CSRやCSVの観点から購買業務のあるべき姿を目指すJXTGエネルギー、日東電工、ライオンの挑戦 – SAP Ariba Live Tokyo 2018


日本ではコスト削減、支出統制が強調されがちな調達/購買業務ですが、欧米企業や先進的企業では「社会的責任(CSR)」や、地域の活性化や新たな産業を生み出し社会的なイノベーションを起こしていく「共有価値創造(CSV)」の観点から捉える動きが広がっています。SAPではこれらを“Procurement with Purpose”(目的意識/意義をもった調達)と呼び、企業の取り組みを支援しています。2018年8月1日に開催された「SAP Ariba Live」のカスタマーパネルでは、JXTGエネルギー、日東電工、ライオンの3社から調達業務に関わるキーマンが登壇し、CSRやCSVの観点から購買業務のあるべき姿について意見を交わしました。
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JXTGエネルギー:持続的なWin-Winのパートナーシップを構築

JXTGエネルギーは、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油が経営統合し、2017年に誕生したJXTGホールディングスの中核会社で、エネオス、エッソ、モービル、ゼネラルなどのブランドを展開しています。同社の購買部門では現在、持続的なコスト削減を実現する戦略部門としての役割を遂行しながら、CSR調達にも取り組んでいます。

以前からの取り組みはグリーン調達などに限られていたため、新生JXTGエネルギーではサプライヤーに対してCSR調達に向けた新たな説明会を開催し、本格的に生まれ変わることを表明。「サプライヤーと対話をしながら、一方通行にならない関係作りに努めています。長期的なパートナーシップ戦略では、持続性を意識してWin-Winの関係を築く必要があります」と、同社の執行役員 購買部長の染谷喜幸氏は語ります。今後は、クラウドベースのSAP Aribaを導入してシステムの陳腐化を防ぎ、グローバルのベストプラクティスを集約し、調達/購買プロセスを可視化することでコストを軽減し、社会への貢献につなげていく方針です。2-1

 (上 写真:JXTGエネルギー株式会社 執行役員 購買部長  染谷 喜幸氏 


日東電工:グローバル全体で集約化と効率化を推進

液晶ディスプレイ・有機ELディスプレイ等に使用される光学フィルム、粘着テープ、傷の治療に用いる医療用サージカルテープなどを手がけ、27カ国にあるグループ約100社でビジネスを展開する日東電工。コーポレート部門に属する調達統括部は、コスト削減だけでなくCSR、BCP(事業継続対策)、グリーン調達など、さまざまな環境変化に対処することをミッションとしています。

同社は2016年3月から、グローバル全体で業務改革を進めてきました。業務改革は人事、経理、ロジスティクスまでバックオフィス系の業務全体にわたり、調達部門もその中に含まれます。2017年6月に国内全拠点、同年10月から中国現法へのSAP Aribaを導入開始。現在は調達全体の3分の1を占める間接材を対象としていますが、最終的には直接材への展開も視野に入れています。

コーポレート部門である調達統括部 部長の西岡健夫氏は、「SAP Aribaの導入には可視化、ハイバリュー化、集約化の3つの戦略上の目的がありました。これは、コーポレート部門がグローバル全体を見渡しながら、集約化と効率化を一気に進めていくことを意味します。グローバル標準に業務をシフトさせることが前提ですが、実は従来のシステム変革に強く抵抗を示したのは日本でした。ただし、形を一度作ってしまえば日本ほど上手く回る国はありません。ここからが改革本番です。」と語ります。
2-2(上 写真:日東電工株式会社 調達統括部長 西岡 健夫 氏)

SAP Aribaを導入して約1年が経った現在、間接材に特化した調達通過率は従来と比べて30%程度向上し、可視化の効果が想定以上に現れています。購買部門はサプライヤー、社内、お客様をつなぐ重要な役割を担っています。ビジネスの最前線に関わる重要な任務としてSAP Aribaを活用しながら、売上拡大、健全経営、リスク軽減に貢献していきたいと西岡氏は話しています。


ライオン:マーケティング部門や広告部門から調達/購買業務を改革

オーラルケア、ビューティケア、薬品、ファブリックケア、リビングケア事業等を展開するライオンは、2030年に向けた新経営ビジョン「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を掲げ、「心と身体のヘルスケア」の実現を目指しています。

同社は、2018年9月のSAP Ariba稼動に向けて導入を進めています。その背景には業務改革がありました。ユニークなのは、まずはマーケティング部門や広告部門からのSAP Ariba導入が決まったことです。「旧来の調達手法が限界に近づきつつあったことから、グローバルのベストプラクティスを導入することで統制の強化と業務の負荷軽減を目指しています。人口減で国内の消費が減退傾向にある中、コストを削減しながら商品のクオリティを維持し、トップラインの伸長に貢献することが求められています」とコミュニケーションデザイン部 CXプランニング室 マネジャーの志水弘樹氏は語ります。
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(上 写真:ライオン株式会社 コミュニケーションデザイン部 CXプランニング室 マネジャー
志水 弘樹 氏)

同社では中期的観点から、デジタルマーケティングの台頭により複雑化を増す広告宣伝費のデータドリブンな支出検証を強化し、組織全体で適切で効果的なメディア購買やクリエイティブ業務の委託を促進していく方針です。SAP Aribaは、物品の調達・購買のみに留まらず、より複雑で広範なサービス購買や契約発注、予実管理等も実装しているため、業務分析および最適化に適したソリューションであると位置づけています。志水氏は以前外資系の輸入車販売会社のマーケティング部門で働いていた経験から、広告代理店の動きやサプライヤーとしての収益構造を理解していたことが、取引先へのリスペクトを持ちながら価格交渉をしていくことに役立っているといいます。調達もガバナンスの観点から、CSRやCSVを目指すには統制を強化することが必要です。

また、マーケティング/広告部門のスタッフには、代理店やサプライヤーをパートナーとして付き合うマインドセットが求められます。SAP Ariba導入も当初は業務改革の一環としてでしたが、実際はマインドセットの改革という面が大きいといいます。志水氏は「調達は、パートナーと対話をしながらCSRやCSVに貢献できる可能性を秘めています。今後データの力を使えば確実にその役割を果たすことができる魅力的な仕事になっていけるのではないでしょうか」と話しています。

CSRやCSVに基づいた調達は、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)に準拠し、SAPが提唱する“Procurement with Purpose”はSDGsを土台とするものです。SDGsの17番目の「パートナーシップで目標を達成しよう」という観点からも、長期的な持続性やWin-Winのパートナーシップ作りがますます重要になっています。