ファッション業界のトランスフォーメーション     ~デザイナーがリアルタイムに消費者につながる~

作成者:熊谷 安希子 投稿日:2018年6月21日

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ファッションショーに参加した人ならご存じかもしれませんが、最近は、スマホでショーのライブ配信やコレクションのお気に入り登録、ソーシャル投稿、購入など様々なことができます。

fashion

アメリカのラグジュアリーブランドのバッジェリーミシュカ (Badgley Mischka)は、2018年2月のニューヨークのファッションウィーク *1  で、ランウェイのモバイルアプリをお披露目しました。

  • ニューヨークファッションウィークは、スマホを禁止するデザイナーもいる中、招待客はまだ限られているので、多くの観客の反応をとることが難しい状況でした。実際の反応は6か月後の小売からのフィードバックと遅い中、InstagramやTwitterのようなソーシャルメディアが、多くの人にショーの最前席を提供してくれます。
  • アプリは、流行を作る人の手元にスタイルや商品を見せるだけではなく、”いいね!”や”超いいね!”の機能でデザイナーがコレクションのフィードバックを簡単にリアルタイムに知ることができ、次のデザインのヒントや生産量の決定に役立てることができます。
  • Apple×SAPによって、SAP Cloud Platform SDK for iOSで開発され、無料でアップルストアからダウンロード可能です。

The Badgley Mischka/ SAP app

 

ファッション業界は、サプライチェーンのリードタイムが長く、コレクションから市場に商品が提供されるまで約半年かかり消費者の反応が取りづらいため、トレンドの予測も難しく在庫の問題を抱えています。
また、ファッションウィークでは限られた観客しか参加できないため、多くの反応を拾うことができませんでした。

 

バッジェリーミシュカは、SAPとのデザインシンキングワークショップ *2 を通じて、観客の手元に直接ランウェイショーを提供するモバイルアプリを作りました。

モデルの衣装にビーコンをつけることで、観客はモデルがランウェイを歩いている時にリアルタイムに衣装の情報をモバイルデバイスで見ることができ、”いいね!”や”超いいね!”など好きなスタイルに投票することができるようになります。 すべてのデータはバックステージのデザイナーにライブで中継され、ショーの後、観客の投票のデータによって、どの生地をどれだけ発注するか、どれを店頭へ押し出していくか、どのタイプを今後もデザインし続けるべきかなど の決定に役立てています。

“バイヤー―やプレス、ブロガーなど、ショーの来場客はファッション業界における意思決定者です 。6か月待って小売からの最終フィードバックを聞かなくても、どう思って いるのか今聞くことができるのです。”

“そこから得られる情報は、営業と生産に役立てます。私たちは今もデザインしたいものをデザインしており、顧客と市場に耳を傾けていますが、それと同時に当社の営業プロセスと製造プロセスを合理化する予定です.”(ジェームス ミシュカ)

なんと15分のショーの間に、アプリが600以上ダウンロードされ、17か国の179人から1,396の”いいね!”が得られました。

 

*Fashion Runwayのデジタル化 (2分18秒)

 

バッジェリーミシュカは消費者と今まで以上のかかわり方をしています。

”今見て、今買う” (お気に入りに登録)というモデルが、ファッションの伝統的なランウェイから店頭に商品が並ぶまでの6か月間を破壊していくこととなるでしょう。

 

ファッション×テクノロジーによって、いかにデザイナーが消費者のニーズを早く理解し、商品を早く提供できるかが課題です。

未来のファッションウィークでは、顔認証技術でショーの間の観客の反応を読み取り、機械学習のアルゴリズムを通して、それぞれの感情を把握することができるでしょう。また、写真やビデオ、ハッシュタグの投稿を集め、どのショーでどんなカラーが最も人気があり、いいね!がついたかなど、すぐにデザイナーにフィードバックをすることができるようになると思います。

遠い未来ではなく、少しだけ先の未来で。

遠い国での出来事、雑誌の中の出来事だと思っていたことが指先で目の前で起こるなんてワクワクしますね。

 

 

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、バッジェリーミシュカ(Badgley Mischka)のレビューを受けたものではありません


*1 ファッションウィーク
新作発表会や展示会などのファッションショーのうち、特に約1週間にわたって開催されるもの。デザイナーやブランドなどが最新作をランウェイと呼ばれるステージで披露し、バイヤーやメディアが最新の流行に関する情報を入手する機会で、そのシーズンの流行が発信されるイベント。有名なのは世界4都市(ミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドン)で開催されるファッションウィーク。(Wikipedia)

*2 デザインシンキングワークショップ
デザインシンキングとは、デザイナーがデザインをする際に行っていた考え方で、イノベーションを起こすための方法論。SAPでは、新しい問題解決のための手法としてビジネスにも取り入れられており、このデザインシンキングを活用し、ユーザに共感して課題を再定義し解決を行っていくワークショップを提供しています。

■ バッジェリーミシュカ
バッジェリー・ミシュカは、ゴージャスなドレスやリッチなライフスタイルを提案するブランドで、マドンナ、ジェニファー・ロペス、サラ・ジェシカ・パーカー、ケイト・ウィンスレット、ケイティ・ペリーなど多くのセレブのレッドカーペットを飾るブランドとしても知られている。ドレス以外に、ブライダル、靴、バッグ、ジュエリーなどのアイテムに展開。ビバリーヒルズとパームビーチに直営店、バーグドルフグッドマン、ニーマンマーカス、サックスフィフスアベニューなどの高級百貨店で販売されている。

■ バッジェリーミシュカのアプリダウンロード(App Store)
Badgley Mischka Runway by SAP

■ ニューヨークファッションウィークとは?
http://nyfw.com/

■ Vogue記事
https://www.vogue.com/fashion-shows/fall-2018-ready-to-wear/badgley-mischka

■ SAPプレスリリース
SAP and Badgley Mischka Introduce the Badgley Mischka Runway Mobile App by SAP for New York Fashion Week: The Shows

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