SAPクラウドERP導入事例 – SAP S/4HANA Cloudは企業が変革する“きっかけ”


株式会社アイ・ピー・エスは、創業以来20年以上にわたり顧客の基幹業務における業務品質を追求するためにSAP ERPシステムの導入、保守サービスを提供するプロフェッショナル集団です。同社は、自社の基幹系システムをいち早くSAP S/4HANA Cloudに移行しました。これは単にオンプレミスの基幹系システムをクラウド化する取り組みではありません。パブリッククラウドのSAP S/4HANA Cloudの活用は、企業そのものが変革するきっかけとなるものでした。

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SAP専業ベンダーとしての強み

アイ・ピー・エス 取締役営業本部 管掌 久下直彦氏アイ・ピー・エス代表取締役社長の渡邉 寛氏と取締役 営業本部管掌 久下直彦氏は、SAPが日本でビジネスを始めて間もない1994年ころにSAPのERPに出会いました。当時の日本では、会計や人事などの基幹系システムはもちろん、生産管理や販売管理システムなども独自開発するのが主流でした。

「生産管理や販売管理システムを大きな投資で構築しても、動かすまでに苦労したり動いても長くは利用できなかったりと課題がありました。対してSAPのERPを持ってくればすぐに使い始められ、さらに長く使い続けられる。これは良い製品だと思い、まずは受注プロジェクトとして顧客に提案しました。その後、SAPの良さをもっと伝える企業があるべきと考えアイ・ピー・エスを起業しました」(久下氏)

当時のSAP ERPは、大手企業が莫大な投資を行い導入するもの、という位置づけでした。動かすまでに手間と時間が必要で、かなり苦労するイメージがありました。とはいえ本来のパッケージ製品の良さをうまく引き出せば、開発リソースを十分に確保できない中堅規模の企業でも、素早く導入しメリットを享受できるはず。「会社を起業しビジネスを始めたら、すぐに契約して業務アプリケーションが使える。SAPならそれが実現できると考えました」と久下氏。

アイ・ピー・エスは1997年に創業して以来、一貫してSAPの導入、保守サービスのビジネスを展開しています。いくつものSAP導入案件を経験し、中小から中堅企業で迅速にSAP ERPを導入する独自の手法も確立しました。そのノウハウは「EasyOne」テンプレートとして提供しています。EasyOneテンプレートは同社だけでなくSIパートナーからOEMでも提供され、多くの企業におけるSAP ERP導入の迅速化や効率化に貢献しています。

「多くのベンダーでは、顧客の要望を聞きそれを満たすシステムをSAPでどう構築するかという従来型アプローチを取りがちです。そうするとSAPの上に多くの追加開発を行い、納期も長くなり品質的にも問題が出る。対してアイ・ピー・エスでは、SAP ERPを使い顧客業務をどうスムースに運用できるようにするか、それを実現するためのアプローチを取ります」(久下氏)

このアプローチの違いが、SAP導入に携わる他ベンダーとの違いです。そして同社がもう1つ拘っているのが、スピード。これは製品やサービスを顧客に提供する速さはもちろん、社内のさまざまな判断も迅速に行う。執行役員 事業開発部 部長 兼 営業本部 副本部長の赤松 洋氏は「業界動向をキャッチアップし、どこにどういった人、時間、お金を投資すべきかの判断を素早くできるようにしています」と言います。これはそれほど規模の大きくない独立系ベンダーだからこそできることで、そういったモチベーションを持つマネージメント層がリードしています。

SAP S/4HANA Cloudで企業は本来やるべきことに集中できるようになる

アイ・ピー・エスでは、専業ベンダーとして、全てとは言えないまでも、SAPが新たに出すサービスの多くを日本国内に、いち早く提案してきた自負があります。また、一部サービスにおいては導入支援だけでなく自社でも採用しており、運用のノウハウも持っています。SAP S/4HANA Cloudが発表された際には「SAPがパブリッククラウドのサービスを出すならば、これはいち早く採用し経験すべきと判断しました」と久下氏。自分たちで体験すれば、顧客にも安心して提案できるからです。

アイ・ピー・エスではSAP S/4HANA Cloudの提供が日本で決まってからすぐに導入検討を開始。2017年7月には最終的な契約を完了し、7月からの約3ヶ月で初期導入を終了しました。そこからは、以降のバージョンアップなども確認しながら検証と調整を行い、2018年1月から本格的に利用を開始しています。

当初はSAP S/4HANA Cloudの情報が、まだあまり揃っていませんでした。そのため、SAPの独本社と直接コミュニケーションが取れるパスを構築してもらったそうです。ここでのやりとりに時間がかかったことを除けば「SAP S/4HANA Cloudは、圧倒的な速さで導入できました」と久下氏は言います。

一方でアイ・ピー・エスがもっとも苦労したのが、今までの仕組みでやっていたことをどこまで諦めるかの判断でした。アイ・ピー・エスでは会社規模が小さかったこともあり、SAP ERPの会計システムではなく国産会計システムをベースに必要な機能を周辺で構築し利用していたのです。

