ローソンがサプライチェーン刷新で中食商品の需給バランスを最適化―原材料の廃棄率を半分以下に削減


2018年8月2日に開催された「SAP NOW」。当日のセッションから、株式会社ローソン/株式会社SCIの、SAP Integrated Business Planningを活用した、コンビニエンスストアで販売する中食原材料の余剰発生率低減への取り組みをご紹介します。

サプライチェーン内の情報交換/共有の仕組みづくり

日本全国に約1万4,000店舗を展開している株式会社ローソン。同社は競合他社との差別化戦略として、「小商圏型の製造小売業」をうたい、サプライチェーン全体を自社で管理してお客様に安心を提供するための仕組みづくりを続けてきました。

同社がサプライチェーンの刷新に取り組む背景には、おにぎりや弁当など中食商品の需給バランスを最適化することで、原材料の廃棄を減らす狙いがあると、株式会社SCI 需給管理部 兼 株式会社ローソン 商品本部 グループマネージャーの小笠原大介氏は語ります。SCIは、ローソンのサプライチェーンを管理する100%出資の機能子会社です。

通常コンビニの中食商品は、原材料の仕入れや製造を外部のプレーヤー(協力会社)にアウトソーシングしています。このため従来は各プレーヤーがそれぞれ仕入れや生産計画を立てていますが、各社バラバラの需給予測では予実の精度が下がり、欠品や過剰在庫につながっています。

この課題解決には、各プレーヤーがお互いの需給を確認しながら、双方向で情報をやりとりする仕組みが不可欠です。そこで国内外のプレーヤーとローソン/SCIが情報を常に交換/共有することでサプライチェーン全体を可視化し、コントロールできる仕組みづくりが始まりました。

サプライチェーン全体を可視化できる仕組みづくり

関係者とのコミュニケーションの取りやすさでSAP IBPを選択

新しいサプライチェーン構築のソリューション選定にあたっては、複数のベンダーの製品が比較検討されました。その結果SAP Integrated Business Planning(以下SAP IBPと略称)を採用した理由として、小笠原氏は他のプレーヤーとのコミュニケーションがとりやすい点を挙げました。一気通貫のサプライチェーン管理の仕組みを作る一番の目的は、各プレーヤーとの情報交換や意思疎通を図ることにあったためです。

またSAP IBPは、ITリテラシーがさほど高くない現場の担当者でも簡単に使える操作性や、直感的なユーザーインターフェースを備えています。需給管理部門ではこれまでMicrosoft ExcelやAccessを使っていたため、それらのUIまでをカバーできるSAP IBPなら、システム刷新によるユーザーの負荷を最小化できると期待されました。

この他、小笠原氏が注目した機能に、ID付与による協業者とのデータ共有が可能な点がありました。新しいサプライチェーン上には国内外の協力会社も加わり、ローソン側とリアルタイムで情報共有を行います。SAP IBPではこうした外部の協力業者にもIDを発行し、システム上のデータを共有できる仕組みを提供しています。必要なプレーヤーが、適正に管理されたアクセス権限の下でセキュアにコミュニケーションできるのは非常に大きいと小笠原氏は評価します。

需給管理プロセス改善との相乗効果で廃棄率を大幅に低減

SAP IBPがもたらす改善点やメリットは数多くありますが、まず「サプライチェーンにかかわるプレーヤーの在庫の可視化が実現できること」があります。社内外や国内外を問わず、サプライチェーン上にある在庫をリアルタイムに把握できるため、次の工程や需要を見越した供給計画が可能になりました。この他に「データ取得先の統合」や「データ取得品質の安定」なども実現しています。

こうした一連の改善は、SAP IBP単独ではなく、並行して需給管理プロセスの高度化に取り組んだ成果です。その結果、買取中食原材料の処分(廃棄もしくは売却)率を56%低減。さらに廃棄等の処分リスクがある原材料保有数/保有高では、75%もの低減率を達成しています。

一方、SAP IBPの国内導入は第1号とあって、導入の過程では苦労もあったといいます。導入パートナーがユーザーの業務要件をどのようにSAP IBP上で表現してよいかがわからず、対応に迷うケースも珍しくありませんでした。そこでSCIのシステム部門やパートナーの担当者がSAPのトレーニングを受講したり、SAPのオンラインサービスシステム(OSS)へ問題を報告し、SAP国内営業担当者によるフォローアップを受けるなどの工夫を重ねました。技術的に高度な課題には、海外からSAPの開発系の担当者を招いてディスカッションしながら一つひとつ課題を乗り越えていったといいます。

ソリューションの機能を正しく業務プロセスに反映

今回のプロジェクトを振り返って小笠原氏は、たとえ業務ユーザーであっても、ソリューションの機能的特徴を詳しく理解することが必要だと語ります。機能を理解しているからこそ、自社の業務と照らし合わせて「ならば、こういうことが実現できそうだ」とのアイデアが生まれるからです。アイデアをもとに、既存業務のプロセスをどこまで維持するか、逆にどの部分ならば変更を受け入れられるかといったバランスを検討していくことが、実際に「使える」システムを実現する方法だと同氏は強調します。

小笠原氏はこれからSAP IBPを導入しようと考える企業に、2つのアドバイスがあるといいます。まず、ソリューションをもっとも深く理解しているSAPのコンサルタントによる開発/設計のアセスメントを、プロジェクトの早い段階で必ず1度は実施すること。もう1つは、SAP NOWのようなイベントに積極的に参加して、情報収集に励むこと。他社の事例などをいくつも聞く中で、さまざまな気づきを得ることができたといいます。

ローソン/SCIでは今後の展望として、いかに外部のプレーヤーにとって有効な形で情報を共有化できるかの検討を進め、最終的にトータルでサプライチェーンを管理できる体制を築きたいと考えています。
「外部のプレーヤーにデータ提供をお願いしても、その成果がきちんとフィードバックされなければ、しだいに関心を持たれなくなってしまいます。情報を提供してくれた方々にも、サプライチェーンに関わるメリットを明確に示せるかどうかが将来の発展を決めると考えています」と語り、小笠原氏はセッションを終えました。