金融ビジネスのアルゴリズムトレーディングを支えるリアルタイムデータ分析エンジン SAP Sybase ESP
作成者:SAP編集部 投稿日:2012年12月7日
今回は、ストリームデータをリアルタイムに分析するCEP:Complex Event Processing(複合イベント処理)ソリューション「SAP Sybase ESP」と、高速データ分析プラットフォーム「SAP Sybase RAP」でトレーディングシステムを構築した金融機関の事例をご紹介します。
前回までにご紹介した、「SAP Sybase IQ」を用いた静的なデータ分析によってビジネスのパフォーマンスを高めることに成功した事例は以下のとおりです。
株価の動向をリアルタイムで追跡
グローバル化が進み、日夜国境を越えた膨大な取引が行われる金融市場。この厳しい生存競争を制するため、すべての金融機関は市場のリスクを正確に測定しながら、膨大な取引データを短時間で処理する必要に迫られています。
三菱UFJファイナンシャル・グループの子会社で、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の海外証券業務と投資銀行取引業務を担当する三菱UFJセキュリティーズインターナショナル(MUSI)様も、同様の課題を抱える金融機関の1つでした。ロンドンを拠点とするMUSI様は、確定利付債、株式、デリバティブ、ストラクチャード・ファイナンスなどを専門領域とし、海外証券とデリバティブ取引を政府や中央銀行、民間金融機関などに提供しています。
ホールセールを中心とするMUSI様において、特定のルールに従ってシステムが自動的に売買注文を実行するアルゴリズムトレーディングは欠かせない取引です。しかし、アルゴリズムトレーディングを行うためには、リアルタイムにデータを分析してトレンドを予測し、想定する株価に合致した時点で瞬時にオーダーするシステムが必要です。そこでMUSI様は、売買ポジションをリアルタイムに把握するツールとして、SAPのリアルタイムデータ分析エンジン「SAP Sybase Event Stream Processor (ESP) 」と、高速データ分析プラットフォーム「SAP Sybase RAP」を導入しました。
SAP Sybase ESPは、大量の取引データを瞬時に処理するCEP(複合イベント処理)ソリューションで、流れてくるストリーミングデータを、データベースに格納することなくリアルタイムに分析します。SAP Sybase RAPは、直近のリアルタイムデータと、過去のデータが蓄積可能な金融機関向けのデータベースです。SAP Sybase ESPとSAP Sybase RAPの2つをあわせて導入することで、リアルタイムデータから過去の取引データまで、さまざまな時間軸で分析が実行可能になります。
MUSI様が、SAP Sybase ESPとSAP Sybase RAPを導入した主な目的は以下の3つです。
(1)価格変動の正確な予測
日本市場は、寄り付きからしばらく株価が上昇し、後場に向けて緩やかに下降していくのが一般的です。ところが24時間いつでも相場が開いている国際市場では、そのような考え方は通用しません。グローバル化が急速に進む中、日本市場も国際市場への対応が求められることは必至で、複雑な価格変動を正確に予測する必要がありました。
(2)裁定取引期間の特定
どのタイミングで売買すれば最大限の利ざやが得られるか、損失を最低限に食い止めることができるか、を正確に予測するためのリアルタイム分析ツールが必要不可欠でした。
(3)ヒストリカルデータの分析
アルゴリズムトレーディングにおいて、独自のアルゴリズムを作成するためには現在から過去までの膨大な履歴データを必要とします。傾向を短時間で分析するためには、気配値の上下データを差分データでなく、実データとしてデータベースに保存しておかなければなりません。そのためにも、短いスパンのリアルタイムデータと、一定時間が経過したヒストリカルデータの両方を効率的に保存するデータベースが求められました。
金融機関における多数の採用実績
新たなトレーディングシステムを構築するにあたり、MUSI様は複数のソリューション候補を絞り込み、約2週間かけてベンチマークを実施しています。その中で、高速データ検索、リアルタイムな株価データの取り込み、効率的なデータ保管などを総合的に評価した結果、最終的にSAP Sybase ESPとSAP Sybase RAPの導入を決定しました。
CEPソリューションを提供するベンダーが複数ある中で、SAPは金融業界に強く、SAP Sybase ESPはグローバルで多くの金融機関に採用されています。また、CEPエンジンばかりでなく、リアルタイムデータを格納するデータベース(SAP Sybase RAP)も保有しているため、SAP Sybase ESPとSAP Sybase RAPがセットで導入できることも金融機関にとって大きなメリットです。
コンプライアンス強化やリスクマネージメントに有効
トレーディングシステムが稼働して以降、MUSI様のデリバティブやオプションの取引量は確実に増え、現在も順調に取引を拡大しています。
また、グローバル市場でコンプライアンスの見直しが叫ばれる中、システム化によって運用ルールが再検討され、内部統制の強化が実現しました。さらに、コンプライアンス以上に効果がみられたのが、リスクマネージメントの強化です。近年、マスコミでも大きく取り上げられているように、誤発注によって数億、何十億という大きな損失を被る金融機関が少なくありません。こうしたトラブルを未然に食い止めるためには、リアルタイムにデータを監視する必要があります。SAP Sybase ESPなら、イレギュラーな数値をキャッチした瞬間に発注をストップしたり、アラートを出したりすることが可能です。
日本国内でも、大手証券会社の情報漏えいによるインサイダー取引が相次いだことを受けて、取引の規制強化に向けた議論が始まっています。不正な株価操作への悪用が懸念されているアルゴリズムトレーディングにおいても、いずれ規制が強化される可能性は否定できませんが、本格的なチェック機能を有したSAP Sybase ESPはこうした規制対応にも有効なソリューションだといえます。
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