BASF − 調達・購買業務領域における「業界標準」の活用に向けて


BASFは、ドイツに本社を置くグローバル最大の化学企業であり、2017年度の売上高は644億ユーロ(約8.3兆円)、EBIT(利払前・税引前利益)は85億ユーロ(約1.1兆円)となっている。また、総支出額のうち、間接材・直接材含めた調達・購買支出*1は300億ユーロ(約3.9兆円)を超える。いまBASFは、この調達・購買支出に係るコスト削減やサプライヤーとの連携含めたプロセス全体のデジタルトランスフォーメーションを強力に推進している。中でも戦略的調達・購買のためのプラットフォーム、すなわち、”Strategic Procurement Suite (以下、SPS)”の構築が取り組み推進のための重要な要素となっている。

*1 調達・購買支出の内訳として、”Raw Materials(原材料), Technical Goods & Services(工場設備・副資材とサービス), Logistics Services(物流サービス)”等を例示している。

BASFは、ここ数年続けてSAP Ariba Liveに登壇しており、その講演内容を追えば、同社における取り組みの内容と進捗がよく分かる。2018年4月にアムステルダムにて開催された同イベントでは、以下の状況が報告された。

  • 間接材を”Wave 1″、直接材を”Wave 2″として段階的に対象範囲を拡張している。SPS上でのオペレーションという観点では、間接材についてはほとんどカバーされ、2019年末までには直接材も含めた実現を目指している。
  • 2018年前半の段階で、26,327社のサプライヤーがSPSに登録された。BASF側バイヤーのトレーニングも同時に進めており、最終的には1,000名が対象となるが、うち588名のトレーニングが完了した。
  • Wave 2が完了すれば、250億ユーロ(約3.2兆円)の支出がSPS上で管理・処理される。

Procurement processes as Commodity(調達・購買プロセスは汎用品)“と言い切る同社は、例えば、サプライヤーとのRFPに関するやりとりや、サプライヤーを評価・選定するといった「プロセス」そのものからは、BASFの競争優位性への貢献は小さいとの認識のもと、業務プロセスの徹底的な標準化・簡素化とサプライヤーとの連携における「デジタル化」を進めている。また、それら汎用化を進めるべき領域では、クラウドベースのソリューションを採用することの優位性も認識している。クラウド化のメリットとして、イノベーション(最新機能)を素早く取り入れることができることや、ITの総所有コスト(TCO)が削減されることを挙げるとともに、SAP Aribaが提供するサプライヤーネットワーク=Ariba Networkの活用を挙げている(→関連ブログ)。

BASFはまた「業界標準(Industry Standard)」の可能性についても言及している。これまでは、ある特定のサプライヤーとの連携が必要になる都度、個別のプロジェクトを起こしてその仕組みを開発していた(下図 “Yesterday”)。これからは、すべてのサプライヤー及びバイヤーが「業界標準」となるプラットフォーム(=Hub)を介し、連携するべきと主張している(下図 “Tomorrow”)。個々の企業がそれぞれに仕組みを構築・所有するのではなく、クラウドベースの誰もが活用できる仕掛けを利用することにより、複雑性を排除しITコストを最適化しつつ、よりサプライヤーとの協業・コラボレーションに注力できることを望んでいる。

“Yesterday” – Create “Network of Choice”

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“Tomorrow” – Industry Standard: Inter-connectedness through hub structure

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(SAP Ariba Live in Amsterdam 2018 講演資料より)

とはいえ、この「業界標準」の活用を推し進めるには相当なパワーが必要である。BASFが描くような将来像に向かえば、サプライヤーにとってもこの「業界標準」は、確かに魅力的なものとなるであろう。多くの顧客企業とつながることができ、また、入札や購買・請求プロセスのデジタル化も進めることができる。そのためには、多くのサプライヤーの「オンボーディング」つまり、Ariba Networkへの参加を促さなければならないわけであるが、BASFはいったいどうやっているのか。まず、事実としては、上述「26,327社のサプライヤー」は「過去1年間」で新規に登録されている。また、新規登録をサポートする「オンボーディング・チーム」があり、「10名」のフルタイム人員がその任務を担っているという。まずは地道にリマインダーメールをサプライヤー側の担当者へ送信することが必要とのこと。とくに”Wave 1″における間接材を範囲とした段階では、このアプローチが重要であり、必要とあらばBASF側バイヤーの役割やプロセスの変更などを丁寧に説明することになる。そして、”Wave 2″の直接材では、また異なるアプローチが必要となる。そこでは、より専門的な知識を持った「カテゴリー・バイヤー」が、戦略的(かつ比較的規模の大きい)サプライヤーに対し、プロジェクトベースで調達活動を行なっていくことになる。RFPや入札などの「イベント」に招待し、調達活動の様々な場面で「オンボーディング」を促していく。繰り返しとなるが、地道かつ丁寧なやりとりがサプライヤーに対し繰り返し行われなければならないものであろう。BASFと取引がある企業は、すでに「オンボーディング」の案内を受けていると想定されるが、今後の展開に注目して行きたい。

以上、BASFの調達・購買業務領域における「業界標準」の活用に向けた取り組みの一部について掘り下げてきたが、調達・購買業務の個別詳細(例:サプライヤー管理, ソーシング, 契約管理)やチェンジマネジメントの重要性については、SAP Ariba Liveにて深掘りされたい。

最後に、同社はドイツの国策であるIndustrie 4.0の文脈と整合する形で、BASF4.0という全社レベルの施策を推進している。様々な取り組みがある中で、調達・購買領域もそのひとつであるわけだが、将来的にはデジタル技術のさらなる活用を進めていくことが想定されている(下図)。例えば、AIや機械学習を用いた自動化や、IoTシナリオと連携する調達・購買プロセスが検討の対象として挙げられている。購買プロセスを徹底的に効率化し、より付加価値の高いソーシング領域の業務に注力すると同時に、最新テクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーションを進める土台が構築されようとしている。

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(SAP Ariba Live in Amsterdam 2018 講演資料より)

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SAP Ariba Live でのBASFによるプレゼンテーション動画(英語)

BASF’s Digital Transformation of Its Direct and Indirect Spend [45分] / SAP Ariba Live in Amsterdam 2018

Disrupting digital technologies: business transformation [6分] / SAP Ariga Live in Prague 2017

Stories of digital transformation with BASF [15分] / SAP Ariba Live in Las Vegas 2017

BASFの取り組み概要についての動画はこちら(日本語字幕)

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※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、BASF社のレビューを受けたものではありません。