経営的観点からみた調達購買の役割は社会に貢献し、価値を連鎖していくこと – SAP Ariba Live Tokyo 2018


間接購買をサポートするプラットフォームとして世界中で活用されているAriba Network.
SAP Aribaでビジネスの効率化や最適化以上に重視しているのは、世界中の企業間取引を拡張することです。

2018年8月1日に開催された「SAP Ariba Live」の基調講演/特別講演のセッションにおいて、SAPジャパン社長の福田譲は京都のチョコレート専門店Dari K(ダリケー)を例に、調達業務の可能性について語りました。Dari Kは、世界有数のカカオ豆生産国でありながら、商品としての品質に課題があり、競争力が劣っていたインドネシアのカカオ豆に着目。カカオ農家に生産方法や品質水準を示し、基準に合ったカカオ豆なら適正価格で買い取ると約束しました。つまり、カカオ豆の生産からチョコレートに仕上げるまでの行程を自らコントロールすることで、生産者が適正な評価を受けられ、商品価値も高める流通の仕組みを作ったのです。これこそが「価値の連鎖」であり、他社との差別化になります。新たな価値の連鎖をつなげることがブランドの向上や売上に貢献すると福田は強調しました。
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調達部門の役割は、CSRやCSVを理解して経営に働きかけること

続いて、「経営的観点からみた調達・購買の役割」と題して、社会的責任(CSR)や共有価値創造(CSV)に特化したコンサルティングサービスを提供する株式会社クレアン サステナビリティコンサルティンググループ グループマネージャーの玉沖貴子氏とSAPジャパンのAPJ COO Office バリューパートナーの小野寺富保が対談を行いました。

日本で調達業務というとコスト削減や支出統制が重視されがちですが、欧米や先進的企業の注目点は、CSRやCSVにシフトしています。調達におけるCSRとは、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)に準ずるもので、対応しないこと自体が企業のリスクに結びつきます。CSRは社会的要請と、企業価値の向上や競争力強化という戦略的側面を持っていますが、児童労働や強制労働など、新興国における人権リスクが強調されると、自社のビジネスとは遠い話と考える日本企業も少なくありません。しかし、東京オリンピックの開催もあって海外のNGOやメディアは、日本で働く外国人労働者の労働条件が適切かどうかを厳しくチェックし始めていると玉沖氏は指摘します。また、グローバル進出している日本企業はグローバル基準で投資家からCSRやCSVのリスクを評価されるため、もはや無関係とはいえない時代になっています。
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CSRやCSVへの取り組みは企業価値の向上にも有効です。コロンビア大学の調査では環境・社会・ガバナンス(ESG)に投資している企業は、競合と比べて5%の優位性があるという結果や、リスク低減している企業では資金調達が有利というエビデンスが得られています。また、ネスレは自社のPurpose(目的)を長期的な視点で見直し、食品メーカーを超えて「栄養を提供する企業」と再定義。業務と社会的価値を結びつけ、従業員のモチベーション向上につなげています。日本では伊藤園の「茶産地育成事業」があります。全国で茶農園が減少傾向にある中、同社は良質な茶葉を確保するために耕作放棄地の茶畑を買い取る条件で、新規農家の育成や技術提供を実施。このように調達は社会課題に直結することが多く、調達部門が企業のCSR経営、CSV経営に与える影響は大きいといえます。

SAP Aribaの活用は企業価値を最大化してリスクを最小化するプロセスを導入することであり、その根幹にはCSRやCSVの考え方があります。SAP Aribaでは、すべての商材の調達/購買を業務プロセスの中に落とし込み、リスク管理も含めてすべての国や地域で透明性を確保しながら調達/購買管理を一元的に提供。プロセスの中に抜けや漏れがあるとコスト軽減もリスク軽減も意味がなくなってしまうため、支出に関することをすべて可視化する必要があります。それは結果として経営に最大のメリットをもたらすことになると小野寺は語ります。SAP Aribaで業務プロセス、サプライヤーとの関係の可視化を重視しているのは、企業の経営リスクやダメージ回避にもつながるからです。

グローバル化が急速に進む中、自社のビジネスが国内外でネガティブな影響を与えていないかを見極めることも重要です。課題を解決することで、ポジティブな影響を未来に残していくことができます。玉沖氏は「現状を最前線で見ている調達部門には、CSRやCSVの考え方をいち早く理解して、経営全体にインパクトを与えて欲しいと思います」と語っています。


SAP Ariba導入によるコカ・コーラ調達部門の改革

最後に、コカ・コーラ社の前チーフプロキュアメントオフィサーのビル・ホビス氏が登壇し、SAP Ariba APJ RegionのSVP&GMジェイソン・ウォルフと対談を行いました。

第4次産業革命とともに、調達業務のテクノロジー活用にも変化が起きています。例えばERPとSAP AribaのデータをAIで分析して調達に関する洞察を得ている企業があります。また消費者は、食品や消費財の安全性、自分が買う製品がどう作られているかをより理解したいと思うようになっており、CSRや持続可能性など、社会的な問題への対処も求められます。SAP AribaでもSpend Analysisなどの分析ツールが増加し、あらゆる領域でテクノロジーが活用できるようになってきました。調達の役割は、モノがより簡単に購入できるようになることであり、そのためにもテクノロジーの活用は重要です。

コカ・コーラでホビス氏はSAP Aribaを採用して調達から支払までを一元的に変革しました。その際経営層に行った説得とは、優先順位の理解、ソリューションの解説とともに、分かる言葉で説明することだったといいます。調達はコスト削減の話になりがちですが、実際は生産性の向上のほうが重要です。サプライヤーとの取引を単なるコストと見るのではなく、共感できる形で訴えることが必要とホビス氏は示唆します。
1-3コカ・コーラにおけるSAP Ariba選択の決め手は、調達から支払までをエンドツーエンドで行えることにありました。また、200カ国で展開するビジネスに対応するには、言語の違いはもちろんのこと、税制の問題をクリアしなければなりません。さらにシステムはトレーニングに時間をかけず、誰もが直感的に使いこなせるというわかりやすさを重視。カスタマイズも最小限にして、ERPとシームレスに連携しました。コカ・コーラがSAP Aribaに求めたものは、どんな価値を得られるかということであり、システムを評価する際には価値を重視すべきとホビス氏は語ります。

SAP Ariba導入後、コカ・コーラの調達業務では特に人材面で変化が表れています。かつてはサプライヤーとの関係構築に長けた人が評価されましたが、現在はそれだけでなくツールを上手く使いこなす人が重視されています。さらに将来的にはAIや機械学習との共存が求められていくといいます。ホビス氏は、「ツールが進化した今、これまでできなかったことが可能になるため、今後10年は調達の黄金時代です。調達の責任者は、どんなツールが使えるかを見極め、リーダーとしてどのようなコミュニケーションが取れるかを考え、そしてそれを経営トップに説明する義務があります」と、これからの調達業務を担う人々に力強いメッセージを送りました。