「SAP S/4HANA Cloudの導入が終わってから改めて気付いたのですが、現場で行っている業務のやり方に正義を求めてはだめだと言うことです。たとえば『今まではこう作業をしていたから』ではなく、『本来四半期決算を早くするとはどういうことか』から考えます。SAP S/4HANA Cloudの活用では、改めてこれらを考え直すことになります」(久下氏)

アイ・ビー・エス 執行役員 事業開発部部長兼営業本部副本部長 赤松洋氏今回のSAP S/4HANA Cloudの導入に併せ、アイ・ピー・エスでは多くのビジネスプロセスを変えることとなります。それにより「プロセスはシンプル化し、会計処理で本来やらなければならないことに集中できるようになりました」と赤松氏。このシンプル化の実現で、感覚的には導入前と比べ会計処理にかかっていた時間の2割から3割は他の業務に割けるようになったと言います。

アイ・ピー・エスでは、次のステップでSAP Analytics Cloudの導入も行うことにしています。これはSAP S/4HANA Cloudを入れたからこそ効果を発揮するものです。

「日常的に30社ほどのSAP環境のサポートを行っています。プロジェクトごとの収益などを把握するだけでなく、リアルタイムに何が起こっているのか、今後どうなるかを予測したい。それがSAP S/4HANA CloudとSAP Analytics Cloudで可能となります」(久下氏)

基幹システムからデータを集めBIで分析しビジネスの判断を速くする。これは現在のビジネスにおいて、企業が成功するために必要な要素です。 現状は、人がこの業務に介在せざるをえませんが、SAP S/4HANA CloudとSAP Analytics Cloudを組み合わせれば、10年後にはこれもほとんど自動化するかもしれません。それを予感させるのが、SAP S/4HANA Cloudだと久下氏は指摘します。

またSAP S/4HANA Cloudの導入で、AIやRPAなどの新たな取り組みもやりやすくなります。人に依存してきた作業を無理矢理RPAで自動化するのではなく、シンプル化したことで情報の動きも把握しやすく、どのプロセスを自動化すると業務サイクルが速くなるかと言った観点でRPAに取り組めるのです。さらにSAP S/4HANA CloudにはAPIなど、外部システムとの連携の仕組みも揃っており、それもRPAなどの導入を容易にします。

SAP S/4HANA Cloudは、顧客はもちろんITベンダーのありようも変えるもの

アイ・ピー・エスでは、今回の導入をきっかけに社内技術者のマインドもスキルセットも変化しています。SAP専用のプログラミング言語「ABAP」だけの技術者はいなくなり、Web系システムの開発スキルも持つようになりました。さらにSAP S/4HANAの活用ではより業務領域の知識やスキルも必要となるので、そのための教育にも力を入れているとのことです。

さらに「我々のようなシステムインテグレーターは、ユーザー企業にたいしてSAP S/4 HANA Cloudを入れればこんなに良いことがあるという話ばかりしてはだめです」 と久下氏。顧客にはSAP S/4HANA Cloudをきっかけに会社を変える気持ちがあるかどうかを訊ねるべきで、その上でSAP S/4HANA Cloudの効果を引き出すために現場で断捨離をしてもらいます。「SAP S/4HANA Cloudは現場の要求通りに作るためのものではありません」とも語っています。

アイ・ピー・エスでは以前から、ERPパッケージで顧客の業務をどう効率的に運用できるようにするかを提案してきました。SAP S/4HANA Cloudはその究極の形を提案するものであり、結果的に企業変革の基となる。SAP S/4HANA Cloudをいつ導入するかは、顧客によってタイミングは異なるでしょう。SAPやアイ・ピー・エスで価値をきちんと提案していけば「必要なタイミングがきた企業から、自然とSAP S/4HANA Cloudが選ばれるようになるでしょう」と赤松氏は言います。

さらにSAP S/4HANA Cloudについて赤松氏はこうも続けます。「SAP S/4HANA Cloudを実際に利用して感じたことですが、SAP S/4HANA Cloudは我々提供パートナー、そしてユーザー企業の双方にとって、単なる新しいクラウド型のERP製品というだけにとどまりません。我々もSAP S/4HANA Cloud導入によって、ITが企業にもたらす価値というところを再認識させられました。これは基幹システムのあり方を根底から変革する可能性を秘めた製品だと考えています。そして今、強く感じているのは、我々の仕事が単なるインプリからお客様への価値の提供にシフトしていくという実感であり、顧客にどんな価値を提供できるかが今後は重要だということです」。SAP S/4HANA Cloudによりユーザー企業はIT運用の負担を軽減され、本来自分たちがやるべきことに集中できるようになります。そしてITベンダーは顧客に新たな価値を提供できるようになります。SAP S/4HANA Cloudはデジタル変革が叫ばれる今、ユーザー企業そしてITベンダーのありようを変える鍵と言えるでしょう。

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