリングエコノミー社会から生まれる新たなサービス、流通形態への迅速な対応が必要になることでしょう。今後加速するデジタル化社会、さらなるIT技術の革新、新エネルギー革新がもたらす新たなリスクと新たな保険ニーズへの対応はすでに始まっているのです。

SAPは保険会社のデジタルトランスフォーメーションを積極的に支援

新たなリスク、市場ニーズに適切なタイミングで対応しようと保険会社各社もデジタル変革の取り組みを進め、より個人の嗜好やライフスタイル、企業に対しても今まで以上に複雑で詳細化された商品提供をしようとすると、現在のような業務プロセスごとに分断され、個々の顧客に紐づいた情報管理が容易に実現できない旧来システムでの準備対応には、そもそもの限界、対応するにしても相当な時間とコストが掛ってしまうことでしょう。

そこで、保険会社のデジタルトランスフォーメーションを支えるソリューションとしてSAPは、SAP for Insurance、SAP HANAプラットフォームを中心にエンド・ツー・エンドで保険会社のデジタル化を支援できるよう開発投資をしています。SAPが保険会社へ提供しているコア製品は、新規契約、契約管理、保険金支払、請求、会計、リスク管理、資産運用などのあらゆる保険業務を包括的に管理支援できる業界唯一の製品であり、従来多く存在していた契約主体の管理体系から、商品や顧客などのあらゆる軸で、すべてのデータを横断的に管理できるようになります。また、インメモリープラットフォームSAP HANAをベースにすることで、データはリアルタイムで把握可能になります。提供形態もオンプレミス型とクラウド型を用意しており、すでに世界中の大手保険会社、中小、新規参入業者を問わず利用が拡大しています。

さらに、ミュンヘン再保険社などでは、企業向け自然災害保険においてSAPが欧州宇宙機関(ESA)と共同で取り組むEarth Observation Analysisサービスの膨大な衛星データを活用し、森林火災に関わるコストやリスクの正確な算定と、今後予想される火災についての新たなインサイトを得ることを始めています。ミュンヘン再保険社の取り組み 参考動画はこちら

中東から世界へ、最先端の保険プラットフォーム作りを目指すエルセコの挑戦

Space Shuttle launch

Space Shuttle launch

ドバイ、アラブ首長国連邦のドバイ国際金融センター(DIFC)に本社を置き、ロンドン、パリ、ワシントンDCにも拠点を構え世界70以上の保険グループによって支持され、宇宙、航空、エネルギー保険のハイテク保険クラスの市場リーダーとして高い評価を受けている新興企業のエルセコがSAPをデジタルトランスフォーメンション実現のパートナーと選定し、中東から世界最先端の保険プラットフォーム作りに挑戦しています。

エルセコは将来の保険の革新を保険契約に結びつけることを約束し、スケーラブルでオープンなテクノロジー・プラットフォームを通じ新たな機会を受け入れ、既存および将来の会員および直接保険顧客を支援するために継続投資を決断しました。

この革新的なプラットフォームは、ATOMという呼称が付けられています。ATOMは、効率的な引受業務と低いランニングコストを提供しますので、結果として以下のようなメリットを提供します。

  • 代理人、顧客および保険会社が参加可能な保険のeコマース・エクスチェンジ環境を実現
  • 保険料をエンド・ツー・エンドで自動的に処理し請求処理までをシームレスにサポート
  • ビッグデータ活用を促進
  • 予測分析および人工知能によるインテリジェンスやインサイトの提供
  • 効率的なシステム・リソースのプーリングにより、適正な運用をサポート

また、以下のような高度なシステム利便性も提供可能となります。

  • SAP HANAのインメモリ技術により、リスク価格設定とセレクションの同時更新を実現
  • APIベースのプラットフォームにより、エルセコの会員メンバー保険会社は、ポートフォリオ、パフォーマンス分析、およびボルドロ・レポート(明細書)へリアルタイムにアクセスを提供
  • プロセスフローに組み込まれたコンプライアンスが、異なるクラスのユーザー、ライセンスの制御、制裁、制限、リスク増加などへの監視も可能に
  • SAP Hybris Billing(請求管理)と予測分析のビッグデータを組み合わせることで、大量の保険商品ラインを対象とした独自のプライシングモデルを迅速に開発

 

ドバイ国際金融センター当局のSalmaan Jafferyは、「エルセコがドバイ国際金融センターの本社からの新しいパートナーシップと成長機会に着手するのは非常にエキサイティングです。 これはまさに、私たちがこの地域の金融の未来を牽引するコミットメントを引き続き提供することで、会員企業の目標達成ができるようにすることを目指しているのです。イノベーションとテクノロジーの分野は引き続き重要です。革新的で柔軟性のある金融サービス・ソリューションの需要が増え続けている中で、特にInsurTechと航空業界については非常に期待しています。」と述べました。

日本の保険会社にも予測不能な「VUCA*時代」を想定し、日本発の商品開発などに挑戦願いたい

*VUCA:Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字

今や世界的プラットフォーマーとしての揺ぎ無い地位を獲得したネット社会の覇者たちが主導する時代に突入している現実。彼らが虎視眈々と金融サービスへの参入も目論んでいる事実。それらに対応するための各社の戦略に合わせた様々な支援をSAPは世界の保険会社と共に共創、実行しています。日本の保険会社においても新時代に対応すべきアンダーライティング機能(保険の引き受けた支払い査定機能)の高度化、最先端解析技術の活用研究などに取り組まれている事例も出てきていますが、基本的には現業支援、現業効率化の延長が主な取り組みかと思われます。

最後に、日本の保険会社においても予測不能な不安定な時代でも迅速に対応できるシステムの備えはもちろん取り組まれると思われますが、さらに日本ならではのチャレンジ、日本発の新保険サービスの開発やプラットフォーム作りなどにも期待したいものです。例えば、地震大国の日本ならではの新地震リスク計量モデルの開発などで世界をリードするなど。実は、SAPも地震計測では有名な白山工業と組んで「my震度」という取り組みに挑んでいます。これは、現在の高価かつ設置場所が限定されている地震計で取得される地面の揺れを測る地震計測データよりも密度を上げ、スマートホンなどを端末として活用し、ビルやマンション、商業施設、戸建毎などの地点別地震データを収集するデジタルプラットフォームです。ここから提供される詳細なエリア別地点データを元にパーソナライズされたカスタム地震保険の開発などを日本発で共同開発、共創などができないものかと考えております。

※本稿は公開情報をもとに筆者が構成したものであり、elseco Limitedのレビューを受けたものではありません。

出典:ATOM©, the “most advanced insurance platform in the world” is being co-developed by elseco and SAP