SAP TechDays 2018 セッションハイライト~データから付加価値を生み出す SAP HANAの戦略的活用術


SAP HANAと独自の理念を融合し、データの価値を高めたNTTコムウェアと川崎重工業の先進事例

グループを横断した情報分析や、業務プロセス間でのリアルタイムな情報共有といった情報活用は、多くの企業のIT戦略における重要なテーマです。5月に開催された「SAP TechDays 2018」では、SAP HANAをベースに情報プラットフォームを構築し、横串の情報活用で成果を上げているエヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社(以下、NTTコムウェア)、川崎重工業株式会社のキーマンが登壇し、その成功の秘訣について語りました。
企業グループの情報活用における課題として最近特に耳にするのが、グループ会社や事業部門ごとにサイロ化したシステムの統合方法に加え、システムごとに情報の粒度/精度が異なる、マスターデータが異なるといった、現場の情報活用の成果に直結する課題です。NTTコムウェアと川崎重工業は、SAP HANAをプラットフォームとしてグループ全体の情報活用の課題を解消し、さらに投資価値を高めようとしています。

SAP HANAのスケーラビリティを活用したNTTグループの情報見える化基盤
NTTコムウェア 取締役エンタープライズビジネス事業本部 ビジネスデザインソリューション部 部長の山本達哉氏は、「NTTグループで実現したグループ経営情報見える化基盤の構築」と題して、自社の取り組みを披露しました。NTTのシステム関連の構築及び管理・運営を担う組織としてスタートした同社は、現在もNTTグループのCIO補佐という位置付けでグループ全体のIT戦略の中心的な役割を担っています。
山本氏は「NTTは通信分野のビジネスで強みを発揮し、不動産事業やファイナンス事業、リース事業等多角化を進めてまいりました。更に、グローバル市場でM&Aを積極的に推し進めた結果、グループ会社は約1,000社の規模にまで拡大しています。この体制の中でお客様のニーズにワンストップで応えていくには、グループ会社間のシナジーを高めるためのIT基盤の共通化、オペレーションの高度化が最優先と考えました」と説明します。
そこで、同社はグループ経営の情報見える化基盤の構築に向けて、次の4つのポイントをプロジェクトの必須要件としました。

1. クラウドインテグレーション(効率的かつ柔軟なシステム構築)
短期間で効率的なシステムを構築し、将来のキャパシティ変更にも柔軟に対応するために、さまざまなクラウドサービスを組み合わせたインテグレーションを実施

2. SAP HANAの採用(将来まで見据えた基盤構築)
将来にわたって発生する膨大なデータ量に対応するため、プラットフォームとしての付加価値と高いスケーラビリティを備えたSAP HANAを採用

3. 認証・アクセス制御(安全性・利便性の確保)
グローバルを含めたグループ各社が利用し、機密性の高い情報をコンプライアンスを遵守して扱う見える化基盤のセキュリティを担保しつつ、利便性を確保する統合的な認証基盤を構築

4. コード標準化(各社のコード体系の統一)
連携される各社の情報は体系やフォーマットがそれぞれ異なるため、グループ共通コードを整備し、コードの標準化を実施。また、コードメンテナンスセンターにて日々変わるコード値の鮮度を維持

システムイメージ
SAP HANA採用の背景には、高いスケーラビリティに対する期待がありました。SAP HANAによってスケール的な制約はなくなり、インメモリーDBの異次元のスピードを獲得できるほか、データの整合性といった不安要素もなくなるためです。2015年に発表されたグループ中期経営戦略からスタートした情報活用基盤の構築はすでに完了し、今後はさらにデータの粒度や分析の高度化、グループ各社の利用拡大を図りながら、グローバルマネージメントのフレームワークとしての価値を高めていく考えです。
日本国内でも対応が始まっているGDPR(EU一般データ保護規則)はNTTグループにとっても喫緊の課題ですが、早い段階から欧州のグループ会社から課題提起があったため、既に個人情報やメールアドレスなど該当する情報を適切に流通できるスキームを構築しています。
NTTコムウェアでは、今後もSAP HANAをベースとした新たな情報基盤をデータドリブン経営に活かし、競争をキーワードにデザイン思考の方法論を取り入れるなどの進化を図りながら、さらに高レベルな経営の見える化に取り組んでいくといいます。

PLMの概念をバックボーンに独自のIoT施策を推進する川崎重工業
川崎重工業 技術開発本部 IT戦略・企画推進センター スマートプロセス推進部 基幹職の三島裕太郎氏からは、「SAP HANAを活用したアフターサービス情報共有基盤の高度化について」と題した発表が行われました。120年以上の歴史を持つ総合エンジニアリングメーカーである同社は、オートバイやジェットスキーなどのB2C事業のほか、船舶や航空宇宙といった業種業態の異なる6つのカンパニーの集合体となっており、グローバル93社、従業員約3.5万人を有しています。
あらゆる製造業が直面するIoTに関する課題認識は、同社にとっても非常に重要です。三島氏は「IoTを前提に、航空機、船舶、車両、また社内の生産設備、物流、人がつながる新たなビジネスモデルを模索しています。単に製品を売るだけでなく、IoTを介して生み出されるビッグデータ分析を通じて価値のある知見を発見し、いかにサービス向上につなげていけるかが課題です」と話します。
そこで同社が掲げる独自の概念とも言えるのが、IoTのバックボーンとしてのPLM(Product Lifecycle Management)です。IoTと言えば、一般的にCRMとの連携(営業活動で得た情報に加えて、インターネット上で発信されるフィードバックを管理し、マスカスタマイゼーションに対応)、MES、ERPとの連携(製造プロセスを可視化し、遅延やボトルネックといった問題点を早期に検知)といった活用が一般的ですが、同社はそれだけでは不十分と考えています。
川崎重工業におけるPLMの概念は、まず製品仕様の要求があり、それを実現するために機能分解、設計、製造、検査、出荷、アフターサービスといったプロセスで成り立ちます。これらのプロセスの中で、例えば仕様要求のプロセスをCRM(顧客の声)と連携する、また設計/製造のプロセスをERPやMESと連携することで、PLMをバックボーンとした独自のIoTが実現します。
同社は、IoTの実践において問題が発生した場合、それを前段階のプロセスにいかにフィードバックするかを重視しています。こうした観点において、SAP HANAはまさに最適な基盤と言えます。IoTやM2Mデータを活用した予知保全など、同じ障害が同製品で起こらないようにするための予防措置とともに、別の製品で同様の不具合の発生を防止するための横展開も可能です。これによりアフターサービスの高度化、顧客ロイヤルティの向上にもつながります。

システム構築事例
もう1つのポイントは、IT部門がサービスプロバイダーとしての役割に徹し、各カンパニーや子会社のニーズを先取りして最新のITを積極的に提供していることです。三島氏は「当社のビジネスの主役は、あくまでもカンパニーや子会社です。ITが目まぐるしい進化を遂げる一方で、現場にはそれをタイムリーに使いこなすだけの時間も人的リソースもありません。私たちIT部門はそれらをサービス化して、気軽に使える形で提供することで、高度なモノづくりに貢献していきます」と三島氏は語りました。

SAP HANAの活用に独自の理念を融合した2社の事例には、多くの製造業が課題としている、グループを横断した情報活用に不可欠なエッセンスが凝縮されています。SAPは今後も最新事例を交えて、SAP HANAがビジネスにもたらす価値やIT部門のあるべき姿について発信していきます。