ユーザー固有の環境で利用できるクラウド型ERP~SAP S/4HANA Cloud, single tenant editionとは?


SAP S/4HANAの最新版をサブスクリプションモデルとして提供するSAP S/4HANA Cloud。2018年8月からお客様固有のシングルテナント環境で利用する「SAP S/4HANA Cloud, single tenant edition」(以下、single tenant edition)がラインナップに加わり、より柔軟にクラウドERPが選べるようになりました。そこで今回は、single tenant editionリリースの背景と基本的な特長を紹介します。

クラウドを活用してコアコンピタンスに集中

企業ではコアコンピタンスに集中するため、本業に直結しない業務を外部にアウトソーシングする流れが加速しています。ITシステムについても、ビジネス投資への集中やコスト軽減の観点からクラウド利用が増えています。災害対策においても、IT投資を抑制しながら事業への影響を最小限にとどめるクラウド化方針を採用する企業が少なくありません。

SAP S/4HANA Cloudは、このような時代の要請から生まれました。SAPがインメモリーデータベースのSAP HANAをリリースしたのは2011年。2015年にはSAP S/4HANAをリリースし、デジタルトランスフォーメーションを加速してきました。さらに2016年にはパブリッククラウド版のSAP S/4HANA Cloudをリリースしています。

日本企業の場合、多くがホストコンピュータの機能をERPに移植した経緯もあり、アドオン開発された機能が根強く残っています。そのため、システムがSAP R/3からSAP ERP、SAP S/4HANAへと進化するなかでも、大きな変化を避けて既存のシステムを使い続けるケースが多く見られます。そこでSAPジャパンでは、お客様にデジタルトランスフォーメーションに向けて最新の機能をフルに活用し、本来あるべき業務に特化していただきたいという思いから、クラウド型ERPの提供に力を入れていく方針です。

クラウド化が進む背景には、これから深刻化が予測されるIT要員不足の問題もあります。SAP ERP(ECC6.0)からS/4HANAへの切り替えが加速しており、国内でも多くのS/4HANA導入プロジェクトが立ち上がっています。また「2025年の崖」を超えようと、今後更にS/4HANA移行ユーザは増える見込みとなっており、コンサルタントやSEが不足することは明らかです。この機に、インフラやシステムの運用管理を外部に委託していくことは重要な選択肢の一つとなります。SAP S/4HANAをサブスクリプションモデルで活用し、システム運用を製品ベンダーであるSAPが対応するSAP S/4HANA Cloudは、今後のシステム運用の負担を大幅に軽減できるソリューションです。

SAP S/4HANA Cloudの2つの選択肢

■SAP S/4HANA Cloud

SAPが用意した機能をサブスクリプションモデルで利用するサブスクリプションかつパブリッククラウド型のSAP S/4HANAです。マルチテナントで複数のユーザーとインフラを共有します。短期間/低コストで導入できるほか、四半期ごとのアップデートにより常に最新リリース環境が利用できるのがメリットです。アドオンレスでの導入が基本で、機能拡張についてはあらかじめ用意された拡張オプションや、SAP Cloud PlatformによるPaaSベースの拡張を前提としています。主な用途としては、本社でSAP S/4HANAを利用している企業が、海外子会社にも同様に展開するケースや、新規事業を立ち上げた子会社のビジネス基盤として利用するケースが想定されます。

■SAP S/4HANA Cloud, single tenant edition

SAP S/4HANA Cloudの機能を、お客様ごとのテナント環境で利用するサブスクリプションかつプライベートクラウド型ERPです。パブリッククラウド型と比べて自由度が高く、アドオン開発も従来のオンプレミスと同様に可能です。そのため、ユーザー企業独自の業務プロセスを実現することもできます。システムのアップグレードは年に1回実施されますが、アップグレードの可否やタイミングはユーザー自身で選択可能です。とはいえ、クラウド型のメリットを享受したいなら、極力アドオンを廃して標準機能を前提に利用することを推奨します。

実際、大量のアドオンでSAP ERPを作り込んでいたが企業が従来のシステムを廃止し、新たにsingle tenant edition上でシステムをゼロから作り直すリビルドを選択したケースもあります。新たなビジネス価値を創造するなら、既存の業務をそのまま移行するより、リビルドが有効という考え方です。

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SAP S/4HANA Cloud, single tenant editionの特徴

■柔軟性の高さ

上記で解説したように、single tenant editionは現行のSAP ERPに近い柔軟な運用ができます。インフラ基盤はお客様の環境に合わせてSAP HANA Enterprise Cloudのほか、Microsoft Azure、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)などの選択も可能です。

これまでオンプレミス環境で利用していたSAPの永久ライセンスを持ち込み、single tenant editionのサブスクリプションライセンスに切り替えることもできます。SAPのライセンスはお客様からわかりにくいという声をいただいてきましたが、single tenant editionではユーザー数とシナリオを選択すれば、自動的に月額コストが計算されるため、わかりにくさは解消されています。業種業態によって出てくるデータベースの容量を拡張したい、メモリー容量を増やしたいというご要望にも対応可能です。

■サービスレベルを保証

single tenant editionではサービスレベル(SLA)で99.5%以上を確保しています。インフラからアプリケーションまですべてのレイヤーをSAPがワンストップで対応するため、障害が発生した際も、レイヤーごとにベンダーに問い合わせる必要はありません。お客様1社につき1名のサービスマネージャーが付き、月次レポートの提出やトラブル時の対応を支援します。各種監査基準や業界のレギュレーションに対応しており、製薬・医薬業界の品質ガイドライン・規制であるGxPにも準拠しています。バックアップやDR環境についても、日本以外にアメリカ、欧州、アジアなどお客様のニーズに応じて世界各国から100以上のデータセンターから自由に選択できます。

質、量ともに充実するSAPのクラウドビジネス

SAPは2012年に最高経営責任者(CEO)のビル・マクダーモットが「SAPはクラウドカンパニーになる」と宣言して以来、次々とクラウドベンダーを買収し、サービスのラインアップを拡大してきました。その結果、2017年のクラウド事業の売上高はグローバルで31億ユーロ(4,500億円)に達しています。SAPジャパンでもクラウド事業が毎年連続で売上最高額を更新しており、事業の中心はクラウドへとシフトしています。SAP S/4HANAをクラウド化したSAP S/4HANAおよびSAP S/4HANA , single tenant editionはデジタルコアの中核をなす製品となります。さらに、SaaSで提供される人事管理ソリューションのSAP SuccessFactors、人財シェアリングサービスのSAP Fieldglass、経費管理のSAP Concur、オムニチャネルプラットフォームのSAP Hybris、調達ソリューションのSAP Aribaなどと連携し、新たな付加価値を提供していきます。