あなただけの1足を簡単に手に入れる~Fashion Industryに見るAIの活用~
作成者:熊谷 安希子 投稿日:2018年12月6日
AI(人工知能)はファッションの世界でも接客や需要予測などに活用され始めています。
前回のブログ(ブラを試着する時間はない⁉ サイズと好みのデジタル化)では、自分にあったサイズを簡単に見つけるためのデジタル活用を書きましたが、今回は究極のパーソラナライゼーション マスカスタマイゼーション のお話しです。
サイズや自分に合ったものがなかなか見つからない物の中に下着や靴、スーツなどがあげられます。カスタムオーダだとサイズは合うが、高い、時間がかかる、流行のデザインが選べないという難点がありますが、AIなど最新技術を使うことで究極の1足を簡単に手に入れることができるようになりました。
カスタムオーダデザインにAIの活用
中国成都市の靴製造メーカー アイミキ(Aimiqi)は、市場の要求やファッションの変化に対応し新しい顧客体験を作るため、機械学習をデザインフェーズに導入しました。以前はデザイン企画のたった5%しか生産フェーズに到達せず、かなりの過剰在庫があり無駄になっていたのです。
デザイナーは、様々なアルゴリズムをベースに機械学習エンジンによって作られた靴モデルを使って、市場のニーズを見て企画デザインを始めます。
お客様は、オンラインや店舗で新たにデザインされた靴をみて、3Dスキャナで自動計測した完ぺきなフィットサイズとスタイル・カラーを選択し、VR(バーチャルリアリティー)で靴を履いているかのような試着をし注文することができるようになりました。しかも手ごろな値段で、1週間で商品を手にすることができるのです。
AI活用の効果
SNSに投稿された画像などの膨大なデータを集積・分析、消費者の好みやトレンド予測をし、ブランドの特性も加味しながら新しいデザインを作り出すことは、一部の“センスのあるデザイナー”にしかできない仕事でした。素材や色、パーツの組み合わせで、シーズンのマスへの“正解”を導き出すことは、AIにはたやすいことでしょう。
Amazon.comも遂にAIデザイナーを生み出そうとしています。ターゲットは、マスに向けた万人受けのデザインですが、徹底的な生産管理とオートメーション化によって低価格化が実現されるとなれば、同じターゲットを相手に中小規模なファッションECは破壊されていくかもしれません。
ランウェイにAmazon AIブランドが登場する日もそう遠くないかもしれませんね。
ZOZOでも、スーツや下着、靴のカスタムオーダが出てくる予定ですが、自動採寸とその商品のフィットするサイズは学習したデータ量によるでしょうし、”魅力的”なデザイン性のあるものがどこまで実現できるかがカギになるでしょう。
その他AI活用領域
顧客接点においては、すでにコマースサイトやアプリで実現されており店舗の人手不足解消、オムニチャネルにおける一貫したサービスの提供のために活用されています。
- 日々蓄積される大量のスナップ写真や動画データから、どのファッションがおしゃれか、流行かを判断する ファッショントレンド予測
- 人による直感的アドバイスではなく、多くのデータをもとにした客観的なアドバイスで、専属スタイリストのようにユーザーの好みや傾向に沿ってアイテムやコーディネートをサジェストする リコメンデーション
- ボット・音声コミュニケーション
また、顧客の顔や洋服、店内での行動から「どういうタイプの顧客が、店舗内でどのような行動をしているか」というような 店舗の顧客動向分析に活用されたり、需要予測やマーチャンダイジングの効率化で実績を上げている企業もあります。
ITの導入が遅れていると言われているファッション業界においても、AIをビジネスに取り込むことで、業務が効率化し人間にしかできないクリエイティブかつテーラードのサービスの提供に時間を費やせるようになります。
特に労働人口の少なくなるこれから期待できるものです。また、顧客に寄り添った新しい買い物体験の提供は顧客満足度の向上にもつながります。ファッション業界のAI活用に今後も目が離せません。
※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、アイミキ(Aimiqi)のレビューを受けたものではありません