M&Aにより成長産業界で競争力を高めるオクラロ社


企業が競争力を高めるためにとりうる手段はいくつかあります。自前で投資し製品・サービスのポートフォリオを拡充し販路を拡大していく方策がベースとなり、協業関係を各パートナーと築き補完関係を武器に競争力をつける方策、そして競争力を獲得するためスピード感を確保し、一気に製品・サービス強化、顧客ベースの拡大、販路の拡大が期待できるM&Aなどの方策があります。リーマンショック後はM&Aがまた増えつつあり、昨年2017年は過去最高の3000件、を超えるまでになってきてます。

M&A件数の推移

MA

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_2_2.html

(出展:2018年版 中小企業白書第6章第2節M&Aの現状)

企業戦略としてのM&Aは企業競争力を高めるため、変化の激しい市場においてはマーケットニーズを満たすスピードを確保するうえでも非常に有効な手段です。しかし、M&Aで狙う効果を発揮するためには企業内部で様々なチャレンジがあります。異なる企業同士がひとつの会社としてビジネスをしていくことになりますので、今までのような業務プロセスや文化をそれぞれの会社として残していると、市場変化に対応するための意思決定も遅れる懸念やスケールメリットも出にくくなるでしょう。

前振りが長くなりましたが、今回M&Aを武器に成長産業界におけるデジタルトランスフォーメーションで競争力を高めているオクラロ社を取り上げ、成功の要諦を探ります。

 

オクラロ社

 Oclaro Video2

1998年よりカリフォルニア、サンノゼにて起業したオクラロ社はハイエンド光通信モジュールや半導体レーザーなどの製品ポートフォリオを保有し、クラウド時代にスマホやタブレットでビデオコンテンツを楽しんだりする際のデータセンター需要への対応やIoTで新たなビジネスを志向する企業への対応など、競争環境は激しいものの、市場が拡大しているフィールドで最先端の製品を提供し続けている企業です。

このような競争環境で打ち勝つために2009年にBookham社、AVANEX社を買収し、2010年にMINTERA社、2012年には元日立製作所の光通信の一事業が母体のOpnext社を買収するなど、リーマンショック後からM&Aを積極的に行い、100Gbit/s のハイエンド光送受信モジュールでトップのマーケットシェアを獲得するグローバルリーディングカンパニーへと成長を遂げてます。直近の売上は約600M$、従業員数、1700名。オクラロ社の主要顧客はGoogle、Microsoft、HUAWEI、CISCOなどデータセンターを保有するクラウド企業や通信ネットワーク企業などになります。

 

M&Aを繰り返す企業の悩み

オクラロ社はこのようにM&Aを繰り返し成長をしている企業ですが、企業運営をする上では悩みも絶えません。マーケットの変化を察知して、いち早くニーズを満たす製品を提供するといったどの企業も行っているビジネスプロセスを回そうとしても、買収先の業務プロセス、文化、システムがバラバラなので今何が起こっているかを把握しようとしても時間がかかり、需要をとらえ生産やサプライヤーへのフォーキャストの伝達なども煩雑になり、時間がかかってしまうことです。このような状況だとM&Aで狙った効果を発揮しようとしても内部が足かせになり思った通りの成果がでづらいことが悩みでした。

そこで、オクラロ社がとった取り組みが「One Oclaro」です。

その中でもオクラロ社のIT部門が掲げたビジョンを要約すると、顧客、従業員、サプライヤ、競合や投資家などのあらゆる情報をいつでも、どこでも扱えるようにする、というものでした。そして、そのコアとなるものとしてOclaro ERP Visionがあります。

 

Oclaro ERP Vision

Accelerate Decision Making with Real Time Access to Business Intelligence provides Foundation for Consistent, Predictable, High Quality Results

 

つまり、ビジネスインテリジェンスにリアルタイムにアクセスすることで意思決定を加速させ、首尾一貫した予測可能な、高品質な結果をもたらすための基礎を提供するもの、 としています。

 

ビジョン実現のために重要視していたこと

実はM&Aを繰り返す中で物理的に2つのERP環境が存在していました。さらなるビジョン達成のため、One Oclaro達成のために1つに集約することを選択しました。意思決定の迅速化だけでなく、変化へのスピード対応、そして決して超大企業というわけではないため、TCOも初期投資だけはなくランニングも含め抑えることを重要視したからです。

