IBM : デジタル技術を活用した従業員働き方改革の実現


従業員経費精算に対する改革ニーズの高まり

最近日本企業においても、働き方改革を背景にこれまでアナログ的な管理が多かった経費精算業務の効率化のニーズが高まってきています。★★0. 冒頭経費精算のイメージピクトグラム

2016年以降の電子帳簿保存法規制緩和(※1)により、領収書の原本が不要になるペーパーレス化が可能になることで、経費精算を行う従業員およびそれら証憑を管理してきた間接部門の両方での業務効率化の促進が見込まれるということも、その気運を後押ししていると考えられます。

経費に対するコストの適正な管理や、従業員個人の不適切な経費利用がもたらす不正リスクの低減といったコーポレート管理視点でのコンプライアンス・ガバナンス要件も相まって、現場レベルでの改善検討だけではなく、コーポレートレベルでの目線から将来の経費精算のあるべき姿を検討する日本企業が、増えてきているのではないでしょうか。

また、政府も働き方改革を実現するためのツールを導入する企業に対し、補助金(例:IT導入補助金 ※2)を交付することで、企業の働き方改革を強く後押ししています。

※1 : 国税庁 電子帳簿保存法の改正関連情報 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/08.htm

※2 : クラウド型経費精算ツールの多くはIT導入補助金の対象となっている。IT導入補助金ホームページ。https://www.it-hojo.jp/

ノンコア業務である経費精算改革の効果

各方面からの後押しにより、経費精算改革にスポットが当たり始めてきたものの、営業活動や生産業務が利益を生むための直接的な業務、つまりコア業務として捉えられるのに対し、経費精算業務は、それらコア業務を支援するノンコア業務として捉えられていることもあり、本格的な改革のメスはこれまであまり入ってこなかった領域でもあります。

SAPのグローバルベンチマークにおいても、経費情報の可視性およびコンプライアンスの欠如や、非効率なマニュアルプロセスが多く存在するなど、まだまだ改革の余地が大きくあると見てとることができます。

★★1. InfoGraphic冒頭ベンチマーク

例えば売上高5,000億円の企業が、約10%の経費コストの低減に成功すれば、それは売上高1%の伸びに匹敵します。(※3)

本業において、売上を1%伸ばす苦労は想像に難くないですが、経費精算といったノンコア業務改革の結果により、本業の経営パフォーマンスとは別なところで、競合企業と大きな差が出る可能性があることも、企業経営の視点として認識すべきことだと思われます。

※3 : 対売上高経費率10% (SAPベンチマーク)として試算

IBM : グローバル40万人の従業員の出張・経費精算業務の働き方改革

★★2. ibm

IBM社については、多くの方がご存知でしょう。民間法人や公的機関を対象とするコンピュータ関連製品およびサービスを提供しており、世界170カ国以上でビジネス展開、売上約9兆円で従業員約40万人を抱える、ニューヨークに本社がある巨大グローバルIT企業です。

業務の特性上、出張や従業員の立替経費がグローバル全体で多く発生していたにも関わらず、以前のIBM社では、出張管理システムと経費精算システムは連携していない上、各システムが柔軟性の欠ける古いレガシーシステムで運用されており、従業員の経費精算業務の生産性に悪影響を及ぼす状態にありました。

そこで、従業員の出張業務が快適でより多い成果をもたらすことをミッションとするIBM社の人事部門とCIOスタッフは、出張スケジュールや経費精算をグローバル全体でシンプルなものにするためにSAP Concurソリューションの導入を決めました。

 SAP Concurソリューションは間接費の統合ソリューションクラウドプラットフォームであり、従業員立替・出張管理・請求書処理をワンプラットフォームで統合・共通管理することが可能になります。

従業員立替経費ソリューション(Concur Expense)出張管理ソリューション(Concur Travel)請求書処理ソリューション(Concur Invoice)の、主に3つのソリューションで構成されています。

★★3. コンカーソリューション

IBM社は、これらSAP Concurソリューションのうち、Concur Travel(出張管理) と Concur Expense(従業員立替経費)ソリューションを約100カ国に属する40万人の従業員に対し、約18ヶ月で導入および展開を完了することに成功しました。

IBM社は、これらソリューション導入による効果として、主に以下の3つを挙げられています。

● 出張予定から経費精算・請求まで、エンド to エンドでプロセスをカバーすることによる効率化    (以前は出張システムと経費システムは連携していなかった)

● クラウドソリューションの導入による、出張・経費精算環境における拡張性の獲得 (以前のレガシ ーシステムでは変更もままならかった)

● IBM社のAIソリューションと組み合わせることで、デジタル技術を活用したさらなる業務効率化への発展 (WatsonベースのTravelBotをConcurのAPIと連携)

グローバル40万人の従業員の日頃の経費精算業務をこのように効率化することは、コーポレート視点で見ても、IBM社に多くの価値をもたらすことになったのは言うまでもないでしょう。

間接費全体での改革への昇華 Total Spend Management

IBM社のように、経費精算業務において改革を行うことは、これまで改革のメスが入ってこなかった傾向が強い領域であるがゆえに、以下の観点からより多くの効果を企業にもたらします。

① コスト改善の観点:手付かずのため削減余地が大きい

② 生産性改善の視点:小口・大量・不規則の業務があり、一般社員の業務負担が大きい

③ ガバナンス強化の視点:不正リスクが付きまとう

同様の視点から、一般旅費・経費のみならず、間接材調達やサービス・役務調達、外部人材調達業務についても、同じことが言えるのではないでしょうか。Total Spend Managementの視点からグローバルの先進企業の多くが、これら間接費全体にわたる改革を、すでに本格的に進めている状態です。

日本企業においても、本業以外のところでも企業の地力の差をつけるために、改革の早期着手を検討すべき局面であることは間違いないでしょう。

★★4. 間接費改革

 

本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、IBM社のレビューを受けたものではありません。