コンチネンタル – SAP Vehicle Insightsを活用してライブビジネスを可能に


社会とクルマ

クルマというのは不思議なもので、他のあらゆる世の中の製品と比べて、特段、社会との関わりで語られてきたし、また、今も語られ続けています。ポジティブな語りとして、曰く、所有は社会的ステータスや成功のシンボルであったり(いつかは〇〇〇〇)、若者を高揚させる走る喜びであったり、あるいは、人やモノを自由に移動させる重要なインフラだったりします。一方で、ネガティブな語りとして、交通戦争を引き起こした代物、環境破壊の元凶などと社会的非難の対象になってきました。そして、今、クルマの「周縁」で、「クルマに関わること」で何かを起こそうという動きが注目されるようになってきました。それは、「社会の側からの新しい、当然の働きかけ」なのか、クルマの周りに群がることで「何か新しい儲けを企てるもの」なのか、今はまだ判然としません。社会とクルマは、ポジとネガと周縁で関わるなんだかよく分からないモノの三つ巴で、複雑な関係性を呈しているように見えます。

クルマが社会の中で重要な(善くも悪しくも)位置を占めるようになってきたのは1960年代だと思います。しかしながら、位置に関係なく、当時「社会との関係で語られる」ということは一般的にはマスメディアで取り上げられることとほぼ同義でしたから、しばしばネガティブな要素ばかりにならざるを得ませんでした。所謂「走る凶器」と「排ガスをまき散らす」レッテルです。確かに1970年の交通事故死者は16,765人(厚生統計では21,535人)、交通戦争でした。1975年に排気ガス対策済みステッカーが普及するまで公的対策は実効的ではありませんでした。そこから、自動車メーカーが前面に立ち、裏では部品メーカーの支えがあって、安全と環境への対策が走り出します。

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クルマが社会に果たすべき約束=安全と環境

最近、CASEという括り方が割と広く使われるようになっています。C=Connected、A=Automated(最近SAE*でAutonomousといういい方はやめよう、ということになったようです)、S=Shared、E=Electricです(微妙に違う言い方もありますが)。うまいネーミングだと思います。響きがいい。しかし、CASEは目的ではありません。一種の流行語です。目的は、あくまで安全と環境です。そして安全と環境が目的であるのは、50年前から変わりません。(100年に一度時代なので、100年前からと言いたいところですが、ちょっとムリがあるかもしれません)目的は不易なので、手段のネーミングがCASEです。AとCは安全のための手段、EはHV、PHV/PHEV、FCVも含めて環境のための手段、というのが分かりやすいところです。Sはこじつければ環境のための、と言えるかもしれませんがちょっと苦しいと思います。Cは渋滞を制御できれば環境もあり、でしょうか。

SAE : Society of Automotive Engineers, 米国自動車技術会, 自動運転レベル定義を主導しています。

実は50年前(もっと前)から、CとAとEという手段は構想されていたと思います。目的がはっきりしていたので、手段のアイデアは出ます。具体的に実現する技術が存在しなかった、あるいは見つかっていなかった、ということです。そこからの長い長い文脈、つまりは技術革新の流れで、ここ最近、実現技術が奔出してきた、と見るのが現在の正当な状況認識です。(個人的には、1997年のHVが加速の嚆矢だったと思っています)

ここで、A=Automated、自動運転を例に、安全を実現するための社会的位置づけとコンセプトと技術の構造を俯瞰してみたいと思います。下図はひとつの構造的把握の例です。総指揮者は、基本、カーメーカーとしてよいと思います。B2C、B2S(Society)、B2G(Government)、B2L(Legal)の何れも前面に立たざるを得ないのはカーメーカーであるというのが社会的暗黙の了解だと解されるからです。

 

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あらゆる技術を結集して安全を実現するために、手段としてのAを組み立てていると思います。組み立てるために枠組み定義として「衝突前と後」「お抱え運転手(chauffeur)と守護天使(guardian)」そして「車外との調和」、考えればもっとあるかもしれません。

部品メーカーも自立的に、あるいは自律的に

社会との矢面に立つという文脈から、若干、垂直統合的に構造化してみましたが、文鎮型にもネットワーク型にも書き直せると思います。むしろネットワーク型の方が正鵠を射ているかもしません。

現実に、個々に見られる要素は既にカーメーカーの手の内にあるとは言えなくなっています。欧州ではもともと垂直統合とカーメーカーの「手の内化」は弱めだったと思いますが、日本のメーカーも手の内化を言う要素とそうでない要素を切り分けているように見えます。(垂直統合は会社間関係視点と一台のクルマへの技術収斂視点と分けて考えるべきだと思います)

コンチネンタル社のSAP Vehicle Insightsを活用したライブビジネス

 

ここに紹介しているコンチネンタル社のデジタルトランスフォーメーションのコンセプトは、同社の主にシャシー&セーフティー部門が自ら持ちうる全ての技術を結集し、クルマの中での主要価値を占めていく部分と、一方で、技術から得られる果実を「データ」というカタチに置き換えてクルマの外へ持ち出し、自らの責任で外部への循環利用、社会還元の実現を図る部分の両方を語っているところに表れていると思います。

このビデオでは語られていませんが、コンチネンタル社は「RVD」をRemote Vehicle Data platformと呼んでいるようです。D=Diagnosisとは敢えて言わずにDataとしているところに、単なる診断データのためのプラットフォームではなく、クルマのあらゆるデータのプラットフォームという位置づけと読み取ることができます。さらに、マルチ・ブランド・ヴィークルであると言っています。このことは、個々のクルマに最適に作り込まれたはずの技術データを、いったんプラットフォーム上に持ち出すや否やきわめて汎用性のあるデータとして活かすデザインがなされているということだと思います。

自社のクルマ(部品)の技術とSAP Vehicle Insightsプラットフォームの技術を融合させて、カーメーカーから独立しうるビジネス体系を構築する、というのは実に野心的な試みであると感嘆します。(この野心さが、2015年初頭にトヨタセーフティーセンスCの受注に成功した原動力だったのかと思うくらいです)もちろんデータ蓄積だけのプラットフォームではない、SAP技術の活用方法も語られています。機械学習、人工知能もです。一方で自らの手の内技術部分はキッチリと押さえているのが、下記の公表資料でも明らかにされています。

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まとめ

冒頭に、ポジでもネガでもない周縁部のよく分からない何か、と書きました。それは巷間デジタルトランスフォーメーションと言われながら、新興IT業界がクルマの周りで何をするつもりなのか、がよく分からない、というモヤっとしたものです。コンチネンタル社の事例はそれとは一線を画すものです。クルマの中核技術の一角を占めるポジションの会社が、SAP Vehicle Insightsというプラットフォームを活用してデジタルデータを社会の中に還元する、その意味では明らかに「安全」という最も重い目的に適った取り組みであると評価できると思います。