クラウドERPが持つ5つの優位点 ー クラウド時代はERPのあり方を再考する絶好のタイミング


今日の企業ITは、大きなテクノロジーの転換期を迎えています。さまざまな先端技術が登場し、あらゆる組織がビジネスに活用し始める中で、基幹システムのクラウド化も急速に進んでいます。2018年9月11日にSAPジャパンが開催したセミナーでは、「クラウドERPによるグループ/グローバルシステム再考」と題し、株式会社アイ・ティ・アール(以下、ITR)のプリンシパル・アナリスト 浅利浩一氏に、ERPのクラウド活用(クラウドERP)における最新状況について講演いただきました。

株式会社アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト 浅利浩一氏現在システムの新規導入において40%以上がクラウドを選択しており、数年のちにはオンプレミスを逆転することが予測されています。中でも、複数の拠点やグローバルな事業を展開する企業が注目しているのが「クラウドERP」です。浅利氏が強調するのは、ERPのあり方を再考するには今こそ非常によい時期だということです。クラウドERPの真の価値を理解することで、ERPが持つ本来のパフォーマンスやコンセプトを再考し、実装を進める好機が到来しています。

グローバル展開とクラウドERPに積極的な日本市場

ITRの分析によると、近年、多くの日本企業はIT投資に前向きになっています。同社の『IT投資動向調査』によると、2017年度には3割を超える企業がIT予算を増額しており、売上高に占めるIT予算比も増加しています。また、売上高に対する海外展開の動向を見てみると、売上が大きい企業ほど海外展開に積極的です。業種では製造業を筆頭に、金融・保険業や卸売・小売業でも海外展開が積極的になっています。

さらに、ITRが2018年8月に実施した『人事システムに関する調査』では、「グローバルなビジネス展開強化が経営目標に掲げられている(52%)」「グローバルなビジネス展開の推進計画/組織が存在する(48%)」などの回答をはじめ、何らかの対応に迫られている、課題があると現状を捉えている企業が、従業員規模3,000人以上で多いことがわかりました。

一方、ERP国内市場においては、クラウドERPの注目度が高まっています。『ITR Market View:ERP市場2018』によると、ERPの売上金額(新規導入)のうち2016年度で約30%、2017年度で40%超をクラウドサービス(SaaS/IaaS)が占めていました。2018年には50%を超えることが予測されています。

国内ERP市場のクラウド推移状況

これらの調査結果からみて、2018年以降、オンプレミスのシステムにERPパッケージをインストールするという従来のケースが増えることはないだろうと浅利氏は予測しています。クラウドだけでなくビッグデータやAI、ロボットという先端技術の時代へと、クライアント/サーバーの時代から約20年を経て転換する時期に来ているといえます。

クラウドERPが持つ5つの優位点

クラウドERPによってどのようなメリットを得られるかについて、浅利氏は次の5つの優位点を挙げました。

  1. 高いユーザビリティ:シンプルでモダンなUIを持ち、コード入力が最小限で済みます。カスタマイズを必要とせずにコンフィグレーションやパーソナライズが容易で、アップグレードの負荷も軽減できます。分析機能が豊富であり、一体化したBIエンジンを積んでいるという応用性の高さも魅力です。
  2. コラボレーション能力の高さ:業務プロセス間では、承認、確認、通知、共有といった処理が発生します。クラウドERPであれば、チャットボットやビジネスSNS、ポータルやコンテンツ管理/ファイル共有といった機能を、業務フロー内に容易に組み込むことができます。
  3. 一貫性の高い業務プロセス:従来のオンプレミスシステムは、PLMやSCM、CRM、SRMといったシステムがERPから分離されていました。クラウドERPは、エンドツーエンドの業務プロセスをビジネスシナリオからシームレスに利用できるようにデザイン/再構成されています。
  4. マルチクラウド基盤:クラウド上にERPを構築することによって、顧客への情報提供やパートナーとの情報連携が容易になります。さらにERPを補完するIoTやAI、ビッグデータ解析など、優れたパブリックサービスを効果的に活用できます。
  5. PaaSによる補完・拡張:企業独自の要件によっては、開発が必要な場面もあるでしょう。そうした場合でも、PaaSを活用することでSaaSを補完/拡張しながら、社内外のシステムと連携させて競争力を保つことができます。

スコープと方式の選定、ロバスト(頑健)性に注目

さらに浅利氏は、グループ/グローバルでERPを導入する際の流れとポイントについて解説しました。まず、「重視すべきビジネス要求」について考えます。「スピード」「シンプル」「柔軟性」「適正コスト」に加え、すべてに関与する「ガバナンス」という5つの要件に対して、どのようにクリアすべきかを検討します。

次に、複数の選択肢から必要なものを見極めます。システムを導入するにあたっていちばん大事なことは、スコープ設定と方式です。ERPの選定にあたっては、どこまで管理すべきかを決め、業務やシステムの方式を決めます。もちろんすべてを一気に変えることが難しい場合は、段階的な導入を図ることもできます。

ERPの複数選択肢の見極め

また浅利氏は、「システム化構想の策定」というプロセスを推奨しています。主要な要件を仮置きする前半、導入範囲や推進体制を決定する後半に分けて、理想的なあるべき姿をどのように実現するかを検討するフェーズです。この策定が終われば、ベンダーの選定に移ります。

一方で、よくあるAs-IT/To-Beのアプローチには注意が必要です。過去の複雑で膨大な現状をいくら振り返っても、将来の理想像実現にはかえって足かせとなってしまう可能性が高いためです。そのため、過去のシステム像を前提とせず、アイデアベースで実践することが望ましいといえます。

しかし、すべてをゼロベースで検討するのは難しいかもしれません。そこで有効となるのが、「ロバスト(頑健)性」を基準に検討することです。実組織につながる仕様やピンポイントな機能追求など、変化の影響を受けやすい要素をできるだけ排除し、業務の流れを重視した迅速な導入を図ります。これにはマインドの変革も重要となります。

フラットでシンプルな特性を持つクラウドERPを活用することで、「10年、20年にわたって使える仕組みを作ることができます」と浅利氏は述べ、講演を締めくくりました。

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SAP S/4HANA Cloudの導入に向けたマインドシフトの重要性などの提言のほか、システム化構想の策定からRFPによるベンダー/製品選定を数多く支援しているITR社によるレポートです。
クラウドERPの優位性を評価している企業の生の声から、その理由や背景がまとめられており、クラウドERPを導入検討する上で参考になるレポートです。

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