SAP NOW展示 サプライチェーンマネジメント 拠点横断の在庫最適化と供給計画
作成者:斉藤 文徳 投稿日:2018年8月24日
SAP NOW におけるサプライチェーンマネジメント展示の振り返りの第2回をお届けします。第1回では事業計画と販売計画の立案と調整にあたって、経営とブランドマネージャーや販売・営業部門等の多数の関係者を連携し、数量・金額の両面から全社レベルで合意された計画作成の支援とその一環としての機械学習と統計手法を活用した需要予測の精度向上のソリューションを紹介しました。
(前回の記事はこちら: SAP NOW展示 次世代サプライチェーン -機械学習を活用した需要予測と金額・数量両面での事業・販売計画の最適化- )
今回はその販売計画を受けて、拠点横断の在庫最適化と能力や資材制約を考慮した需給調整・生産計画について説明とデモを行った展示内容について記載します。1つは目標とする最終顧客へのサービスレベルを維持した上で、生産や物流拠点、販社など拠点全体の在庫数量・コストを最適なレベルに抑えるSAP Integrated Business Planning(IBP)の在庫計画ソリューション。もう1つは今までERPとは別の仕組みが必要でしたが、SAP S/4HANAで1つのシステムとして組み込まれた有限能力での生産計画調整や時間単位での生産順序スケジュールによる供給最適化ソリューションです。
SAP Integrated Business Planning(IBP)の在庫計画機能の大きな特長は、製品とその構成品目、原材料等の多段階・多拠点で在庫を保持する場所の全体を横断して、目標とする顧客サービスレベルを達成するための在庫計算を実行できる点です。IBPは拠点を横断して最終的な顧客に対するサービスレベル目標の達成に必要な在庫数量と在庫コストを計算します。顧客へのサービスレベル維持と在庫コストの最適化を実現し、収益目標の達成を支援します。
例えば、以下の例にあるように、多段階・多拠点横断での在庫最適化により、トータルでの在庫保管コストを削減することができます。
拠点別の在庫計算の例:以下の図のように顧客へのサービスレベルを95%として販社は在庫計算をし、工場は工場で販社からの補充依頼を確実に満たせるように在庫計算をした場合、販社と工場のトータルの在庫保管金額は9,188,700円になります。
拠点横断の在庫最適化計算の例:一方で以下のように、顧客サービスレベルを同様に95%として販社と工場とを拠点横断で在庫最適化計算をした場合、販社の安全在庫数量は拠点別計算の時よりも増えますが、工場は販社に対して99%のサービスレベルを維持する必要はないという計算結果になります。工場側の在庫数量が大幅に削減されることによって、トータル在庫保管コストは8,543,100円になり、前述の単一拠点ごとに計算するよりもコストを削減することができます。
顧客へのサービスレベルを維持したまま、工場ー倉庫間などの内部サービスレベルを統計処理により最適計算することで各拠点の安全在庫が最適化され、拠点全体で在庫数量を削減することができるのです。
次に、SAP S/4HANAでは従来のERPとは別のシステムで行う必要があった有限負荷による生産計画調整・平準化、能力や部材に不足がある場合にどのオーダーに影響するかの把握、時間単位での生産順序計画(スケジュール)調整などが可能になっています。1つの仕組みでこれらを実行できることで、製造や調達、在庫の状況をよりリアルタイムに把握し計画調整を迅速に行えるとともに、マスタやシステムの設定・運用も効率化されています。
今回の例では販売、在庫計画数量の見直しに対して、供給計画数量を制約を考慮せずに全量を生産・供給する前提で再計算します(ヒューリスティック)。その結果、必要な能力量が通常の供給能力を超過するというアラートが発生します。アラートを確認し、生産能力オーバー分に対して設備稼働時間の延長や残業対応、生産の外部調達への切り替え、生産の前倒し、後ろ倒し等をサプライヤーの部材供給能力も考慮して調整し、供給計画の見直し案を確定します。サプライヤとの発注(需要)の見込みや確定数量、サプライヤの供給可能数量や納期などの情報共有はIBPとARIBA Networkとの標準連携を利用しインターネットを介して適宜、迅速に行うことができます。
以下の動画では、まず本社の生販統括の担当者が販売計画の変更を受けて生産能力の過負荷を確認し、残業による生産能力の増強での対応をシミュレートしたうえで工場の生産管理に結果を共有、対応の検討を依頼するデモの内容をご覧いただけます。
製販統括担当者から調整依頼を受けた工場の生産管理担当者は、アラートモニタで計画上の問題点を表示します。今回は、需給計画の見直しに伴い“Sapphire White Lotion 50”という製品において需要と供給のバランスが崩れていることを確認できます。
次に生産リソース別の能力負荷状況を時系列で表示し、いつ過負荷が発生しているかを確認します。リソースの稼働時間を考慮して作業日程を変更し作業負荷の平準化を行うことで、需要の増加に伴い発生した過負荷を解決します。本社の生販統括からの依頼は残業による生産増加の検討でしたが、工場生産管理側での調整の結果、生産を前倒しして対応することができました(以下の動画)。
またスケジューラを取り込んだことで、生産計画に対し生産進捗とのズレを早期に察知し、迅速に生産計画を見直すことが可能です。今回、部材の供給遅延を例にした生産計画の調整デモが以下の動画です。
原材料発注に対して各仕入先から受領した納期回答で当初納入予定と乖離ないか、ある場合はどの製品の生産計画に影響があるかを確認します。今回は「T_Case 03(化粧品ケース)」の納入が予定日より1日遅れる回答を仕入先から受けています。詳細な計画スケジュール画面を表示すると、部材がそろわないため予定していた作業開始日に生産をすることができない製造オーダーが明らかにわかります。ケースの納入遅延を資材制約として工程計画の再日程シミュレーションを行い、工程計画と納期への影響を調べます。
このようにSAP S/4HANAに組み込まれている生産計画/詳細日程計画(スケジューリング)では、従来は別のソリューションが必要だった製品のオーダーと部材の供給オーダーとの紐づけ(ペギング)をすることができるため、部材の供給遅延がどの製品需要に影響があるかがすぐにわかります。また生産能力や部材の供給等の制約を加味した生産計画の立案、最適化も支援します。(SAP S/4HANAの生産計画についてはこちらの「SAP S/4HANAで実現できる生産計画ソリューション」ブログもご参照ください。)
前回ご紹介した事業計画と連動した販売計画、このブログの前半の拠点を横断し製品から部材まで多段階の在庫最適化、後半に記載したオーダー間の紐つけや制約を考慮した生産計画・スケジューリングなど、全社やサプライヤ等も含む生販在を統合したソリューションを提供しています。コストを最適化しながら利益を生み出すサプライチェーンを実現します。
次回のブログでは、利益を生み出すために加えて必要となる要素、顧客・チャネルの優先度を考慮した需要への引当調整や物流についての展示内容をフィードバックします。
第3回:SAP NOW 展示 利益最大化のための販売戦略 -販社供給枠の管理、顧客優先度に基づく引当調整、効率的な輸配送-
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