それらの実現のためには以下の要件を満たす必要がありました。

  • マーケットの変化をとらえ意思決定を迅速に行うのに必要な正確なデータのリアルタイム提供
  • グローバルレベルで業務スピードアップを実現するため完全統合されたビジネスプロセスの確立
  • TCOを抑えつつ将来の変更にも対応できるITアーキテクチャ

 

上記を満たすソリューションとしてオクラロ社が選択したのがSAP S/4HANAでした。

 

クラウドの活用

導入プロジェクトでは11か月の月日をかけたいわゆるビックバンでした。システムは日立のデータセンターを活用したプライベートクラウド環境で構築されました。コアであるSAP S/4HANA以外にも以下のようなソリューションを採用し導入を進めています。

 

  • デジタルコアとしてSAP S/4HANAをプライベートクラウドで実装
  • グローバル人材を管理するSAP SuccessFactorsの活用(SaaS)
  • 経費精算 SAP Concurの活用(SaaS)
  • サプライヤとのコラボレーション SAP Aribaの活用(SaaS)
  • サプライチェーン管理 SAP Integrated Business Planningの活用(SaaS)
  • オフィス Microsoft Office 365(SaaS)

 

オクラロ社は実に多くの領域でクラウドを選択していることがわかります。クラウドの活用によりTCOを抑え、迅速に導入をし続けているのです。ただしすべての領域がクラウドかというと、そうではありません。製造のコアのところは既存オンプレミスシステムをうまく活かす方針をとっています。業務領域によりクラウド活用が良いか、オンプレミス活用が良いか判断しているのです。意思決定に必要な情報はインテグレーションをしてタイムリーに提供できる環境を構築しています。

 

実現された効果

なによりもこのOne Oclaroの取り組みで得られた成果は意思決定の迅速化に表れています。従来意思決定をするための情報収集に時間がかかり、打ち手として設備の確保、人員の確保、計画の変更などがタイムリーに行いづらい状況から、今では意思決定をする時間のうち10%が情報収集、90%の時間を意思決定をする、つまり判断に要する時間が増えた点です。

 

その他にもOne Oclaroの取り組み効果として以下の点があげられてます。

  • Single source of truth(信頼できる唯一の情報源)の確保により各種マスタ、KPI、ファイナンシャルデータなど正しい情報へのタイムリーなアクセス
  • 共通のビジネスプロセスの実現
  • 需要の変動を加味した迅速な計画の変更
  • サプライヤと密なコラボレーションの実現
    (フォーキャスト、コミット判断が1週間から1日へ短縮)
  • クラウドの最大活用によるTCOの削減

 

オクラロ社の方がOne Oclaroに関して語った動画がありますのでご覧下さい。

Oclaro Video1動画はこちら

(Achieving One Oclaro-From Finance to Forecasting to HR  – with SAP®Solutions)

 

また、SAPジャパンのユーザー会(JSUG)でも日本オクラロ社の事例に関して記事がありますので併せてお読みいただくことをお勧めします。

http://www.jsug.org/topics/2018/case-2018-hitachi-01.html

導入事例「日本オクラロ株式会社」

 

オクラロ社の取り組みからの学び

今回のブログではM&Aが増えつつある昨今、どの企業でもM&A後に直面する課題を解決する実例をオクラロ社のケースを用いてお伝えしました。M&Aでは企業文化、業務プロセスの違い、システムの乱立状況を克服することが常に求められます。同時に激しい市場で競争力を確保し続ける必要があります。

その変化に追従するためにはグローバルレベルで意思決定を迅速にできるような施策、社内だけでなくサプライヤなど社外とのコラボも視野に入れた新たな業務プロセスの構築、そして迅速にかつTCOを抑えて導入するためにクラウドを活用することなどは学ぶ価値があるポイントだと思います。そして何よりも競争環境で勝ち抜くためにはOne Oclaroといった「スローガン」、そしてOclaro ERP Visionといった「ビジョン」がしっかりと定義されており、それを忠実に実行したのが成功の要諦だろうとオクラロ社のケースで再認識しました。

また、前回取り上げたマイクロソフト社の事例では製造委託先との連携が肝、といった社外とのコラボに変革のヒントを見出したのですが、今回のオクラロ社も社内のみならず社外との連携も重要視していました。この2社に共通して取り組まれている「社外との連携」という点は、今後ますます変化が激しくなる時代において企業の競争力を左右する重要なポイントになるだろうと強く感じました。

 

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、Oclaro社のレビューを受けたものではありません。